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第20話 再び…
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芸術祭の三日前、ヴァーグたちは王都へ設営に出かけた。
今回中央広場に出店するのはたった一団体。
広場に運び込まれたテーブルや椅子は、家具職人が作り上げた。一つとして同じデザインがなく、どの席に座るのかお客が選べる仕組みになっていた。
その家具職人たちも広場の一角に店を構え、家具や小物などの販売する準備を始めた。
家具職人の反対側ではケインの同級生であるデイシーとナンシーが、貸衣装屋を開いた。ナンシーの両親が娘が中央広場で出店することを聞きつけて、お店の宣伝を兼ねて衣装を提供してくれたのだ。ここでは用意された衣装を着て記念撮影ができる。
ヴァーグがこの日の為にポラロイドカメラを買ってくれた。写真というものが存在しないこの世界では、カメラで撮影した写真は画期的な物で、絵画と同じで飾ることができると言う利点をいかして、「思い出」を提供するデイジーのやりたいことへの第一歩を踏むことが出来た。
そして、村の神父に話を聞いたところ、結婚式は必ずも教会で挙げなくてはならないというものではなかった。なので、ナンシーの親が提供した衣装の中に結婚式で使う衣装もあり、式を挙げられなかった人が衣装を着て写真に残すことも可能になった。
「フォトウエディングだね」
ヴァーグは自分がいた世界で流行っていた結婚式の一つを口にした。
結婚式にも色々ある事を知ったデイジーは、ウエディングプランナーへの道も歩み始めていた。
そのデイジーたちの店の隣にはビリーの親が経営する花屋が出店した。
ビリーは花束やブーケを作る才能に恵まれており、デイジーとナンシーが提供する記念フォトに小道具の一つとしてブーケ作りをすることになった。もちろん、花屋として販売もしている。
ゲンの弟子の中にはアクセサリー作りを得意とする職人もいた。食器やガラス細工を得意とする職人もおり、彼らは空いたスペースで販売の準備をしている。
そして王宮を背に一番大きな屋台をだしたのはヴァーグの店だった。
たこ焼き、たい焼き、サンドイッチ、飲み物、足湯にソフトクリーム、そしてケーキやクッキー、ゼリー…色々な食べ物・飲み物が並ぶ中、屋台の隣には大きな大きなテントが張られた。
「ヴァーグさん、ここは何をするんですか?」
大きなテントの前でケインがヴァーグに聞いてきた。
「そこは臨時保育所よ。小さなお子様を一時的に預かろうと思ってるの」
「保育所…って、誰が子供たちを見るんですか?」
「それは当日までのお楽しみ。それから、焼き菓子コーナーに助っ人が一人入ることになったから、覚えておいてね」
つい先日、エテ王子からの手紙に、自分たちも協力したいと申し出があった。特に助けてもらうことはないが、エミーから芸術祭の日は迷子が多発し、小さな子供を持つ親たちはゆっくりと見て回る事が出来ないと聞いた。そこで臨時の預り所を作ることになり、手伝いを申し出たエテ王子とコロリスに頼むことにしたのだ。当日はオルシアたちドラゴン親子と、コロリスのグリフォンも手伝ってくれることになった。
そしてもう1人。王宮の厨房でお菓子作りに精を出していたのがクリスティーヌ王女。彼女も手伝いたいと申し出があった。まだ作れる料理は少ないが、間近で勉強したいと言う熱心な申し出に、ヴァーグが快く引き受けたのだ。
さて、ここまで来て疑問に思う読者もいる事だろう。
王都と村はかなり離れている。その長い道のりをヴァーグたちは大量の荷物と共にどうやってきたのか…。
それはヴァーグが愛用しているアイテムボックスを、女神に出世払いでお願いしますと頼み込んだヴァーグが村人に分け与えたのである。大量の荷物を無限に入る事ができるアイテムボックスに詰め込み、カバン1つで村人たちはオルシア、シエル、アクアに乗って王都にやってきたのだ。
今日は設営の為、代表者が数名来ているだけで、当日にはもっと沢山の人たちがやってくる。後から来る人たちは陸路で来るため、今頃村を出発したころだろう。
お昼になると、広場に教会の鐘の音が聞こえてきた。
それを合図にヴァーグは広場にいる人たちの為にお昼ご飯を作り始めた。
エルザとローズに何種類かのサンドイッチを作ってもらい、メアリーに人数分の飲み物を用意してもらった。
そしてヴァーグはケインと共にデザートに取り掛かった。
ヴァーグが用意したのは小麦粉と卵、バター、生地が膨らむ魔法の粉、ミルクと、ケーキの土台を作るのと同じ材料だった。それらを混ぜ、ボウルの中に出来たのはパンと同じ柔らかい塊。その塊を小麦粉を振るった台の上に乗せ、麺棒で薄く伸ばした。そして二重の円形の銀色の道具を取り出すと、伸ばした生地の上にあて、上から軽く力を入れて押した。生地は真ん中が空いた円の形に切り取られ、台の上に並べられた。
次にヴァーグが用意したのは、深さのあるフライパン。それをコンロの上に置き、フライパンに大量の油を注ぎこんだ。そして火をつけ、油の温度が上がるのを、生地を作りながら待った。
今度は何を作っているんだ?と興味津々の顔をしながら、ラインハルトも近くにやってきた。
「ヴァーグさん、何を作っているんですか?」
真ん中が空いた円の形に切り抜いていたヴァーグにラインハルトが訊ねてきた。
「ドーナツを作ろうと思っているの。本番でも売るつもりよ」
「ドーナツ?」
「油で揚げたお菓子」
お菓子と言えば、クッキーにしてもケーキにしてもオーブンで焼く。ゼリーなども冷蔵庫で冷やして作る。この世に油で揚げるお菓子があるのか!?とラインハルトは、ただただヴァーグの手元に釘付けになっていた。
そうこうしているうちに、油の温度が上がり、ヴァーグは円形に切り抜いた生地を油の中に投入した。
しばらくしてひっくり返すと、生地がきつね色に色づき、生地がふっくらしているように見える。
さらにしばらくしてひっくり返すと、裏側もきつね色になっていた。
ふっくらと上がった生地を油切りのバッドに移すと、粉砂糖を軽くまぶした。
「はい、食べていいよ」
たい焼きを包む紙でドーナツを包むと、ヴァーグはラインハルトの前に差し出した。
「熱いから気をつけろよ」
ヴァーグの隣で生地を作っていたケインが忠告してきた。どうやらケインはすでに食べたことがあるらしい。
まだ温かいドーナツを受け取ったラインハルトは、一口齧った。
ケインが言う様に熱かったが、それでも口に入れた瞬間に広がる甘い香り、サクサクとした食感、なのに中はもっちりしており、パンともケーキとも違う感触に驚くしかなかった。
「パンやケーキと同じ材料なのに、全く違う食べ物だ」
「今はお砂糖を掛けたけど、チョコとかカスタードクリームと合わせて食べても美味しいよ。生地にチョコを練り込むこともできるけど、今回はそんな余裕がないから味は一種類のみなんだけどね」
「本番も売るって、そんな余裕あるんですか?」
「大丈夫大丈夫。お客様にはトレイを持ってもらって、自分が欲しい物を自分で取ってもらう方法にするから。前を見て」
ヴァーグはラインハルトに、店先を見てもらう様に促した。
店先にはいくつかの大きな銀バッドが並べられており、それぞれのバッドに商品名が書かれたプレートが張ってあった。ショートケーキ、レアチーズケーキ、チョコレートケーキ、イチゴジャムのタルト、ブルーベリージャムのタルト、そしてドーナツの六種類を販売するようだ。
「お客様には右側でトレイとトングを受け取ってもらって、それぞれ自分の欲しい物をトレイに乗せてもらうの。で、商品に沿って左側に移動して貰って、ここでお会計して箱詰めするの。これだったら、いちいち注文を受けなくても、料理人は作ることだけに専念できるでしょ? ケーキはすべて一口サイズにしてあるし、タルトも小さいタルト生地を使うし、大量ストックしておけば大丈夫」
ヴァーグにとっては見慣れた光景。前の世界のパン屋やドーナツ屋は自分で取るスタイルが多かった。これなら会計係が一人いるだけで、後は調理に専念できる。
しかも会計場所の隣は飲み物を売るエリア。同時に飲み物を購入することもできる。また、飲み物を売るエリアを挟んで反対側はサンドイッチを売るエリア。女性陣でお互いにフォローしあえる仕組みになっている。
「ヴァーグさんって、いろんなアイデアを持っているんですね。どれもお客様も接客する側もスムーズに動ける」
「過去の経験が活かされているだけかな? 私が楽をしたいっていうのが前提なんだけどね」
「経験…」
「一人で無理な事は周りを使わなくちゃ。ラインハルト君のたこ焼きも、大量のストックが出来るように、大型の保温ケースを持ってきたから有効活用してね」
ラインハルトはヴァーグの先を見据える力に感心するばかりだ。
目の前の事を最優先にする自分とは全く違うやり方に、こういう人が経営者として成功しているのか…と、王都で働いていた頃のカフェとの違いの多さに驚くばかりだ。最も王都にいた頃はマイケルに振り回されていただけだったが。
「そういえば、あいつ、どうしているんだろう?」
ラインハルトは王都で同じカフェで働き、その後自分の店を持った親友の事を思い出した。
王都を離れたから親友の話は一度も聞かない。今も店を続けているのか、それすらわからない。
3日後の芸術祭は王都で行われるお祭りで、新年を祝う祭りに次ぐ賑わいを見せる。その為、いつも以上に商売に張り切る販売店が多く、どの店も準備に精を出す。
そんな中、中央広場から通りを一本中に入ったところにあるカフェは、店内に明かりが点いておらず、入り口のドアには閉店を知らせる張り紙が張ってあった。
「あら? お店、やっていないわ」
「本当だ。新年祭の時は営業していたのに」
男女の声が聞こえてきた。新年を祝う祭りの時に来店したのだろう。そんな会話をしている。
やっていないのなら他に行こうと、男女は店の前を去った。
その男女を物陰から見ていた人物がいた。その人物は、男女が去っていくと、入れ違いに店の前に立った。そして一本のカギを懐から出すと、何の迷いもなく店のカギを開けた。
店の中は、だいぶ前に店を閉めたのだろう。テーブルや椅子は埃をかぶっており、窓に掛かっているカーテンは色あせていた。
床も埃で白くなっており、歩くと靴の足跡が着く。
店に入った人物は、厨房へと歩みを続けた。
一歩一歩歩く人物の脳裏に、かつてこの店が賑わっていた頃の記憶が蘇る。開店から閉店まで客が絶えなかった日々。提供する料理に舌鼓を打つ客の笑顔。子供たちの笑い声。同じ店で働く従業員たちの顔…。
もう2度と戻れない輝かしい過去が、つい数か月前の事なのに、遠い過去に思える。
厨房に辿り着いた人物ージャンに、厨房の作業台に置かれた1枚の色あせた紙が目に入った。
王家の紋章が描かれたその紙は、この店の営業停止を告げる物。日付は新年を祝う祭りが開催された10日後だった。
「王族って、そんなに偉いのかよ」
ジャンは色あせた紙を握りつぶした。
数か月前の新年を祝う祭りの日、この店には大勢の客が来店していた。中央広場で珍しい食べ物を売っている噂が流れ、客足は落ちるかと予測していたが、珍しいが故に行列が長く、お目当ての物を買うまで時間が掛かるとの情報を得た常連客が、この店へ温まりに来たのだ。
いつもと同じ客に、いつもと変わらない店内。新しい年もきっといい年になる。
そう思いたかったが、訪れた一組の客によって運命が変わった。
中央広場で癇癪を起こし、王宮に帰ろうとした第一王女が、歩き疲れた、喉が渇いた、どこかで休みたいと駄々をこねた。その要望に応えようと取り巻き達が休める場所を探し回り、このカフェを見つけた。
取り巻き達はすぐに貸し切りにしろ。今いる客は全員追い出せとののしり、店長を務めていたジャンは困り果てた。
すぐに客を追い出さなかったことに腹を立てた第一王女マリーベル王女が、王族を侮辱したと大声をあげ、その場で業務停止命令を下したのだ。マリーベル王女の我儘で傲慢な性格は王都の住人全員が知っている。気分屋だから明日になれば、すっかり忘れているだろうと、その場は笑って過ごした。
ところが翌日、王宮から緊急の呼び出しを受け、国王から事情聴取を受けた。マリーベル王女からない事ばかりが証言に上がり、王女は暴力を振るったと嘘をついた。真実を話すにも王女に逆らえない大臣たちが、王室を侮辱した罪、並びに王女に暴力を振るった罪として、ジャンの財産没収と店の教務停止命令が言い渡された。
正式に業務停止命令が言い渡されたのは、騒動から10日後の事だった。
店を閉店させた後、ジャンは知り合いの女性が匿ってくれた。その女性は常連でいつも一人で来ていた。ジャンとはたわいもない話で盛り上がり、いつの間にか仲良くなっていた。だが、女性には婚約者がおり、半年後に結婚することが決まっていたが、親が勝手に決めた結婚らしい。店に営業停止命令が言い渡されると、女性は一緒に逃げましょうと王都を出た。
それからは女性と静かに暮らしていたが、どうしても納得のいかない王族のやり方に恨みが消えなかった。
何度か王都に戻ろうとしたが、カフェの店長として顔が広いジャンは、何時知り合いに見つかるのか怖くて、なかなか戻る決心がつかなかった。
今回、戻ってきたのは芸術祭の騒ぎに紛れ込めば、王都に行くことができ、王宮には入れないが、離宮なら誰でも入ることができる。その離宮と王宮は繋がっていると聞く。どこかに入り込める場所があるかもしれないと思い、王族への憎しみを晴らすために戻ってきた。
「そうですか。あなたも憎い相手がいるのですね」
いつの間にかホールだった場所に、1人の人物が立っていた。
「誰だ!?」
「その恨み、晴らすお手伝いをしてさしあげましょうか?」
「なんだと…?」
「これを使いなさい。きっとあなたの恨みを晴らしてくれますよ」
その人物は、ジャンの前に黒い鞘に収まった黒い柄の短剣を差し出した。
黒い柄には黒いドラゴンの絵が刻まれており、目の部分には赤い宝石が嵌め込まれていた。
「……」
「その短剣があなたを導いてくれるはずです。あなたの恨みの許へ」
「恨みの…許……」
短剣を差し出した人物は、ジャンが短剣を手にすると、彼の背中を軽く押した。
その弾みでジャンは一歩踏み出した。そして一歩、一歩と歩みを進めた。
向かうは恨みの許…。
店を出るジャンの背中を見送った人物は、ニヤリと口角をあげた。
「人を恨む心こそ、偉大なる魔力を呼ぶ」
クックックと不気味な含み笑いをするその人物は、パチンと指を鳴らした。
するとその人物の傍らに、ひざまつく黒ずくめの人物が現れた。
「後を追え」
「はっ!」
ひざまついていた人物は、すぐに店を出ていった。
「なんか嫌な予感がする」
何かが起きそうで、胸騒ぎがする。
ジャンに短剣を渡した人物は、彼の後を追った人物が無事に戻ってくることを祈った。
店を出たジャンは、中央広場の横を通り、王宮の方へと向かった。
そのジャンを見かけたのはラインハルトだった。
「…ジャン…?」
懐かしい人物に、ラインハルトはすぐに後を追った。
だが、広場を出た所で、ジャンの姿を見失ってしまった。
「あいつ、どこに行ったんだ?」
辺りを見回したが、ジャンの姿は見当たらなかった。
「ラインハルト! サボるな!」
広場から大声で呼び戻すケインの声に、ラインハルトは渋々持ち場に戻った。
この時、ラインハルトは気づいていなかった。王宮の上空に黒い雲が集まりだしたことに…。
芸術祭まであと三日。
まだヴァーグのパソコンに反応はない。
何か大きな騒動が起きそうだ。
<つづく>
今回中央広場に出店するのはたった一団体。
広場に運び込まれたテーブルや椅子は、家具職人が作り上げた。一つとして同じデザインがなく、どの席に座るのかお客が選べる仕組みになっていた。
その家具職人たちも広場の一角に店を構え、家具や小物などの販売する準備を始めた。
家具職人の反対側ではケインの同級生であるデイシーとナンシーが、貸衣装屋を開いた。ナンシーの両親が娘が中央広場で出店することを聞きつけて、お店の宣伝を兼ねて衣装を提供してくれたのだ。ここでは用意された衣装を着て記念撮影ができる。
ヴァーグがこの日の為にポラロイドカメラを買ってくれた。写真というものが存在しないこの世界では、カメラで撮影した写真は画期的な物で、絵画と同じで飾ることができると言う利点をいかして、「思い出」を提供するデイジーのやりたいことへの第一歩を踏むことが出来た。
そして、村の神父に話を聞いたところ、結婚式は必ずも教会で挙げなくてはならないというものではなかった。なので、ナンシーの親が提供した衣装の中に結婚式で使う衣装もあり、式を挙げられなかった人が衣装を着て写真に残すことも可能になった。
「フォトウエディングだね」
ヴァーグは自分がいた世界で流行っていた結婚式の一つを口にした。
結婚式にも色々ある事を知ったデイジーは、ウエディングプランナーへの道も歩み始めていた。
そのデイジーたちの店の隣にはビリーの親が経営する花屋が出店した。
ビリーは花束やブーケを作る才能に恵まれており、デイジーとナンシーが提供する記念フォトに小道具の一つとしてブーケ作りをすることになった。もちろん、花屋として販売もしている。
ゲンの弟子の中にはアクセサリー作りを得意とする職人もいた。食器やガラス細工を得意とする職人もおり、彼らは空いたスペースで販売の準備をしている。
そして王宮を背に一番大きな屋台をだしたのはヴァーグの店だった。
たこ焼き、たい焼き、サンドイッチ、飲み物、足湯にソフトクリーム、そしてケーキやクッキー、ゼリー…色々な食べ物・飲み物が並ぶ中、屋台の隣には大きな大きなテントが張られた。
「ヴァーグさん、ここは何をするんですか?」
大きなテントの前でケインがヴァーグに聞いてきた。
「そこは臨時保育所よ。小さなお子様を一時的に預かろうと思ってるの」
「保育所…って、誰が子供たちを見るんですか?」
「それは当日までのお楽しみ。それから、焼き菓子コーナーに助っ人が一人入ることになったから、覚えておいてね」
つい先日、エテ王子からの手紙に、自分たちも協力したいと申し出があった。特に助けてもらうことはないが、エミーから芸術祭の日は迷子が多発し、小さな子供を持つ親たちはゆっくりと見て回る事が出来ないと聞いた。そこで臨時の預り所を作ることになり、手伝いを申し出たエテ王子とコロリスに頼むことにしたのだ。当日はオルシアたちドラゴン親子と、コロリスのグリフォンも手伝ってくれることになった。
そしてもう1人。王宮の厨房でお菓子作りに精を出していたのがクリスティーヌ王女。彼女も手伝いたいと申し出があった。まだ作れる料理は少ないが、間近で勉強したいと言う熱心な申し出に、ヴァーグが快く引き受けたのだ。
さて、ここまで来て疑問に思う読者もいる事だろう。
王都と村はかなり離れている。その長い道のりをヴァーグたちは大量の荷物と共にどうやってきたのか…。
それはヴァーグが愛用しているアイテムボックスを、女神に出世払いでお願いしますと頼み込んだヴァーグが村人に分け与えたのである。大量の荷物を無限に入る事ができるアイテムボックスに詰め込み、カバン1つで村人たちはオルシア、シエル、アクアに乗って王都にやってきたのだ。
今日は設営の為、代表者が数名来ているだけで、当日にはもっと沢山の人たちがやってくる。後から来る人たちは陸路で来るため、今頃村を出発したころだろう。
お昼になると、広場に教会の鐘の音が聞こえてきた。
それを合図にヴァーグは広場にいる人たちの為にお昼ご飯を作り始めた。
エルザとローズに何種類かのサンドイッチを作ってもらい、メアリーに人数分の飲み物を用意してもらった。
そしてヴァーグはケインと共にデザートに取り掛かった。
ヴァーグが用意したのは小麦粉と卵、バター、生地が膨らむ魔法の粉、ミルクと、ケーキの土台を作るのと同じ材料だった。それらを混ぜ、ボウルの中に出来たのはパンと同じ柔らかい塊。その塊を小麦粉を振るった台の上に乗せ、麺棒で薄く伸ばした。そして二重の円形の銀色の道具を取り出すと、伸ばした生地の上にあて、上から軽く力を入れて押した。生地は真ん中が空いた円の形に切り取られ、台の上に並べられた。
次にヴァーグが用意したのは、深さのあるフライパン。それをコンロの上に置き、フライパンに大量の油を注ぎこんだ。そして火をつけ、油の温度が上がるのを、生地を作りながら待った。
今度は何を作っているんだ?と興味津々の顔をしながら、ラインハルトも近くにやってきた。
「ヴァーグさん、何を作っているんですか?」
真ん中が空いた円の形に切り抜いていたヴァーグにラインハルトが訊ねてきた。
「ドーナツを作ろうと思っているの。本番でも売るつもりよ」
「ドーナツ?」
「油で揚げたお菓子」
お菓子と言えば、クッキーにしてもケーキにしてもオーブンで焼く。ゼリーなども冷蔵庫で冷やして作る。この世に油で揚げるお菓子があるのか!?とラインハルトは、ただただヴァーグの手元に釘付けになっていた。
そうこうしているうちに、油の温度が上がり、ヴァーグは円形に切り抜いた生地を油の中に投入した。
しばらくしてひっくり返すと、生地がきつね色に色づき、生地がふっくらしているように見える。
さらにしばらくしてひっくり返すと、裏側もきつね色になっていた。
ふっくらと上がった生地を油切りのバッドに移すと、粉砂糖を軽くまぶした。
「はい、食べていいよ」
たい焼きを包む紙でドーナツを包むと、ヴァーグはラインハルトの前に差し出した。
「熱いから気をつけろよ」
ヴァーグの隣で生地を作っていたケインが忠告してきた。どうやらケインはすでに食べたことがあるらしい。
まだ温かいドーナツを受け取ったラインハルトは、一口齧った。
ケインが言う様に熱かったが、それでも口に入れた瞬間に広がる甘い香り、サクサクとした食感、なのに中はもっちりしており、パンともケーキとも違う感触に驚くしかなかった。
「パンやケーキと同じ材料なのに、全く違う食べ物だ」
「今はお砂糖を掛けたけど、チョコとかカスタードクリームと合わせて食べても美味しいよ。生地にチョコを練り込むこともできるけど、今回はそんな余裕がないから味は一種類のみなんだけどね」
「本番も売るって、そんな余裕あるんですか?」
「大丈夫大丈夫。お客様にはトレイを持ってもらって、自分が欲しい物を自分で取ってもらう方法にするから。前を見て」
ヴァーグはラインハルトに、店先を見てもらう様に促した。
店先にはいくつかの大きな銀バッドが並べられており、それぞれのバッドに商品名が書かれたプレートが張ってあった。ショートケーキ、レアチーズケーキ、チョコレートケーキ、イチゴジャムのタルト、ブルーベリージャムのタルト、そしてドーナツの六種類を販売するようだ。
「お客様には右側でトレイとトングを受け取ってもらって、それぞれ自分の欲しい物をトレイに乗せてもらうの。で、商品に沿って左側に移動して貰って、ここでお会計して箱詰めするの。これだったら、いちいち注文を受けなくても、料理人は作ることだけに専念できるでしょ? ケーキはすべて一口サイズにしてあるし、タルトも小さいタルト生地を使うし、大量ストックしておけば大丈夫」
ヴァーグにとっては見慣れた光景。前の世界のパン屋やドーナツ屋は自分で取るスタイルが多かった。これなら会計係が一人いるだけで、後は調理に専念できる。
しかも会計場所の隣は飲み物を売るエリア。同時に飲み物を購入することもできる。また、飲み物を売るエリアを挟んで反対側はサンドイッチを売るエリア。女性陣でお互いにフォローしあえる仕組みになっている。
「ヴァーグさんって、いろんなアイデアを持っているんですね。どれもお客様も接客する側もスムーズに動ける」
「過去の経験が活かされているだけかな? 私が楽をしたいっていうのが前提なんだけどね」
「経験…」
「一人で無理な事は周りを使わなくちゃ。ラインハルト君のたこ焼きも、大量のストックが出来るように、大型の保温ケースを持ってきたから有効活用してね」
ラインハルトはヴァーグの先を見据える力に感心するばかりだ。
目の前の事を最優先にする自分とは全く違うやり方に、こういう人が経営者として成功しているのか…と、王都で働いていた頃のカフェとの違いの多さに驚くばかりだ。最も王都にいた頃はマイケルに振り回されていただけだったが。
「そういえば、あいつ、どうしているんだろう?」
ラインハルトは王都で同じカフェで働き、その後自分の店を持った親友の事を思い出した。
王都を離れたから親友の話は一度も聞かない。今も店を続けているのか、それすらわからない。
3日後の芸術祭は王都で行われるお祭りで、新年を祝う祭りに次ぐ賑わいを見せる。その為、いつも以上に商売に張り切る販売店が多く、どの店も準備に精を出す。
そんな中、中央広場から通りを一本中に入ったところにあるカフェは、店内に明かりが点いておらず、入り口のドアには閉店を知らせる張り紙が張ってあった。
「あら? お店、やっていないわ」
「本当だ。新年祭の時は営業していたのに」
男女の声が聞こえてきた。新年を祝う祭りの時に来店したのだろう。そんな会話をしている。
やっていないのなら他に行こうと、男女は店の前を去った。
その男女を物陰から見ていた人物がいた。その人物は、男女が去っていくと、入れ違いに店の前に立った。そして一本のカギを懐から出すと、何の迷いもなく店のカギを開けた。
店の中は、だいぶ前に店を閉めたのだろう。テーブルや椅子は埃をかぶっており、窓に掛かっているカーテンは色あせていた。
床も埃で白くなっており、歩くと靴の足跡が着く。
店に入った人物は、厨房へと歩みを続けた。
一歩一歩歩く人物の脳裏に、かつてこの店が賑わっていた頃の記憶が蘇る。開店から閉店まで客が絶えなかった日々。提供する料理に舌鼓を打つ客の笑顔。子供たちの笑い声。同じ店で働く従業員たちの顔…。
もう2度と戻れない輝かしい過去が、つい数か月前の事なのに、遠い過去に思える。
厨房に辿り着いた人物ージャンに、厨房の作業台に置かれた1枚の色あせた紙が目に入った。
王家の紋章が描かれたその紙は、この店の営業停止を告げる物。日付は新年を祝う祭りが開催された10日後だった。
「王族って、そんなに偉いのかよ」
ジャンは色あせた紙を握りつぶした。
数か月前の新年を祝う祭りの日、この店には大勢の客が来店していた。中央広場で珍しい食べ物を売っている噂が流れ、客足は落ちるかと予測していたが、珍しいが故に行列が長く、お目当ての物を買うまで時間が掛かるとの情報を得た常連客が、この店へ温まりに来たのだ。
いつもと同じ客に、いつもと変わらない店内。新しい年もきっといい年になる。
そう思いたかったが、訪れた一組の客によって運命が変わった。
中央広場で癇癪を起こし、王宮に帰ろうとした第一王女が、歩き疲れた、喉が渇いた、どこかで休みたいと駄々をこねた。その要望に応えようと取り巻き達が休める場所を探し回り、このカフェを見つけた。
取り巻き達はすぐに貸し切りにしろ。今いる客は全員追い出せとののしり、店長を務めていたジャンは困り果てた。
すぐに客を追い出さなかったことに腹を立てた第一王女マリーベル王女が、王族を侮辱したと大声をあげ、その場で業務停止命令を下したのだ。マリーベル王女の我儘で傲慢な性格は王都の住人全員が知っている。気分屋だから明日になれば、すっかり忘れているだろうと、その場は笑って過ごした。
ところが翌日、王宮から緊急の呼び出しを受け、国王から事情聴取を受けた。マリーベル王女からない事ばかりが証言に上がり、王女は暴力を振るったと嘘をついた。真実を話すにも王女に逆らえない大臣たちが、王室を侮辱した罪、並びに王女に暴力を振るった罪として、ジャンの財産没収と店の教務停止命令が言い渡された。
正式に業務停止命令が言い渡されたのは、騒動から10日後の事だった。
店を閉店させた後、ジャンは知り合いの女性が匿ってくれた。その女性は常連でいつも一人で来ていた。ジャンとはたわいもない話で盛り上がり、いつの間にか仲良くなっていた。だが、女性には婚約者がおり、半年後に結婚することが決まっていたが、親が勝手に決めた結婚らしい。店に営業停止命令が言い渡されると、女性は一緒に逃げましょうと王都を出た。
それからは女性と静かに暮らしていたが、どうしても納得のいかない王族のやり方に恨みが消えなかった。
何度か王都に戻ろうとしたが、カフェの店長として顔が広いジャンは、何時知り合いに見つかるのか怖くて、なかなか戻る決心がつかなかった。
今回、戻ってきたのは芸術祭の騒ぎに紛れ込めば、王都に行くことができ、王宮には入れないが、離宮なら誰でも入ることができる。その離宮と王宮は繋がっていると聞く。どこかに入り込める場所があるかもしれないと思い、王族への憎しみを晴らすために戻ってきた。
「そうですか。あなたも憎い相手がいるのですね」
いつの間にかホールだった場所に、1人の人物が立っていた。
「誰だ!?」
「その恨み、晴らすお手伝いをしてさしあげましょうか?」
「なんだと…?」
「これを使いなさい。きっとあなたの恨みを晴らしてくれますよ」
その人物は、ジャンの前に黒い鞘に収まった黒い柄の短剣を差し出した。
黒い柄には黒いドラゴンの絵が刻まれており、目の部分には赤い宝石が嵌め込まれていた。
「……」
「その短剣があなたを導いてくれるはずです。あなたの恨みの許へ」
「恨みの…許……」
短剣を差し出した人物は、ジャンが短剣を手にすると、彼の背中を軽く押した。
その弾みでジャンは一歩踏み出した。そして一歩、一歩と歩みを進めた。
向かうは恨みの許…。
店を出るジャンの背中を見送った人物は、ニヤリと口角をあげた。
「人を恨む心こそ、偉大なる魔力を呼ぶ」
クックックと不気味な含み笑いをするその人物は、パチンと指を鳴らした。
するとその人物の傍らに、ひざまつく黒ずくめの人物が現れた。
「後を追え」
「はっ!」
ひざまついていた人物は、すぐに店を出ていった。
「なんか嫌な予感がする」
何かが起きそうで、胸騒ぎがする。
ジャンに短剣を渡した人物は、彼の後を追った人物が無事に戻ってくることを祈った。
店を出たジャンは、中央広場の横を通り、王宮の方へと向かった。
そのジャンを見かけたのはラインハルトだった。
「…ジャン…?」
懐かしい人物に、ラインハルトはすぐに後を追った。
だが、広場を出た所で、ジャンの姿を見失ってしまった。
「あいつ、どこに行ったんだ?」
辺りを見回したが、ジャンの姿は見当たらなかった。
「ラインハルト! サボるな!」
広場から大声で呼び戻すケインの声に、ラインハルトは渋々持ち場に戻った。
この時、ラインハルトは気づいていなかった。王宮の上空に黒い雲が集まりだしたことに…。
芸術祭まであと三日。
まだヴァーグのパソコンに反応はない。
何か大きな騒動が起きそうだ。
<つづく>
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