どうせループするなら楽しみますわよ!

お好み焼き

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2お願いだからこのループを止めて!

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「そうだったんですね……といっても訳が解りません」
「わたくしもよ。でも……ニコたんも一緒に戻ってきてくれてよかった」
「アリー……」

そっと寄り添い触れるだけの口付けをおとす。寝間着一枚隔てただけの柔らかい感触にニコライはフェアリーを抱き締め、ベットに押し倒した。

「あ……ニコたん!」
「アリー……!」

その日は最後まで致したので学園は休んだ。理由は腹痛。もちろん仮病だ。


11度目の巻き戻りでも相変わらず王太子は聖女とイチャイチャしていた。

フェアリーとニコライは以前のように関係を公にすることはなく、馬車の中で唇を合わせ、たまに遠出なんかもして、愛を育んでいった。

そうして一年が経った頃、フェアリーは宰相から呼び出されて苦言を申された。

「──聖女のことは黙認されているようだが、貴女はそれでいいのか?」
「よいのです」
「……本気で言っているのか?」
「言っているのです」
「何故だ!  君には次期王太子妃としての矜持は無いのか!」
「無いのです」
「ク、クロイタム嬢?」
「オホン。いえ政略ですから、そんな事まで面倒みてられませんわ」
「……そ、そうか」

それからまた一年。
フェアリーは三年生になった。

「お嬢様。本日のランチは鯖のトマト煮とクリームチーズでございます。パンに挟んでお召し上がり下さい」
「それ今一番ハマってるやつ!  いただきますわっ」

フェアリーの好みはハンバーグから鯖になっていた。互いに精神年齢を重ねるほどよく魚を食べるようになった。

中庭のテーブルに弁当をひろげ、ニコライの淹れた紅茶を飲む。至福の一時だった。

「週末は渓流釣りにでもいきましょうか。暖かくなってきたのでそろそろヤマメやアマゴが活発になります」
「ならエサ釣りからしないとね~」

週末の予定をたてていたところに王太子と聖女がイチャイチャしながら割り込んできた。テーブルは他にも空いている。なのにわざわざ同席してきた。最近はいつもそうだ。
フェアリーは無言で腰をあげて二人に席を譲った。その間にニコライが弁当を片付けていく。
この間、四人に会話はない。
以前、何故わざわざ同じテーブルに座るんだと問えば王太子から「聖女との時間を邪魔するな」と叱責された。訳が解らない。それからフェアリーは邪魔されたらすぐ立ち去るようにしていた。

「なんなんですかね全く……明日から屋上で食べましょう」
「そうね」

そして屋上でランチをしていると、いつの間にか王太子と聖女が割り込んでくるようになった。床に広げたランチシートを占領してくるのだ。
そしてここでも何故割り込んでくる?と問えば王太子から「いくら婚約者といえどもそこまで干渉される覚えはない!」と怒鳴られた。こいつ。暗殺したろか。

「お嬢様、落ち着いて下さい。これからは都度場所を変えます」
「そうね……こうやってランチの度に割り込まれては消化が悪くなるわ」

それからニコライはランチの場所を裏庭、倉庫、旧校舎と人気の無い場所に都度変えていった。おかげでこの三ヶ月はランチ後に一発ヤルという不貞ができている。

「あっ、あ……ニコたん、も、もう一回した、い」
「仕方ないですねぇ……ほんとアリーは食いしん坊なんだから、っ」

平日は授業に出席し、ランチでイチャつき、週末は山で食料を調達するところから始めてその後は小屋にこもる。そして熱い夜を過ごした。

そんなこんなで卒業間近。
王太子との婚姻が確定したところでまた時が入学時に巻き戻った。

「ニコた~ん。今は処女だから優しくして」
「優しくしますよ。二度目の清らかなアリーも素敵です」

こんな感じで懲りずに12度目。13度目、と学園生活を堪能する。

……。
…………。

そしてとうとう20度目の卒業間近に、一応気をつけてはいたのだがフェアリーはニコライの子を宿してしまった。

「やだああああ!  絶対生む!  戻るのやだやだやだあああ!」
「お、落ち着いてアリー……お腹の赤ちゃんが吃驚してしまいます」
「だってもうすぐ巻き戻る時期だもん!  絶対やだ!  巻き戻るくらいならこの子と一緒に死ぬわ!」
「アリー……!」


結果として、何故か卒業後も、フェアリーが腹ボテになっても時は巻き戻らなかった。

「おんぎゃー!」

生まれてきたのはフェアリー似の可愛い女の子だった。つけた名前はフェリシア。ニコライはべろべろにフェリシアを可愛がって、その度にフェアリーが焼きもちをやいて、ニコライが宥める。親子三人幸せな生活を送っていた。


それから歳月は過ぎ。
フェリシアが5歳になった頃。
急に両親の事が気になった。
今日は同じ学び舎に通う友達に、彼等の叔父や伯母、そして祖父母の話を聞かされたからだ。他の子も親族とよく交流して親睦を深めているらしい。

そういやあたしの両親から親戚の話が出たことは一度もない、とフェリシアは不思議に思った。

家は大富豪ばりの裕福な暮らしだ。父のニコライには部下が百人程いて、その殆どが手練れだ。母のフェアリーは夕方になると「ちょっとそこまで夕飯のおかずを」と言って小一時間ほどして手にドラゴンの前足を持って帰って来るような人。

帰宅したところ父は仕事で留守のようだが母はいる。そこでフェリシアは母に親戚のことを聞いてみた。

「いるにはいるけど……母国は国を三つほど跨いだ遠い地にあるわ。お母さんは貴族だったから、平民のニコライと結婚するために出奔してこの共和国へ辿り着いたの」
「わあっ!  なにそれ物語のお姫様と騎士みたい!」
「あらやだ恥ずかしいわ。二人でこの国にきて、商売が軌道に乗るまで苦労したものよ。そんな夢物語じゃないんだけどね、うふふふ」
「?」

苦労した、という部分にフェリシアは疑問を感じた。物心ついた時から衣食住は完璧過ぎるほど整っていて、両親が怒ってる声も泣いた顔も落ち込んでいる様子も見たことがない。いつも幸せそうにしている。

「お父さんとお母さんは何十回もかけてようやくこの幸せに辿り着いたのよ。まあ失敗続きでも、途中から楽しかったけどね」
「へえー。若い頃は苦労したんだね!  でもそのお陰で今あたしは幸せに暮らせてるんだね!」
「うふふふ。さあ、そろそろお父さんが帰って来るわ。出迎えてあげて」

フェアリーがエプロンをつけて笑った。フェリシアはこくんと頷き、屋敷の階段をかけおりた。

「お嬢!  ウッス!」
「お嬢、走ったら危ないですよ」
「ほらお嬢、ちゃんと前見て」
「お嬢、今日もおつかれっしたッ!」
「はーいっ」

玄関に辿り着くまでにニコライの舎弟のごとき部下達がフェリシアに頭を下げていく。そして帰宅してきたニコライに抱き上げられ、頭を撫でられる。

「今日の夕飯は何かな?」
「タコライスだってー。吸盤があたしの顔より大きいのっ」
「……大魔蛸クラーケンか。毒もあるし出来上がるまでアリーに任せようか」

ならフェリシアは夕飯までに父に宿題をみてもらうことにした。

「四則演算ってにがてー」
「はは、お父さんも子供の時は苦手だったよ」
「えーうそだぁ。あ、お父さんって子供の時はどんなことしてたのー?  親戚はー?」

先ほどフェアリーに聞いた話の延長で、フェリシアは父にも話をふった。

「子供時代か…………お父さんは大神官の息子だった」
「へえ……なのに平民だったの?」
「神殿の関係者は教皇も含めてみんな平民だよ」
「うんうん」
「……とある候補生だったんだけど、生き残りをかけた競争に負けてね。最後はより強い神力を持つライバルが聖女の聖騎士になった」
「せいきし……どんなお仕事するひとー?」
「聖女の補佐だよ。力を暴発させないよう、抑えたり、神の抑止力を使って聖女を正しき道に促す役目がある」
「たいへんなお仕事だね」
「そうだな……親も親戚も、脱落した私をとある貴族家に奉公に出した。神職からの遠回しな離籍だよ。でも今となっては良かった」
「そうなんだー」
「ああ。ずっと憧れて指をくわえて見ているしかできなかったアリーを手に入れ、可愛いシアまで生まれた。お父さんはずっと幸せの絶頂にいるんだよ」
「よかったねぇ。お母さんも幸せって言ってたよー」
「はは、この幸せが続くように、これからも頑張るよ」
「うんっ、あたしもがんばるー」
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