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第5幕 代替の国

第2話 帰宅と内心~関西と関東のカップうどんの味は違うらしい~

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「あれ?誰かと思ったら…第1王子殿ではないですか!!」
「…オズワルド。何か用か?」
「いいえ?ただ、目障りなので消えてくれませんかねぇ?」
「それは無理だな。オズワルド、いい加減に執務をしてくれ」
「はぁ?してますよ?何を言ってるんです?」
「そろそろ代筆の印は飽きたんだがな?」
「…ふんっ!威張っていられるのも今のうちだ!!」

オズワルドが背を向けて去って行った
それを見ながら自分の執務室に入る

「…殿下。こちらを」
「…エリック…この書類は今日中と書いてあるんだが?」
「左様でございますね」

はい、どうも。グレイです
上記はデュースの影武者してる私とエリーの影武者してるセレスとの会話である
え?2人はどうしてるのかって?
安全なとこにいるよ~
本当に安全なとこ

「そろそろだな…」
「えぇ。」

パリィンッという大きな音と共に窓ガラスが割れた
王宮の窓ガラス高いんだぞー?

カンカンッ

暗器らしきものを懐にあったナイフで弾く
すかさずセレスが《拘束バインド》で縛り上げていく
第二波の際には私も前に出た
正直、この場合魔法より物理の方が早い
死なない程度に攻撃を交わしながら足の腱などを切っていく
命あるだけマシだと思えよ

「殿下、キレすぎです」
「理不尽なんだよなぁ」

なるべくデュースの口調に似せて話す
最初の1週間はデュース本人に仕事をしてもらって従者で仕事ぶりを見てたけど、
国を良くしようとする志が見えていた
きっとデュースが王になったら良い方へ進む
だが、この襲撃をかけてきてる大元は自分が覇権を握りたいんだろうな

「許さない」
「仕方ないですね…」

セレスは困ったように笑った後、ガンッと拘束されてる1人の頭に足を下ろした

「で、誰なんです?命令は?」
「あ!《浄化クリーン》!」

同じ呪文だけど、意味さえ理解していたら効果が変わる。
いつも使ってるのは綺麗にするものだけど、今使ったのは、コイツらの奥歯に仕込まれていた自害用の毒を消し去った
こういう聖女的な能力はセレスの方が似合うんだけど、光は私の方が能力値が高いので私がやってるのは余談である

「…死んでも言わない」
「ふぅん?なら、1回死んでみる?」

ニッコリと私は笑った
元【幻影】をなめるんじゃないよ?














***********
「やっぱ宰相かぁ」

のんびりと私たちはある場所にて寛いでいる

「それより!襲われたって大丈夫なのか…?」

デュースが不安そうに尋ねてきた

「へーきへーき!むしろ人格破壊してきたよ☆」
「え?」
「誰に牙を向けたのか分からさないとねぇ~」

ニコニコとセレスと私が言うとデュースとエリーちゃんは引きつった笑みを浮かべた

「王妃様の生家だっけ??宰相のとこ」
「そそー!ただ…」
「ん?」
「どうしたのです?」

首を傾げてくるエリーがとてつもなく可愛い
セレスは女神みたいだが、エリーは天使だな!!

「天使なのは分かったから話を進めてくれ…」

呆れたようにデュースが言うが、あれ?なんで分かったん「声に出てる」おっと…

「オズワルドには違和感があった」
「違和感?」
「…デュース。1回オズワルドと話し合った方がいいと思うよ?」

デュースの疑問にセレスが答えた
まだ首を傾げてるデュースに少し笑った
これは、大元さえ取り除けば何とかなるんじゃないか??

「さて、俺たちはもう行くよ」
「久々に帰ってきてそれですか?」

デュースになり切っていた私に後ろから声をかけてきた女性

「…母上」
「…!?母上!?待て、グレイ…お前伯爵家だったのか…?」
「元な、元~。今は家出て冒険者だ。
ついでにセレスは元侯爵令嬢な」
「元王太子妃候補ね」

ピースをするセレスにポカーンとするデュースとエリー
じゃないとエリーへの教育なんて出来るわけないじゃんかー

「で、どうなの?グレーシア」
「…母上。今はグレイですよ
撒き餌は上々ですね。後は大物が来るのを待ちます」
「宜しい。こちらも引き継ぎは上手くいってますよ
あなたの思惑通りですね」
「いえいえ。そんなそんな。私如きが滅相もない」
「ふふふっ。あなたが居なくなったあと直ぐに補佐してた子がうちの血縁でそのまま引き継ぐ…なんて出来過ぎてないかしら?」
偶然・・血縁の者が偶然・・能力があって、偶然・・私の不祥事が発覚したからそのまま繰り上げになっただけですよ
まぁ、私の能力がそこまでなかったので引き継いだ現【幻影】の能力が目立ってしまったかもしれませんけどね」

母上の言葉ににっこりと笑って返す
この人に言質を取られたら終わりなので慎重に返事をしている。
内心は冷や汗たらたらであるが、それを出さないように必死なのはここだけの話だ

「まぁいいわ。また、顔出しなさい?
デュース君はあなたにそっくりなのは見た目だけだから面白くないわ」
「母上。デュースで遊ばないでください」
「あなたもこれくらい素直だったら兄妹の仲も悪くなかったのに」
「…母さん失礼だなぁ!ちゃんと貴族だから丁寧にしてたのに!
あの兄も妹もTHE☆貴族って感じだから関わりたくないの知ってただろ!?」
「そうねぇ~私はあなたのその口調も好きよ」
「ありがとうよ!
…はぁ。まぁ苦労かけたのは申し訳ないけど…デュースとエリーのことは頼むな?
ここなら安全だし、《転移テレポート》しやすいしな」

頭をかきながら言うと、仕方ないというような顔をしながら母さんが私の頭を撫でた
そして、横にいるセレスの頭も撫でている

「もちろんよ。数少ないあなたの頼みなんだから」
「…ありがと。じゃあ、私は行くわ。
もう少ししたら迎えにくるから、それまではお願いな?」
「えぇ。今度またお茶しましょう?」
「そうだな。良いお茶請け持ってくるな」
「そうね。お願いするわ」

にっこりと笑う母さんに私も笑顔で返した
すぐに《転移テレポート》で城に戻った





***********
「…何があったかは聞かない方がいいようですね」

デュースは伯爵夫人の顔を見てポツリと呟いた

「そうですね。詳しくは言えませんが、あの子は兄と妹との折り合いが悪くて…
ずーっと私たちがとある事情を無理を強いてきました
でもセレスちゃんと出会って、人が変わったように明るくなっていったのです。
今のあの子が本来のあの子なのでよかったのですが…少し親としては寂しいですね」

伯爵夫人はそう言って緩やかに笑った
それは懺悔にも似た表情でデュースとエミリアは目を見開く
デュースは極秘ながらこの国の政治を学んでいて何がどう大事か
どういう思いでこの政策を打ち立てたか
それをこの伯爵家で伯爵夫人や伯爵本人から聞いていた
強く、国王に仕える見本のような2人に憧れを感じた
エミリアは伯爵夫人やたまに王妃よりマナーや外交を教わっている
伯爵夫人と王妃は仲がいいので2人のマナーを無視したお茶会に呼ばれたりしているため
強い母親像でしか見ていなかった

2人は別宅に住んでいるため、本宅に住んでいるグレイの兄妹には出会ったことがないが
同じような気概だと思っていたがどうやらそうではないらしい
かと言って、伯爵夫婦が贔屓をしているわけでもなさそうなことは見抜いていた

「…無作法を失礼します。」

エミリアが綺麗なカーテシーをした後、すっと伯爵夫人を見つめた

「グレイは無理強いとか感じてませんよ。ただ…今がとても楽しそうでした。
こんな私たちの面倒ごとにまで首を突っ込んでくれるくらい2人はお人よしですしね
正直、ちゃんと伯爵夫婦の気持ちが分かっているからこそ
私と殿下を伯爵宅ココに連れて来たんだと思います
だから、すぐにまたお茶会もできますよ」

エミリアは伯爵夫人の手を握ってにっこりと笑った
伯爵夫人は目を見開いたが、その後眉尻を下げて笑った

「そうね…その時はデュースくんもエミリアちゃんも一緒にお茶会しましょうね」
「もちろんです。ね、殿下!」
「そうだな。…伯爵夫人、この件が片付いたらまたお邪魔させてもらっていいだろうか?」
「是非…お待ちしております。」

3人は笑顔で約束を交わした
遠くない未来に思いを馳せて
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