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十五歳 浅草サンバカーニバル
浅草のテーマ
しおりを挟む『ソルエス』はこの三年間、『浅草サンバカーニバル』はブラジル三部作と銘打ち、一昨年は『美味しいブラジル』という『エンヘード』(テーマ)にして、ブラジルの食文化を現すパレードを行った。
テーマを表現するダンサーのパートを『アーラ』と言い、いくつかのグループに分かれ、それぞれテーマを表現する衣装を身につけ、振り付けを踊る。
この回はブラジル料理をイメージするアーラが作られた。
華やかな女性ダンサーは鮮やかな肉が乱舞する『シュハスコ』をイメージしたタンガを身につけたパシスタたち。
ドーム型の大きなスカートのバイアーナたちはブラジルの丸いチーズパン『ポンデケージョ』や丸いコロッケのような『コシーニャ』をモチーフにしたバイアーナドレス。
男性ダンサーのマランドロはブラジル定番カクテルの『カイピリーニャ』をイメージした大人っぽい雰囲気のタキシード。などなど。
去年は『情熱のブラジル』だ。
『サッカー』や『モデル』、『カポエイラ』、『柔術』など、ブラジルといえばイメージされるものをアーラにした。
年少の子どもダンサー『クリアンサス』が扮した『コーヒー豆』が可愛いと、他チームから絶賛されていた。
そして今年。
三部作の集大成たる完結編は、『悠久のブラジル』とし、ブラジルの自然や遺跡など、壮大で荘厳なイメージを盛り込む。
波の模様がデザイン化されシンボルにもなっている『コパカバーナビーチ』、砂糖のパンと呼ばれる奇岩『ポン・デ・アスカール』、世界最大のアマゾン川と密林が広がる『アマゾン』、ブラジル最大の都市『サンパウロ』、丘の頂上に腕を広げて立つキリスト像が有名な『リオデジャネイロ』などなど。
パレードの先頭はテーマをわかりやすく伝える『コミサォン・ヂ・フレンチ』は、三年間通して、『ブラジル』をイメージさせる構成にしていた。
ブラジル国旗の配色のダンサーを中心に、その年のテーマに合わせた小物や仕掛けなどを用意していた。
今年は今まで作った衣装や装飾で使えそうなものは全部使って、テーマを理解させると同時に強いインパクトを持たせる作戦で行くそうだ。
いつも以上に重要な位置付けとなるコミサォン。
今年のメンバーは、ハル、アキ、ウリのマランドロ三人と、わたし、ルイルイ、ミツバのパシスタ三人。計六名編成だ。
他のアーラの戦力はなるべく低下させず、コミサォンの出来映えを可能な限り高める編成にしたとハルが言っていた。
今年は初のマランドロ三人体制だ。
アキとウリは歴が浅くとも雰囲気があり見栄えもよく、実力も身につけつつある。
ベテランのハルが引き上げることでマランドロ全体としてレベルの高いパフォーマンスが組めそうだ。
パシスタは、ミツバは『ソルエス』メンバーとしては新人だけど他チームで実績のある実力者だ。アーラで振り付けなど他のパシスタとの連携はすぐには難しいかもしれないが、個としての実力は折り紙付きなのだから、なるべく個が活きる編成に加えた方が良い。
るいぷるはアキやウリと同程度の新人ではあるが、ダンス経験者という背景もあって既にある程度の水準は満たしたダンサーとなっている。
ともすればばらばらになりかねない個性派パシスタふたりをまとめるのがチーム歴とダンサー歴を兼ね備えているわたしの役割だ。
今のわたしならできるとハルが見込んでくれたのだと思うと嬉しかったし、やり抜こうと思った。
学生チームは最年長だったほづみは既に大人ダンサーのカテゴリに入っている。
今まではわたしがリーダー的な立ち位置になっていたが、今年はひいとみことのふたり体制でいくそうだ。
ひいが全体を統制し、みことが年少組の面倒を見つつ、ひいを補佐する。
ふたりとも既にわたしに匹敵する実力を見せ始めている。一方年少組が中学生に上がってよりダンスのキレに磨きがかかり、体力も増大していたため、チーム全体としてかなり高いレベルでまとまっていた。
寂しくはあるが、わたしが抜けても影響はほとんどないと思えた。
ハルは、とりあえずこの六名という言い方をした。
どうも、スペシャルゲストの用意があるらしい。スケジュール調整中でまだ出られるかわからないようだ。
もし出られたら、単純な戦力増はもちろんのこと、『ソルエス』としては大きな意味を持つと言っていた。
誰が来るんだろう?
多分すごくうまい人だと思う。楽しみだ。調整がうまくいったら良いな。
応援ありがとうございます!
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