君も転生者なのか!? ~だったら2人でハッピーエンドに作り替えませんか?~

EAU

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第3話

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 妃候補との顔合わせ以降、週に一回の食事会を行い、それぞれの令嬢と2人きりでお茶をする時間を作ったり、乗馬や音楽などを楽しみながら過ごした。
 どの令嬢とも楽しい時間を過ごしているが、シンディ嬢とはダイエットの話、マーガレット嬢とは彼女の領地で栽培されている果物の話で大いに盛り上がっている。
 アイリーン嬢はこちらから声を掛ければ付き合ってくれるが、とうやらレオと一緒にいる時間の方が多いようだ。まあ、王子の妃候補だから、レオといい仲になっても何の支障もない。それにレオの今の恋人と距離を作ってくれる方が俺も助かる。
 ロザライン嬢は俺やレオよりも、王宮から支給される装飾品に興味があるようで、お茶の席に誘うよりも、王宮お抱えの宝石商を呼んだ買い物に誘う方が返事が早い。彼女の父親からは王室の財政を圧迫するようなことはするな!と釘を刺されているが、子爵殿、安心したまえ。彼女の買い物の請求は全部子爵宛にしているから。半年後、子爵がどんな悲鳴を上げるのか楽しみだ。

 そう、今、王宮で暮らしている妃候補たちが使うお金は、王宮がいったん支払い、半年後に各家に請求することになっている。
 これは俺が提案した。
 いくら妃候補と言っても、あくまでも【候補】。王族との関わりはないに等しい。そんな彼女たちの費用を国の税金から出すと、浪費癖が付き、王室の財政が圧迫されるのが目に見えている。ただでさえ、親父や兄王子の母親が凄いのに、これ以上国民の税金を無駄にできるか!
 カイルが処刑される罪名の一つに「国民の税金の無駄遣い」というものがあった。本当は親父や兄王子の母親の無駄遣いなのに、全部俺に押し付けられた。そのせいで国民からは信頼を失い、国を挙げての第2王子処刑の声が広まったのだ。
 だったら、妃候補の令嬢が王宮内で使った金は、各家に請求すればいいじゃんって、大臣たちに提案したら、自分が使う金が減る事を懸念していた親父が「それでいこう!」と即答した。
 まあ、親父の無駄遣いは本当に無駄遣いなんだよね。女性の世話係を側に置くと必ず手を付けるから、親父の周りには男だけにしたんだけど、その男どもにも手を出し始めた親父に、大臣たちは「国王好みの男を側に置くからだ!」と叫び、今は容姿がよろしくない男たちを世話係として置いている。だけど親父は王室の財政を使って、その容姿のよろしくない男たちを整形させているんだとか。マジで無駄遣い!
 この国にも整形技術なんかあったことに、俺は驚いているけど。


 兄王子のサリュージは妃候補令嬢に全く興味ないようだ。いつも自分たちの恋人を侍らせている。
「次期国王の地位にいるお方が、日替わりで女性を側に置くのはどうかと…」
 大臣や側近たちがそう兄に注意すると、
「結婚相手はちゃんと決めるよ。でも結婚したらその人しか側に置けないだろ? 独身の間に色々な女性と付き合い、そのご両親と強い絆を築くのも、王子としての役目だ」
とか言ったんだってさ。
 強い絆って、身分のない下町の娘と仲良くなるのも関係あるのかい?
 あ~……なんか、兄王子、結婚相手を見つける前に変な病気に罹りそう。最近、城下町の不衛生な娼館にも足を運びだしたって聞いているんだよね~。


 弟王子のレオは、アイリーン嬢と仲がいいようだから問題はない。
 ただ、アイリーン嬢と一緒にいると、今の恋人が怒鳴りながら間を割く様な事が多くなり、アイリーン嬢はご立腹の様子。レオの恋人は「外国の伯爵令嬢」という身分らしい。
「例え外国の伯爵令嬢だとしても、この国の王族と親しい侯爵令嬢に対して失礼ではありませんか?」
と、アイリーン嬢が言い返したとか噂で聞いた。これは早めに教えた方がいいのかな? レオの恋人は敵対する隣国の王女だよ~んって。



 そして、俺の頭を悩ます一番の原因はファンティーヌ・オルベリザス伯爵令嬢。
 顔合わせの時以来、俺は一度もその姿を見たことがない。
 この国では珍しい紺色の髪だから、すぐに見つけられると思っていたのに、全く見かけない。それどころか週に一回の食事会も体調不良を理由に欠席しているし、俺からお茶や買い物に誘ってもそんな気分じゃないと断ってくるし、部屋まで行くと「申し訳ございません」と扉の目で彼女付きに侍女に頭を下げられる。
 サリュージも興味ないようだし、他の令嬢も会っていないと言っているので、アニメのような展開にはならないと思うんだけど、彼女のこの引きこもりが他の令嬢への印象を悪くしているんだよね。なんとかして外に連れ出せないかな?


 妃候補の顔合わせから21日目、3回目の食事も断られた。
「体調が悪いのなら、体にいい食事を用意するよ。少しは食べた方がいい」
 扉に向かって話しかけると、
「お構いなく! わたくしは大丈夫ですから!」
と怒鳴り散らした声が返ってくる。
 これはどうしたものか……。


「カイル、今日もオルベリザス伯爵令嬢は欠席かね?」
 今日は親父と母上も同席している席。親父は主を失った空席を見つめていた。
「気分が優れないそうです。後ほど、様子伺いに参ります」
 ったく、ファンティーヌ嬢が姿を見せないから、他の令嬢も気まずいと雰囲気になっているじゃないか。


 食事を終え、ファンティーヌ嬢の部屋へと向かう廊下を歩いている時、
「カイル様」
と声を掛けられた。
 振り返ってみると、そこにはアイリーン嬢がいた。
「アイリーン嬢。いかがなさいましたか?」
「実はファンティーヌ様の事でご相談したい事がありまして…」
「ファンティーヌ嬢の?」
「はい。顔合わせの日、わたくしは初めてファンティーヌ様にお会いしたのですが、謁見の間に通されるまでは何の変わりもないご様子でしたわ。ところが謁見の間に通された途端、急にご様子が変わったそうなんです」
「『そうなんです』と言う事は、アイリーン嬢が見たことではないのですね?」
「ええ。わたくしは遠く離れていましたので直には拝見しておりませんが、お隣にいらしたロザライン様がお聞きになったそうですわ。ファンティーヌ様の呟きを」
「呟き?」
「『これはおかしい』『こんなはずじゃない』『これではナントカ通りにはいかない』とか……?」
「そのナントカって何ですか?」
「それがロザライン様がお聞きになった事のない言葉でしたので、記憶に留まらなかったそうです。その後、王妃様のお姿を拝見した途端、顔色を変えて、今にも倒れてしまいそうなご様子だったそうですわ」
 アイリーン嬢の言葉に嘘は見受けられない。ロザライン嬢も頭の上がらないアイリーン嬢に嘘をつくとは思えない。母上も自分の姿を見た途端、顔色が変わったと仰っていた。
 やはり話し合う必要があるようだ。
「アイリーン嬢、報告ありがとうございます」
「わたくしは同じ妃候補を心配しているだけですわ。いくらライバルと言っても、同じ境遇にあってしまった仲間ですもの。困難は手を取り合って乗り越えていかなくては」
 さすが候補者の中で最年長。リーダー的素質がある。
「それからカイル様。内密にお話したい事があります。お時間をいただけないでしょうか?」
「内密に? 至急ですか?」
「なるべく早くお願いします」
「わかりました。では、明日のお昼過ぎ、お茶の席を設けましょう。場所はそちらで決めていただいてもよろしいですよ」
「では、カイル様の執務室で」
「へ?」
「カイル様の執務室でしたら、プライベートとしての面会ではありませんもの。お仕事の一貫としての面会ですわ」
 お…おや? このアイリーン嬢、なんとなく「出来る人」に思えるんですけど?
「わかりました。明日のお昼過ぎ、執務室でお待ちしております」
「では」
 アイリーン嬢は膝を曲げて令嬢らしい挨拶をして去っていった。

 俺の執務室ね~。
 はっ!!! 掃除しなくちゃ!!
 後で側近に掃除させよう!!


 ファンティーヌ嬢の部屋の前まで来ると、俺を待ち構えていたかのように侍女が立っていた。
「申し訳ございません。お嬢様はお休みになられています」
 おいおいおい、俺は何も聞いていないんですけど。
「明日の朝も来ていい?」
「お伝えいたします」
 そう冷たく言うと、侍女は部屋の中へと入っていった。
 しかたない。また出直すか。
 そう思って踵を翻そうとしたその時、
「あ…あの!!」
 さっきの侍女が血相を変えて部屋を飛び出した来た。
「お嬢様の姿が見当たりません!!」
「はぁ!?」
「窓が開いていて、それで……」
 逃げ出したかもしれないってことね。
 しかたない。探しに行くとするか。
「わたしが探してきます。あなたは部屋で待っていてください」
「こ…国王様にもお知らせした方がいいでしょうか!?」
「いえ、騒ぎを起こしてはいけません。きっと外の空気を吸いに出かけられたのですよ。わたしが見つけますので、あなたは部屋で待機していてください。入れ違いに戻ってくるかもしれませんから」
「はい…」
 ったく、世話のかかる姫様だよ!
 ヒロイン的立場の令嬢が王宮から逃げ出すなんて、アニメに無かったぞ!

 走り去ろうとした俺の背後で、
「……ゲームと違うわ……」
と、低い声が聞こえてきた。
 俺が振り向くと、そこには頭を下げている侍女の姿しかなかった。
 俺の聞き違い?



 庭園へと向かった俺は、宮殿の建物からかなり離れた森の近くへとやってきた。
 庭園って言っても結構広いし、隣接している森は野生の森だ。土地勘のない奴が迷い込むと迷子になる。俺は騎士団の訓練で何回も訪れているけど、初めての人間だと必ず迷うほど深い森だ。
 はたしてファンティーヌ嬢はここに迷い込んだのだろうか?

 一歩、森へ踏み込もうとした時、
「どうして? どうして設定が違うの!?」
という声が聞こえてきた。
 少ししか聞いた事ないけど、確かにファンティーヌ嬢の声だ。
 庭園と森の間には浅瀬の小川が流れており、その河原にファンティーヌ嬢がしゃがみ込んでいるのが見えた。
「こんなはずじゃ……こんな事ってあるの!? 本当にゲームの世界なの!?」
 ん? ゲームの世界?
 なんでそんな単語が出てくるんだ?
「このままじゃ……このままじゃ、またカイル様が~!!」
 え? 俺?
 なになになに? 何を泣き叫んでいるんだい?
「なにか対策はないかしら。そうだ! 女神さま! 女神さまなら何かご存じかも!!」
 おや~? なんか俺にも馴染みのある言葉が出てきたぞ~???
 小石が敷き詰められた河原に座り込んでいるファンティーヌ嬢は、なにやら前屈みになって小刻みに腕を動かしていた。
 興味が沸いた俺は思わず声を掛けてしまった。
「ファンティーヌ嬢?」
 その声に、漫画で見る様に飛び上がったファンティーヌ嬢は、俺の方を振り向いた。

 そして、その彼女の手には俺もよく見慣れたタブレットが握りしめられていた。


            <つづく>

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