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がんちゃんの想い。私の想い。(LINK:primeira desejo58)
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私は精一杯笑顔を作って頷き、がんこの次の言葉を待った。
「なのに、祷が一緒だと嫌だって思うのは、全部わたしに問題があるから。
わたしがなにをやっても祷には勝てなくて、勝手に悔しがって、それが嫌で比較されないように祷を避けてた」
がんこは戦っている。
その戦いを孤独にさせてはいけない。
がんこ自身が、感覚として持っていたものを、具体的な言葉にして誰かに伝える情報に換えている。
その誰かは、私だ。
私が、がんこの戦いを側で支えなくては。
「祷は全然悪くないのに、わたしが、勝手に......ごめんなさい」
がんこが声を詰まらせた。
必要な情報は、絞り出すようにではあったけれど、全部言えていたよ。
がんこは、負けなかった。最後まで立ったまま、逃げずに打ち合えた。
戦い終えて、出し尽くしたならば、倒れることだって許される。
そこで掛けるべき言葉は、「よく戦った。あとはゆっくり休んで」と言ったものだろう。
本当に、がんちゃんは強いと思う。
強くなったのか、元から強かったのか。
言いたくないこと。認めたくない自分のコンプレックの根っこにあるもの。知りたくなかった自分の醜い心の裡。
そんなものをすべてを認めて、身内に開示するなんて、プライドとか、気恥ずかしさとか、認めたくない情けなさなどが邪魔をして、大人にだって簡単にできるものではないと思う。
私がこんなに嬉しいのはがんちゃんの成長を実感したからだろうか。
それとも、がんちゃんが私にありのままを曝け出し、ぶつかって来てくれたからだろうか。
「うん。良くわかったよ。伝えてくれてありがとう。がんこの気持ち、きちんと伝えてくれてとても嬉しい。だから謝らないで」
いけない。嬉しくて目頭が熱くなって来てしまった。
私が先に涙を見せたら、がんこも釣られて泣いてしまう。もう結界寸前なのは目の前で目をうるうるさせて、身体をふるふるさせているがんちゃんを見れば明らかだ。かわいいなこれ。
ふたりで感涙してお茶を濁すような場にしてはならない。
「祷は、わたしが、『ソルエス』に入ってるから、入るの?」
がんちゃん、もう限界じゃない。
泣かないでよ。私の方が釣られてしまう。
がんこは、私ががんこのために保護者的な立ち位置で入会しようとしているのではと考えている。
それを、望んでいないのだ。
私の存在ががんこの立場を脅かすとか、利己的な理由はもうない。
望まぬ理由は、がんこ自身のためではなく、がんこのための選択をする私のためだ。
今、がんこが流している涙は、私のための涙なのだ。
「がんちゃんと一緒に楽器やれたら楽しいだろうなって思ったから、がんちゃんがいるから入りたいって質問にはyesだよ。
でも、お母さんの代わりになってがんこの様子を見るためとか、そう言う意図はないよ。今日楽器叩いてみて、楽しくて、やりたいって思ったから、がんちゃんが一緒のチームになるのが嫌じゃなければ、入りたいな」
丁寧に話した。
説明ではない。私の気持ちを伝えた。
掛け値のない、私の気持ち。私の希望を。
回答までのほんの一瞬の間が、まるで時が止まったかのようだった。
「わたしも、お姉ちゃんと一緒にやってみたい」
時が動き出した時。
耐えていた、堪えていた想いが。
意思と意識の制御から離れて、勝手に目から溢れ出していた。
「なのに、祷が一緒だと嫌だって思うのは、全部わたしに問題があるから。
わたしがなにをやっても祷には勝てなくて、勝手に悔しがって、それが嫌で比較されないように祷を避けてた」
がんこは戦っている。
その戦いを孤独にさせてはいけない。
がんこ自身が、感覚として持っていたものを、具体的な言葉にして誰かに伝える情報に換えている。
その誰かは、私だ。
私が、がんこの戦いを側で支えなくては。
「祷は全然悪くないのに、わたしが、勝手に......ごめんなさい」
がんこが声を詰まらせた。
必要な情報は、絞り出すようにではあったけれど、全部言えていたよ。
がんこは、負けなかった。最後まで立ったまま、逃げずに打ち合えた。
戦い終えて、出し尽くしたならば、倒れることだって許される。
そこで掛けるべき言葉は、「よく戦った。あとはゆっくり休んで」と言ったものだろう。
本当に、がんちゃんは強いと思う。
強くなったのか、元から強かったのか。
言いたくないこと。認めたくない自分のコンプレックの根っこにあるもの。知りたくなかった自分の醜い心の裡。
そんなものをすべてを認めて、身内に開示するなんて、プライドとか、気恥ずかしさとか、認めたくない情けなさなどが邪魔をして、大人にだって簡単にできるものではないと思う。
私がこんなに嬉しいのはがんちゃんの成長を実感したからだろうか。
それとも、がんちゃんが私にありのままを曝け出し、ぶつかって来てくれたからだろうか。
「うん。良くわかったよ。伝えてくれてありがとう。がんこの気持ち、きちんと伝えてくれてとても嬉しい。だから謝らないで」
いけない。嬉しくて目頭が熱くなって来てしまった。
私が先に涙を見せたら、がんこも釣られて泣いてしまう。もう結界寸前なのは目の前で目をうるうるさせて、身体をふるふるさせているがんちゃんを見れば明らかだ。かわいいなこれ。
ふたりで感涙してお茶を濁すような場にしてはならない。
「祷は、わたしが、『ソルエス』に入ってるから、入るの?」
がんちゃん、もう限界じゃない。
泣かないでよ。私の方が釣られてしまう。
がんこは、私ががんこのために保護者的な立ち位置で入会しようとしているのではと考えている。
それを、望んでいないのだ。
私の存在ががんこの立場を脅かすとか、利己的な理由はもうない。
望まぬ理由は、がんこ自身のためではなく、がんこのための選択をする私のためだ。
今、がんこが流している涙は、私のための涙なのだ。
「がんちゃんと一緒に楽器やれたら楽しいだろうなって思ったから、がんちゃんがいるから入りたいって質問にはyesだよ。
でも、お母さんの代わりになってがんこの様子を見るためとか、そう言う意図はないよ。今日楽器叩いてみて、楽しくて、やりたいって思ったから、がんちゃんが一緒のチームになるのが嫌じゃなければ、入りたいな」
丁寧に話した。
説明ではない。私の気持ちを伝えた。
掛け値のない、私の気持ち。私の希望を。
回答までのほんの一瞬の間が、まるで時が止まったかのようだった。
「わたしも、お姉ちゃんと一緒にやってみたい」
時が動き出した時。
耐えていた、堪えていた想いが。
意思と意識の制御から離れて、勝手に目から溢れ出していた。
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