詩片の灯影② 〜過去から来た言葉と未来へ届ける言葉

桜のはなびら

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真実と嘘

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 真帆から、その身に起こっているとされていることを聞かされた。
 それは真帆の主観を通して語られた事実であり、辛さや悲しみなどは真帆の感情を経由して表現された感想である。
 それは真帆にとっての真実であっても、事実かどうかは別の評価と判断が必要であろう。


 意思を持って嘘をつく子がいる。
 無意識に嘘をつく子がいる。
 嘘ではないが大げさな表現をする子がいる。
 嘘ではないが事実と異なる表現をする子がいる。
 自分の気持ちと逆のことを言ってしまう子がいる。
 事実と異なる捉え方をしているために事実と異なることを事実として伝えてしまう子がいる。
 善意によって事実を歪めてしまう子がいる。
 悪意によって事実を捻じ曲げてしまう子がいる。
 
 自我が育ち知恵が育まれモラルも常識もずるさも損得勘定も身に着けた高校生ならば、小学生のような無邪気な嘘や誤解、天邪鬼さは減るかもしれないが、その分大人と同じ属性の嘘も混ざってくる。
 それを言葉だけで見極めるのは難しい。
 人を信じるという行為と、認知できた情報のみで下した判断を正しいと思い込む行為は、本質が全く異なるものだ。

 
 彼女の場合はどうであろうか。
 論理的で理性的で自他を俯瞰で見下ろして言葉で表現できる大人びた生徒。
 純粋で抒情的で豊かであり繊細でもある感受性の持ち主である年齢の割には擦れていない少女のような生徒。
 圭吾は彼女の中に、やや悲劇のヒロイン気質な文学少女の要素を見出していた。
 
 真帆の言葉に嘘はない。
 傷ついているのは間違いがない。
 どうもそれは家庭でのことのようだ。
 しかし、ならば、彼女の家族が加害者足るかと言えば別の話だ。
 
「どうせ僕は愛されていない」
「弟ばっかり可愛がって、僕はいっつも我慢させられる」
「今日は無視された」
「要らない子なんだ」
「きっと拾われてきたんだ」

 子どもというのはそんなことを思うものだ。
 圭吾は己の少年時代を思い出し、苦笑した。

 そう思った子どもの気持ちは本物だったとしても、親の愛情が子どもが下した評価とリンクしているとは限らない。
 子どもの視野と視点では気づきようもない、大きな愛情があったとしても、気づいていない子どもにとっては無いものとされてしまうのだから。その子が、大人になってその愛に気が付くまで。

 それは周りが介入して教え込むものだろうか?

 酷ければ、致命的なことになり得るならば、誤解を解く必要はあろう。
 しかし大抵の場合は、反抗期から思春期の間を彩る痛々しく恥ずかしくも微笑ましい精神の成長の過程として、それぞれの心に残るものとなるだろう。
 
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