スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら

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終章 おばあちゃんとのこと

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『そんでさぁ、メンズとの話はどーなったん? なんか進捗あった?』
 
「特にどーもこーもないよ。與田くんとは前報告した通りで、学園祭は同じ実行委員として別に気まずい感じもなくやってたし、今も前みたいな関係性でやり取りしてるし」
 それはもしかしたら、與田くんが少し頑張ってくれているからかもしれないとは思っている。
 
「渡辺くんとは、ちょっといろいろ話したりしたけど……」
 どちらかと言えば、同じ困難に立ち向かう同志的な立ち位置だ。
 
『ふぅん? まあ、なんか進捗あったらちゃんと報告してよ?』
「まーなんかあったらね。マレはどーなのよ?」
『あー……まぁ……なんかあったら言うよー』
 おや? なんかありそうなの?
 
『でも、ほんと、みんな楽しそうで良かった』
 
「ん……ねえ、マレ?」
「ん……?」
「マレはさ、もう、聴いてる?」
「…………おばあちゃんの、こと?」
「……うん」
「……ん、聴いてる……」
「さっき言った、渡辺くんとの話もさ……イベントの時ミヤちゃんていたの覚えてる? 小学生の子。渡辺くんの妹で、あの子難病みたいで、命がどうこうってことではないんだけど、渡辺くんはずっとミヤちゃんのこと心配しながら生きていて……同じとか言えないんだけど、わたしも、おばあちゃんが病気って聞いて……お互いの悩みを話せるようになって、何が解決するってわけでもないんだけど、少しだけ気持ちが楽にというか、靄みたいなもののせいでぐるぐると、考えても仕方ないことを考え続けてしまって心が疲弊してみたいな状況が、クリアになってすべきこと、受け入れるべきこと、がちょっと明快になったっていうかね……」
 
 だから、助けられてるし、同じ状態にあった渡辺くんの、助けにもなれているのだと。そういう話をマレに伝えた。
 
「わたしたち双子じゃん? マレもさ、急にその話聴いて、辛いと思う……遠くだからもどかしいこと、あるよね? 逆にわたしは、近くだから辛いこと、ある。それをさ、定期的に交換し合って、ふたりでおばあちゃんを楽しませたり、安心させたいなぁって」
 
 わたしの独りよがりな希望だろうか。
 
『うん。うん……! そうしたい! わたしね、聴いて、聴いてもさ、何をどうしたら良いのかもわかんないし、瞬間頭真っ白になっちゃうし、おばあちゃんにね、『そうなの? 痛いとかあるの?』なんて間の抜けたことしか言えなくて、通話終わった後になって不安になったり、もっと違うこと言えば良かったって後悔したり、でも、わたわたして連絡入れて言えば良かったって思ったこと言ったって、絶対心配させちゃうだろうなとか思って……わたし自分のこと、本番に強いとか思ってたけど、なんか全然ダメダメで情けなくなったりもして……』
 
 マレでもそうだったのか。
 ううん、おばあちゃんやほまれちゃんも言っていたが、マレは強いが脆くもある。
 
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