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『裏パゴ』実演
しおりを挟む(姫田 祷)
今日演じたどの演目と比較しても。
他の出演者の多くの演目と比べても。
『裏パゴ』の演奏は、ゆったりとしたくつろいだ雰囲気をフロアにもたらしていた。
いのりとみーとサラの美しく、少し切なげなメロディに、わたしとキョウさんがそっとリズムを添える。
上質ながらカジュアルさを持った余裕のある紳士淑女の集うラウンジにでもなったかのようだ。
フルートとヴァイオリンと言う、普段のサンバではなかなかお目に掛からない楽器も、『サウタージ』という、日本語に無理に訳せば『郷愁』と言う言葉を当てはめられることの多い独特の感傷を表現するうえでは、むしろ向いているように思えた。
弦楽器ながらパーカッション的な役割もこなすいのりちゃんのバンジョーカヴァコのメロディ。
載せられた歌は、やっぱりどこか切ない。
楽しいのになぜか遠くに切なさを感じるというのも、この文化の独特なところではないだろうか。
ステージで優雅に踊っていたにーなは、早くもフロアを踊りながら練り歩き、テーブル付近にまで遠征している。
イベントはそろそろ終盤に差し掛かっている。
タイミング的にも適したプログラムとなっているのではないだろうか。
休憩的な立ち位置という側面も無くは無いが、あくまでも目指したのは文化としての『パゴーヂ』だ。
大騒ぎしてハイテンションで歌い踊ることはしなくても、音楽に身を委ねながら、飲み食いなどはしつつ、気ままに歌ったり踊ったり、なんなら手元の楽器で軽く参加したり、なんていう形でフロア全体を巻き込みたい。
仕込みと言うわけではないが、フロアに居る『ソルエス』のメンバーには、なるべく演奏やダンスに参加してもらうようあらかじめお願いしてあった。
ステージ付近の立ち見エリアを超え、会場の壁面の近くにはフリーで座れるイスとテーブルがいくつか用意されていた。
同じく壁面近く、会場の入り口に設けられた受付付近にはドリンクやフードを頼めるカウンターがある。
全ての出番を終えたほまれちゃんとマレは、空いていた席に座ってお肉らしきものを食べていた。シュラスコセットだろうか。
良いなぁ。あれ、わたしも食べたいと思っていたんだよね。
リラックスした様子のふたりは、『裏パゴ』がスタンバイを終えたところで、ステージ前まで移動してくれた。
ふたりとも今日の出演は全て終了している。
安堵と解放感に包まれ、あとは音楽を楽しみながらゆっくりお肉や甘いものを食べて身体を休めていて良いのに。
わたしの演目を、ちゃんと目の前で見ようとしてくれたのが嬉しかった。
食べ物の入ったトレーはテーブルに置いてきている。
ということは、音楽にノったり踊ったり、割と本気で楽しんでくれる心づもりがあるのだろう。
ならば、応えなくてはね。
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