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助け舟 (LINK:primeira desejo39)

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 母は待つということを知らない。
 問えば即回答が得られて然るべきだと思っているのだ。押し黙っているがんちゃんに、明らかに苛立ちを募らせていた。

 それでも次の言葉が出ないがんちゃん。
 きっと頭の中は高速で回転しているに違いない。けれども、妙案は出てこないようだ。
 段々とがんちゃんの顔色が青褪めてきている。
 
 可哀そうに。
 あと可愛い。
 
 
 しかし、これ以上は破滅の道だ。母もがんこも、その道は進んではいけない。
 幸い、私の登場で母の注意は私にも向いている。且つ、私は問いかける形で声をかけた。
 母はがんこを見据えたままではあったが、私に回答をしようとしていた。
 
 手を打つなら、この瞬間だろう。
 
「めがみ、荷物重そうだよ。一旦部屋に行かせたら?」
 
 相手に答えさせようとしておきながら、答えようとした相手よりも先に別の質問を重ねる。
 母の意識が私に割かれた。がんこから母の目線が外れた。この隙は突かせてもらう。
 がんこには目で部屋に行くよう促す。
 
 後の先は言い方を変えればカウンターだ。
 初動からペースを握るなら先の先も悪くないが、既に事態が進行しているなら、うまく嵌ればより強力なカウンターの方が主導権を握りやすい。
 相手にはターンなど与えなくて良く、与える時は、意図した行動を相手自らにさせる時だ。
 母の意識は分散している。
 私に答えようとこちらを向いたが、部屋に行こうとしているがんこも気にしていて、何か言おうとしている。
 
 母のターンなどない。私はもう一手打つ。

 
「あ、もうこんな時間。めがみ、早くお風呂入って寝ちゃいなね。私もそろそろ寝ないと。お母さんも最近疲れてない? 今日は休もう」
 
 これで母のやり取りの対象は私に変わった。
 さて、後顧の憂いを無くすための仕上げだ。
 要は母の懸念がすべてに於いて払拭されさえすれば良いのだ。
 
 私は母に、めがみとは私が話しとくよと伝えた。
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