選ばれた勇者は保育士になりました

EAU

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第13話  ここに繋げるために番外編を書きました。

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 朝晩の風が涼しくなってきたころ、温泉宿の前に一台の馬車が止まった。
 馬車から降りてきた一人の女性は、黒と灰色の煉瓦で作られた綺麗な道や大きな噴水、そこから延びる水路を見て、その場に立ち尽くした。
「素晴らしいですわ! 王都と同じぐらいに綺麗ですわ!」
 女性カトリーヌは、兄から話に聞いていた以上の村の景観に大興奮していた。
「おい、カトリーヌ。早くどけよ」
 大興奮しているカトリーヌの後ろから兄のリチャードが小突いてきた。
「兄上様、こんなに素晴らしいところだなんて、なんで教えてくださらなかったのですか!?」
「いや、俺も驚いている。前に来たときはこんな感じじゃなかった」
 たった数か月の間に代わってしまった景観にリチャードは驚いていた。前に来たときは土むき出しの砂埃が舞う道だったはず。レンガが敷き詰められた道などどこにもなく、「ザ!田舎」という感じだった。

「いらっしゃいませ、エテさん」
 宿の中からエミーが出迎えに出てきた。
「今日からまたしばらくお願いします」
 リチャードとカトリーヌとは反対側から降りたエテ王子が、出迎えたエミーに挨拶をした。
 そのエミーの声を聞いたリチャードはドキン!っと心臓が高鳴り、冷静を取り戻そうと何度も深呼吸していた。そんな兄の姿にカトリーヌは不思議そうに首を傾げた。
「ヴァーグさんがお待ちです。ご案内しますね」
 そういうとエミーは宿の中ではなく、レンガ道を歩き出した。
「え? ヴァーグさんはここにはいないんですか?」
「もう一つのお店にいます」
「店? 2店目をオープンしたのか。おい、リチャード、移動するぞ」
 馬車の向こう側にいるであろうリチャードに声をかけると、カトリーヌだけがひょっこりと顔を見せた。
「あら、あなたは…」
 カトリーヌはエミーの顔を見た途端、彼女を知っている様子だった。
「私はこの宿の従業員のエミーと申します」
「王立研究院御用達の雑貨屋さんで働いていませんでした?」
「え…ええ。今年の初めまでは働いていましたけど…」
「カトリーヌ殿、エミー嬢をご存じなんですか?」
「ええ。わたくし、あの雑貨屋さんの常連でしたもの。わたくしはカトリーヌ・ミゼルと申します。先日は兄がお世話になりました」
「兄?」
「カトリーヌ殿はリチャードの妹君だ。ところでリチャードはどうしたんですか?」
「またご自分の世界に浸っておりますわ」
 カトリーヌが馬車の反対側を見るように促した。
 馬車の反対側では、リチャードが大きく深呼吸したり、空に向かってブツブツと何か呪文のような言葉を唱えていたり、かと思えば急に蹲ったりと、道行く村人たちからヒソヒソとされていた。
「あ…あの、リチャードさん?」
 エミーが声をかけると、心臓が口から飛び出しそうになるほど驚いたリチャードは、
「はいぃぃぃいぃぃ!?」
と裏返った声で絶叫に近い声を出した。
「お久しぶりです、リチャードさん」
「エエエェェェエエエエエミー嬢!! ほほほほほ本日はお日柄もよく、ご機嫌麗しゅうございますぅぅぅぅ!!!」
 裏返った声に、直立不動になるリチャード。
 その姿にエミーはキョトンとした顔を見せたが、しばらくしてクスクスと笑い出した。
「面白い方ですね、リチャードさんって」
「あ…いや、あの…その…」
「ヴァーグさんがお待ちですわ。ご案内しますね」
 まだクスクスと笑い続けるエミーを見て、リチャードは急に顔を真っ赤にして小さく頷いた。

 そんな二人の様子を見ていたカトリーヌはピンっときた。
「エテ様、兄上様が可笑しな行動をとるのは、あの方が原因ですの?」
「らしいですね。リチャードにとって初めての恋でしょうね」
「まぁ」
 今まで女の影がなかったリチャードの初恋に喜ぶカトリーヌだったが、実は兄をからかう材料が見つかって嬉しくてたまらなかった。
「そのためにはエミーさんと仲良くしなくては!!」
 別の事で意気込む彼女に、
「本題も宜しく頼むよ~」
と小さな声でエールを送るエテ王子だった。



 エミーがエテ王子たちを案内したのは、メインストリートを一本中に入ったところにある保育所だった。
 今日も子供を預ける人がいないのか、門は閉ざされ、隣接する喫茶店の入り口には閉店を知らせる札が掛けられていた。
 ヴァーグは喫茶店にいた。
 エミーに案内された3人は、喫茶店の中に足を踏み入れると、そこにもう1人いる事に気付いた。
「エミー姉さん、案内ありがとう」
 そこにいたのはケインだった。今日はレストランがお昼過ぎから休みの為、ヴァーグに連れられてきたようだ。
「じゃあ、宿に戻るわね」
「終わったら俺が連れていくよ」
「お願いね」
 エミーはエテ王子たちに小さくお辞儀をすると、宿へと戻っていった。
 リチャードが店を出ていくエミーに向かって小さく手を振り続けたことは誰も見ていなかった。

「お久しぶりです、ヴァーグさん」
「まさかこんなに早く再会するとは思いませんでした、エテさん。その後、コロリスさんとは連絡取っていますか?」
「え!? あ…あの、それは…」
 顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに顔を軽く掻くエテ王子。予想もしなかった事に動揺を隠せなかった。
 エテ王子のそんな姿を初めて見たカトリーヌは、迫ほどの奇怪な動きをするリチャードの時と同じように不思議そうに首を傾げた。
「コロリスさんなら、明日、ここに来ますよね?」
 ヴァーグの隣からケインが口を挟んできた。
「本当ですか!?」
「ええ。いまは隣の国で公演をしているようですが、団員がここのお菓子を気に入ってくれて買い出しに定期的に来てくれるんです。グリフォンに乗ってくるから行き来が楽なんですって」
「それって、団員にいいように使われているだけじゃ…」
「買い出しは彼女から頼み込んだそうですよ。なんでも、この村に来れば『あの人』に会えるかもしれないって言っていましたよ。『あの人』って誰の事かしら?」
 ヴァーグはクスクス笑いだした。
 ケインは何を話しているのか理解できずに立ち尽くしていたが、エテ王子はますます顔を赤くしていった。
「なんだよ。エテの奴、彼女がいるのかよ」
 リチャードがポツリと呟くと、恋愛話大好きなカトリーヌが目をキラーンと輝かせた。
「兄上様だけでなくエテ様にまで恋話がありますの!? 詳しく聞きたいですわ!」
 興味津々と顔に書いてあるカトリーヌの目はキラキラと輝いていた。
「そのお話は大事な会議が終わりましたらお話しますね。まずは本来の目的を話さなくては」
 クスクス笑うヴァーグの声で我に返ったカトリーヌは顔を真っ赤にしながら「はい」と小さな声で返事をした。
 なんとなく気温が上昇したかのように感じる喫茶店で、『本来の目的』についての話し合いが始まった。


 ヴァーグとケインが集めた情報はまだまだ少なすぎた。
「王立研究院からの情報だと、魔法玉は上層部しか知らない、いわゆる『国家機密』だったそうです。それが8年前のある日、この近くに建つ教会から魔法玉の研究を進めるように伝達があったんです。近い将来、必ず必要になる。それまでに、長い間封印されていた魔法玉を研究し、出来てば生産できるまで進めてほしいとその教会の神父自ら研究院に出向いて所長に伝えたようです」
「…8年前…?」
「はい。その頃から研究が公になり、効力の実践を兼ねてエテが使うようになったんです」
「俺も王立研究院から直々に頼まれて焦りましたよ。なにせ使い方が分からないんですから。とりあえず、丸いガラス玉で、拳銃の銃口にぴったり合うので、銃でしか試していないんですが、この魔法玉が他の武器に使え、大量生産できるようになれば、我が国の戦闘能力は格段に上がると思うんです」
「他の武器……球体を嵌める仕様……」
「あ…あの、ヴァーグさん?」
「え?」
「俺たちの話、聞いてました?」
「あ…ええ、聞いていたわ。今のところ銃口に魔法玉を突っ込んで使用するしか使い道はないってことよね。それで、どんな効力がある魔法玉が作られているの?」
「今のところ、火を操る物、植物を操る物、水を操る物、雷を操る物の四つだけです。それで、どうやら使い捨てと繰り返し使える物があるみたいなんです」
 そういいながら、テーブルの上に魔法玉を出したエテ王子は、赤い魔法玉をヴァーグとケインの目線の高さに掲げた。
「俺には繰り返し使える物の方には、中に靄(もや)が見えるんです。ヴァーグさんたちは見えますか?」
 目の高さに掲げられた魔法玉の中に靄が見えたのはヴァーグたけだった。
「私は見えますよ」
「俺は見えない…」
 ケインは目を細めたり、逆に見開いたりして魔法玉を見続けたが、ただの赤い玉にしか見えなかった。
「やっぱり魔力が関係しているんですか? リチャードは見えないっていうんです」
 エテ王子がヴァーグに訊ねた。
「ちょっと待ってね」
 ヴァーグはパソコンを取り出すと、【人物】のページを開いた。
 そして、
「あ~~……魔法攻撃が関係しているかもしれないわね」
と、小さな声でつぶやいた。
「「魔法攻撃?」」
 リチャードとカトリーヌが同時に声を発した。
「エテさんは物理攻撃…剣などで直接的にダメージを与えるよりも、魔法攻撃…この魔法玉を使って火や水を操ってダメージを与える力のほうが大きいみたい。だから靄が見えるのかもね。私も魔法攻撃の力が高いから、エテさんと同じように見えるのかも」
「え? じゃ・・じゃあ、わたしはどうなんですか?」
 リチャードが食いつくように身を乗り出した。
「リチャードさんは、物理攻撃の方が強いです。でも、魔法攻撃もそれなりの力がありますので、鍛えればエテさんと同じ能力になるかもしれません。でも…」
「でも?」
「リチャードさんって、防御がとても強いんですね。物理も魔法も防御の能力がずば抜けています」
「あ、それは…」
 リチャードが答えようとしたところ、
「兄上様は、毎日のようにエテ様に勝負を挑んでいますもの。防御に関しては国一番だと思いますわ」
と、冷静にお茶を飲んでいたカトリーヌが口を挟んできた。
「毎日…ですか?」
「ええ。兄上様たちが学校に通っていたころからずっとですわ。今朝も一勝負したんですよね?」
「ああ。そして負けた…」
「いつになったら勝てるのかしら?」
「いずれは勝つ!」
 高らかに宣言するリチャードだが、周りの反応は冷たいもので、エテ王子は「がんばれ~」と棒読みだし、カトリーヌも「いつになるのかしら?」と同情することもなかった。

 そんな三人を目の前に見て、ヴァーグは「ん?」とある画面を見て不思議に思うことがあった。
「カトリーヌさんって……」
「はい、なんでこざいますか?」
「あ……ううん、何でもないです」
 ヴァーグが見ていたのはカトリーヌの詳細画面。ただの令嬢だと思っていたが、彼女の詳細画面にも戦闘能力が書かれてあった。しかも物理攻撃と物理防御はリチャードとほぼ同じ能力を持っていた。
(もしかしてカトリーヌさんって……女戦士?)
 能力の高さだけではなく、戦闘スキルも攻撃系ばかりで得意武器も存在しているようだった。
 改めてエテ王子の画面を見ると得意武器は銃、リチャードは長剣と書かれてあり、カトリーヌは短剣のようだ。
「ヴァーグさん、ヴァーグさん、俺は? 俺は?」
 彼女の隣からケインが体を小刻みに動かしながら聞いてきた。
「ケインの戦闘能力? え~とね……」
 ケインの詳細画面を出したヴァーグは、そこに書かれた数値を見て、「ふっ」と乾いた笑い声を出した。
「え? え?」
 哀れな目で見てくるヴァーグに、ケインは動揺していた。
「ま、鍛えれば強くなれるよ。エテさんやリチャードさんに鍛えてもらいなさい」
「え? え!?」
 それ以上、何も教えてくれなかった。
 何回かヴァーグと近場を冒険しているケインだが、レベルはかなり低いらしい。
 だが、ケインの得意武器が弓矢と書かれてある。一度も弓矢を使ったところを見たことがないが、それなりに扱うことができるのだろうか?

 ふと8年前のある出来事をヴァーグは思い出した。
 初めてこの世界に来たとき、最初に立ち寄った教会で出会った神父から貰った武器がある。
「道中で一緒に旅をする仲間と出会うだろう。出会う仲間たちに必要となるはずだ」
 そう言われていただいた武器は、ここ最近使っていない。それにその武器には……
「あーーーーーー!!!」
 突然大声で叫んだヴァーグに、ケインたちは驚いて彼女を見た。
「ど…どうしたんですか?」
 ケインが叫んだ理由を聞こうとした途端、ヴァーグは喫茶店のキッチンの中に飛び込んでいった。そしていつも持ち歩いているトランクを引っ張り出してくると、テーブルの上にドンっと勢いよく置いた。
 一体どうしたんだろう…と心配するケインたちを余所に、ヴァーグはドランクの中に手を突っ込み、次から次へと黄金に輝く武器をテーブルの上に並べ始めた。
 テーブルの上に並べられたのは黄金に輝く鞘に納められた長剣と短剣、黄金に輝く弓と先端がクリスタルで作られている矢、黄金に輝く拳銃、黄金に輝くハープ、黄金に輝く柄に先端に大きなサファイアが着いている杖の六つの武器。どれも見たことがない物ばかりだ。
「ヴァーグさん、これは…」
 そう問いかけるエテ王子の言葉すら聞こえていないヴァーグは、短剣を手に取ると、柄の部分を丹念に調べ、そしてテーブルの上に転がっていた赤い魔法玉を、柄の部分にあった小さな窪みに嵌め込んだ。
 魔法玉はカチッと音を立てながら綺麗に嵌った。そしてヴァーグがゆっくりと鞘を抜くと、中から炎に包まれた刃が現れた。
「!!??」
 エテ王子もリチャードも声にならない声で驚いていた。
 何を思ったのか、ヴァーグは燃え続ける短剣の柄から魔法玉を抜き取った。するといままで炎に包まれていた刃から炎は消え、研ぎ澄まされた刃だけになった。
「これは一体…」
「ヴァーグさん、これをどこで手に入れたんですか?」
「……神父様が仰っていた【攻撃能力を上げる何か】って、魔法玉のことだったのね…」
 8年前に出会った神父から頂いた武器についていた窪みが、ここで判明するとは思いもよらなかった。しかも神父は近い将来手に入るとも言っていた。研究も進められるとも言っていた。あの神父は未来を予知できたのか?

 ヴァーグはこの武器の入手経路をケインたちに話した。
 この世界とは別の世界から来たことだけは話さなかったが、旅の途中で立ち寄った教会で出会った神父に食事を気に入られ、そのお礼として頂いたことにした。
「神のお告げで神父が手にし、自分は扱えないから旅を続けるヴァーグさんに渡した…ってこと?」
「一応……」
「ヴァーグさん、この武器をお借りすることはできませんか? 王立研究院で調べてみます」
「それぞれ得意な武器をお持ちください。わたしはロッド(杖)しか使えないので、使うことができる方に持ってもらったほうが武器も喜ぶと思います」
「貰うことはできないですよ! とても貴重なものなんですから!」
「神父様も仰っていました。『道中で一緒に旅をする仲間と出会うだろう。出会う仲間たちに必要となるはずだ』と。わたしは旅をする冒険者ではないので、仲間はいませんので遠慮はいりません」
「だけど…」
 なかなか首を縦に振らないエテ王子とリチャードは、顔を見合わせながら困り果てた顔をしていた。
 そこでヴァーグはある条件を出した。
「では、こうしましょうか。魔法玉の実験台として皆さんにお貸しします。この世界から争い事が完全になくなったらお返しください。孫の世代になろうが、何百年先になろうが、平和が訪れたら返す。それでどうですか?」
「何百年先…って、俺やあなたが生きていないではないですか」
「それは子々孫々まで語り継いでいってください。わたしも後継者を作りますので、本当の平和が訪れたら、その時代の私たちの意思を受け継ぐ者たちに女神の武器をどこかに収めるように伝えていきましょう」
「……俺たちで伝説を作ってしまうのか……」
 この国にもいくつかの【言い伝え】が残されている。その新たな【言い伝え】を自分たちが作る場面に遭遇するとは思いもよらなかった。
「あと、もう一つお願いがあるのですが……」
 ヴァーグはこの機会を逃してたまるか!と言わんばかりに、目の前にいる戦士たちにあるお願い事をした。
 それはマイケルが持っているであろう魔法玉とも関連があり、この作戦が成功すればマイケルは自ら魔法球を盗んだ証拠と出すだろうと予測した。


 翌日、温泉宿の裏手に流れる川の岸辺で、ヴァーグの「お願い事」が行われていた。
「だからって、なんで俺がこんなことしなくちゃいけないんですかーーーーー!!」
 絶叫に近いケインの叫びが辺りに響き渡っていた。
 ケインは太い棒に縄でグルグルに縛り付けられており、身動きは一切出来ない。そのケインに向かって、エテ王子がヴァーグから借りている『女神の拳銃』に赤い魔法玉を嵌め込み、ケインに向かって何度も火柱を吹き続けていたのである。そのケインはヴァーグから体力を回復してくれるエメラルドのイヤリングを借りているため、体力がなくなることはない。
 エテ王子は楽しそうに笑顔で『女神の拳銃』と魔法玉の性能を確かめており、リチャードと勝負している時よりも笑顔が輝いていた。
 その様子をカトリーヌは、大きなパラソルの下で、テーブルに用意された沢山のお菓子を食べながら見続けていた。
「どうですか?」
 追加のホールケーキを持っていたヴァーグは、テーブルにケーキを置くとカトリーヌの隣に座った。
「とっても美味しいですわ!」
「気に入ってくれてありがとうございます。今日の夕食はご希望にお応えして流しそうめんにしますね」
「エミーさんからお聞きして、一度体験してみたかったんですの。王都にいると体験できないことばかりで楽しいですわ」
 カトリーヌも弾けたような笑顔を見せている。お菓子が美味しいからなのか、王都とは違う暮らしができるからなのかはわからないが、楽しんでいることがよく伝わる。
 そこに空の散歩から戻ってきたアクアがエテ王子の隣にストンと降り立った。そしてニヤっと笑うと、身動きのできないケインに向かって勢いよく水を噴射させた。勢いは前に増して強くなっており、河原の石を積み上げて支えていた太い棒はケインを縛り付けたまま、勢いよく吹き飛ばされてしまった。
 一切手が出せないケインに向かって、アクアはケラケラと笑い続けた。
「アクア、てめーーーーー!!!」
 かなり後方に飛ばされたケインはジタバタと暴れだしたが、棒に括り付けられているため自由に動けない。
 その様子を見てアクアはさらに笑い続けた。
「なるほど。これで水に対する防御のレベルが上がるわね」
 アクアの水攻撃を受けるケインを助けることなく、ヴァーグは彼の防御レベルが上がることに関心していた。


 同じ頃、リチャードは護衛と称しエミーと市場まで買い物に来ていた。
「リチャードさん、エテさんのお付き合いをしなくて大丈夫なんですか?」
「いいんです! エミー殿の護衛のほうが大切ですから!」
 力説するリチャードは拳を強く握りしめた。
「ここはそんなに物騒ではないんですよ」
「油断してはいけませんよ。何があるかわかりませんから。それに半分は荷物持ちですから」
「お客様に荷物持ちだなんて…」
「気にしないください。体力作りも兼ねていますから」
 何を言っても付いてくる気満々のリチャード。エミーにとっては荷物持ちはとても嬉しいが、宿に泊まっているお客様にそれをさせるのはどうかと思った。
 だが、そんな心配はいらなかった。
 リチャードが紳士的にエミーに振る舞う様子が、市場の売り子たちから好感を得ていた。
「私の夫なんか荷物なんか持ってくれないよ」
「そうそう。子供がお腹の中にいても知らん顔して、よく飲みに出かけていたさ」
「やっぱり都会の人は違うね」
「エミーちゃん、こんないい物件、逃しちゃだめだよ?」
 お節介おばさんもいたが、リチャードに対する好感はいい方だった。
 ただ、エミーにとってリチャードは宿に泊まりに来たお客。彼は恋愛感情丸出しだが、自分はそうではない。ただ面白い人と思うだけで恋愛感情はまだない。
 だけど、買い物に付き合ってくれるのは嬉しいし、宿に来ることを知って密かに喜んでもいた。それが恋愛感情に結びつくかというとそうでもない気がする。自分は彼の事をどう思っているんだろう? エミーはモヤモヤとする何とも言えない感情を自分でも理解できていなかった。

 市場から離れようとしたその時、
「エミーさん!」
と空から声が降ってきた。
 驚いたエミーが声の下頭上を見上げると、そこにはグリフォンに乗った一人の少女の姿があった。
「まあ、コロリスさん」
 グリフォンに乗っていたのは、ついこの間までこの村に滞在していた旅一座に所属するコロリスという名前の少女だった。今は隣の国で公演を行っているが、今日はお遣いでここまできたようだ。
 エミーとリチャードの前に降りてくると、コロリスはひらりとグリフォンから降りた。
「お久しぶりです、エミーさん」
「今日もお遣いですか?」
「はい。ヴァーグさんはどちらにいますか?」
「宿にいますよ。今から帰る所なので一緒にいきましょう」
「え? でも、デートの最中ですよね? お邪魔ではありませんか?」
「ただの買い出しですよ。リチャードさんは荷物を持って貰っているだけですので、お気遣いなく」
「そうなんですか……?」
 コロリスはリチャードの顔を見た。特に嫌な顔をせず、ニコニコとした顔をしているが、その顔の裏で何を思っているのか想像するだけで怖かった。
「そうそう、宿にはエテさんもいらっしゃっていますよ」
「え!?」
 エテ王子の名前が出た途端、コロリスの顔がほんのり赤くなった。
 と、同時に「髪、乱れていないかしら?」「もっとちゃんとした服にすればよかった」「ヴァン(グリフォン)、私、おかしくない?」と急にそわそわしだした。久しぶりに会う恋人に会えることに喜んでいるようだ。
 そんなコロリスを、エミーは自分も恋をすればこんな風になるのかな?と思いながら見ていた。
 リチャードも、「エミー嬢もこんな感じでソワソワしてくれているのかな?」と想像を膨らませていた。リチャードの想像は妄想でしかないが…。



 河原では、エテ王子によるケインの武術指導が行われていた。
 すべての武器を試してみた所、ケインの得意武器はやはり弓矢のようだ。敵に見立てた的を用意し、10mほど離れた位置から5本の矢を放つと、初めて使う武器なのに5本全てが真ん中を射ていた。
「偶然だろ?」
 エテ王子はさらに5m後ろから射るように命じると、その位置からも5本全ての矢を命中させた。
「お前、弓矢を扱ったことあるのか?」
「いえ、一度もありませんが…」
「それにしても筋がいい。武器が最高ランクだからか?」
 今、ケインが使っているのは、ヴァーグが所持していた『女神の弓矢』。エテ王子ですらお目にかかれない最高ランクの武器を使いこなせるケインは軍向きなのかもしれない。
「どう? ケインは使いこなせるようになったかしら?」
 トレイに2人分の飲み物を乗せたヴァーグが近づいてきた。
「こいつ、弓矢の才能がありますよ。初めてなのに完璧に使いこなすんですから」
「今まで触れる機会がなかったから、その才能に気付かなかったのね。これからは採取に出かける時、ケインに守ってもらおうかしら?」
 微笑むヴァーグの顔を見たケインは「ドキッ!」と心臓が一瞬高鳴った。
「ところでエテさん、この魔法玉の事なんですが、物を増やす効果を付けることはできませんよね?」
「物を増やす効果…ですか?」
「魔法玉を付加した銃は、中に銃弾を入れなくても炎や水を出すことはできますが、弓矢は矢が無くなってしまったらそれで終わりです。矢を入れておく籠に物を増やす効果がある魔法玉を付加したら、無限に矢を使うことができるんじゃないかな~って思ったんです」
「なるほど。研究する価値がありますね」
「それから、『女神のハープ』は攻撃向きではありません。どちらかと言えば、攻撃力を上げたり、体力を回復させるサポート的な役割だと思うんです。そのサポート的な武器に、攻撃型の魔法玉は付けられないと思うんです」
「確かにそうですね。こうして魔法玉を付けることができる武器が発見されたからには、過去にはサポート効果がある魔法玉があったはずです。過去に実際に使ったことがあるかどうかも調べた方がいいかもしれません。研究院に手紙を出してみます。もし可能ならこの研究をしている責任者に来てもらいましょう」
「私も出来る限り情報を集めてみます」
 ヴァーグとエテ王子の2人だけで進められていく会話に、取り残された感じになったケインは、少しだけ表情を無くした。
 知識豊富なヴァーグには、同じように知識豊富な人がお似合いなのだろうか…。
 小さい頃から一緒にいるが、ヴァーグが何のストレスもなしに話す人は大体知識が豊富だ。彼女は気づいていないようだが、話が合わなくなると一瞬だけ顔をしかめる癖がある。そのしかめた顔を見ると「ああ、彼女が持つ知識の中にある用語では通じなかったんだろうな」とケインは気づくようになった。
 自分と話すときはしかめることはないが、それもそのはずだ。ケインはヴァーグに質問しかしていない。自分で意見を言うことはほぼないのだ。
 ヴァーグの傍に居てもいいのかな…そんな後ろ向きな考えをしていたケインに、ヴァーグが声をかけてきた。
「ケイン、聞いてる?」
 ヴァーグはケインの顔を覗き込んだ。
 急に彼女の顔が間近に来たことで、ケインは思わず「うわぁ!?」と叫びながら後ずさりしてしまった。
「もう、ケイン。さっきから何度も聞いてるのに!」
「え? あ…あの……」
「エテさんが持っている魔法玉を使って、弓矢ではどんな攻撃ができるのか試してみたいの。武器によって繰り出される仕様が違うみたいだから、研究の手伝いをしてほしいの」
「あ…わかった」
「じゃ、最初は赤い玉ね」
 ヴァーグはウキウキしながらケインの持つ弓に、赤い玉を嵌め込んだ。
 特に変わった様子はないが、ケインが矢を構えた途端、赤い魔法玉が光だし、弓全体を光が覆ったと思ったら、その光は構えられた矢の先端のクリスタルに集められた。そして突然、前端のクリスタルに炎が立ち込め、矢全体が炎に包まれた。
「熱い?」
「いえ、全く熱くありません。的に射てみますね」
 10m先にある的目掛けて矢を放つと、飛び出した矢の軌道を炎の筋が駆け抜けた。
 炎の矢は的に当たると、その的を炎で包み込んでしまった。
「思っていたとおりね」
 ヴァーグは驚いていなかった。まるでそうなることを予測していたようだ。
「次は青い玉ね」
 弓から赤い玉を外すと、今度は青い玉を嵌めた。
 矢を構えると、先ほどと同じように魔法玉が青く光り、矢の先端に付いているクリスタルを青く輝かせた。
「…あれ?」
 ヴァーグの予想では矢を水が包むと思っていたが、そうではなかった。予想と違ってがっかりしていたが、矢を放った途端、ヴァーグは歓声をあげた。
 放たれた矢は、弓の弦から離れた途端、ドラゴンの顔を持ったまっすぐな水柱となり、的の3m手前までは一直線だったのが、突然上空に飛び上がり、ドラゴンが口を大きく開けて的目掛けて急降下してきたのだ。このドラゴンはヴァーグがいた世界では『中国』と呼ばれる国の壁画などに描かれる龍と呼ばれるものにそっくりだった。
「緑の玉は植物を操るはずなんだけど…」
 ヴァーグの予想は矢が植物の蔓となり、目標物を縛り付けるのではないか…だった。
 その予想通り、放たれた矢は長い蔓となり、的を締め付けた。
「ほぉ~」
 エテ王子は魔法玉の力で攻撃方法を変える矢に関心していた。
 そしてふと思った。
「これ、二つ同時に着けたらどうなるんだろう?」
 エテ王子のつぶやきに、ヴァーグとケインは同時に彼を見た。
「俺、なんか変な事言った?」
 同時に見られたエテ王子は「まずい事言った?」と2人に言い返した。
「それ、気になる! エテさん、武器についても調べた方がいいかも! 魔法玉を付けられるのは決まった素材じゃないといけないのかとか、この窪みを増やすことができないかとか、もっともっと調べた方がいいよ!」
「俺、アレックスの祖父ちゃんに話を聞いてみようかな?」
 ケインが一人の名前を口にした。アレックスとはケインの学校時代の同級生。今は鍛冶場で父親の跡を継ぐ修行をしている。
「アレックスの祖父ちゃん?」
 エテ王子にとっては初めて聞く名前だった。
「俺の学校時代の同級生なんですが、彼の祖父ちゃん、今は引退していますが、若い頃は王室御用達の武器職人だったって聞いてます」
「そんな職人がいるのか。一度会ってみたいな」
「じゃあ、明日にでも会えるか聞いてみます。あの祖父ちゃん、気まぐれで旅に出ちゃうので」
「なんだったら、今から会ってきてもいいわよ。私はエテさんと今後の事を話しているから」
「いいんですか?」
「少しでも早い方がいいと私は思うわ」
「じゃあ、行ってきます!!」
 ケインは弓矢をヴァーグに預けると、町の外れにある同級生の元へと走り去った。
 走り去るケインをヴァーグが手を振りながら見送っていると、隣にいたエテ王子は建物の二階から見下ろしている人物に気付いた。
「やっぱり見ていたか」
 エテ王子は二階の窓から見ていた人物が、マイケルだと言うことに気付いた。騎士団からマイケルの似顔絵は見せてもらっている。
 マイケルは間違いなく今迄の光景を見ているだろう。
 そして、そのマイケルを廊下の角から見ていたのはカトリーヌだった。カトリーヌはマイケルの手に魔法玉が握られているのを見た。ケインが弓矢を試し打ちしていた時、彼は手のひらに2個のガラス玉を乗せていた。太陽の光で何色かはよく見えなかったが、炎と水の魔法攻撃の時に身を乗り出して見ていた。そしてそのすぐ後に手のひらにガラス玉を乗せ、ケインの試し打ちを食い入るように眺めていた。
「兄上様とエテ様、どちらに伝えた方がいいのかしら?」
 いつもなら兄のリチャードを頼るが、その兄がこの村に来てからエミーにぞっこんで、本来の目的を忘れかけている。今まで女性との噂が一切流れず、両親も跡継ぎを気にしていた。最悪の場合、カトリーヌが婿をとるか、養子をとるか、そんな話まで持ち上がっているほどだ。
「やっぱりエテ様にお話しましょ」
 今は頼れるのがエテ王子だけだと悟ったカトリーヌは、外にいるエテ王子とヴァーグの元へと向かった。
 だが、外に出たカトリーヌは、そこで繰り広げられている光景に、がっくりと肩を落とすことになる。
 なんと、タイミングよくエミーがコロリスを連れてきたのだ。
「コロリス!!」
「お久しぶりです、エテさん。エミーさんからこちらにいらっしゃっているとお伺いしてきてしまいました」
「昨日、ヴァーグさんからコロリスがここに来ると聞いて、朝から楽しみにしていたよ」
「私もエミーさんからお伺いして、お会いできるのを楽しみにしていました。もうちょっといい服を着て来ればよかったです」
「君は何を着ても美しいよ。そうだ、今度、君に会う服を買ってあげるよ。王都に来ることがあれば遠慮なく連絡してくれ。どんな用事だろうと、君を最優先にする」
「まぁ、嬉しいお言葉です」
 お互いに声を弾ませながら会話をするエテ王子とコロリスの周りには、大量の花が咲き乱れていた。同時に誰も近づけさせないバリアでも張られているのか、ヴァーグとエミーが10m以上も離れて2人を見ていた。
 兄だけではなくエテ王子まで恋にまっしぐらな様子に、カトリーヌはどうすればいいんだろう…と悩んだ。
「カトリーヌさん、どうかなさいましたか?」
 建物の陰で蹲っていたカトリーヌに、エミーが声をかけてきた。
「い…いえ、兄と同じ幸せオーラに嫉妬を少々…」
 つい本音が漏れてしまったカトリーヌは咄嗟に口を塞いだが、時すでに遅し。エミーの後ろにいたヴァーグがいやらしい目つきでニヤニヤしながら彼女の事を見ていた。
「な…なんでもございませんの!」
「そうですか。もしご気分がすぐれないようでしたら、仰ってくださいね」
「ありがとうございます。あの、エミーさん。兄はどちらに…」
「先ほど、ケインと一緒に出掛けました。同級生の所に行くと言っていましたので、村はずれではないでしょうか?」
「きっとアレックス君の所に行ったのよ。夕飯までには戻ると思うわ。それよりカトリーヌさん、エミーがどうしてもお話してい事だあるんです。聞いてくださいますか?」
「お…お話したい事!?」
 もしかして兄と付き合いたいとか!? あの猛アタックをこの数時間で受け入れたの!?
 カトリーヌは正常に判断できなくなっていた。
 だが、エミーの口から聞こえてきた名前は意外な人物の名前だった。
「この宿で働いているマイケル君についてです」
「…へ?」
「ヴァーグさんにお話したらリチャードさんにお話した方がいいと言われたのですが、リチャードさん、真剣に聞いてくれなくて…」
 まあ、あの浮かれようだと何を話しても、自分のいいように解釈してしまうだろうな…カトリーヌはこの村に来てからの兄の行動を冷静に分析していた。兄がおかしくなるのはエミーの前だけ。そのエミーから話があると言っても。きっと舞い上がって魂ここのあらずになるだろう。
「わたくしでよろしければお聞きしますわ。わたくしもお話したい事がございますの」
「では、夕飯後にお時間を頂けますか? わたし、これから仕事がありますので」
「ええ」
「ありがとうございます。では仕事に戻りますね」
 小さく頭を下げたエミーは、従業員の表情に戻り職場へと戻っていった。


 夕飯は裏庭で流しそうめん大会が行われた。
 コロリスも、一度仲間の元に戻り、明日の夕方まで休みを貰ってきた。隣国まではグリフォンに乗っていけばあっという間だが、国境での手続きがかなり面倒で、通行証は一度しか使えない。国境を超えるたびに通行証を発行しなくてはいけないのだが、エテ王子から、
「このペンダントを見せれば、手続きはいらないよ」
と教えられ、エテ王子から貰ったペンダントを試しに役人に見せてみた。
 すると、
「これはご無礼いたしました! どうぞお通りください!」
と、国境を警備するすべての兵士が頭を下げてきた。
 もちろん、隣国を出る時に同じようにペンダントを見せると、全く同じようにすべての兵士が頭を下げ、隊長らしき人まで最敬礼で見送ってくれた。
 一体どうなっているんだろう? 不思議に思ったコロリスがエテに訊ねても「気にしない、気にしない!」と詳しくは話してくれなかった。
 コロリスがエテ王子から貰ったペンダントには、この国の王家の紋章が刻まれている。王家の紋章が刻まれたアクセサリーは王族関係者しか持つことが出来ず、偽造は国家反逆罪となる。一般人が持つことも禁じられていることもあり、アクセサリーを持つ者は王族関係者だとすぐにわかる。
 コロリスは色々な所を旅しているため、その国の紋章に詳しくない。エテ王子の事もただの王都に住む青年だと思っている。エテ王子もいつかは話さなくてはいけない事だと思っていても、本当の身分を知ってしまえば彼女が距離を置くことが目に見えている。
 このまま、王子の位を降りるまで黙っている事を決めたエテ王子だったが、それが後に大きな騒動に巻き込まれていくことになる。


                   <つづく>

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