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夏の月16日(金の曜日) ふれあい広場
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エリオたちは俺に丁寧に動物の扱いを教えてくれた。
祖父ちゃんがエリオたちに教えたやり方らしく、動物たちもとても嬉しそうな顔をしていた。
「この牛は、ユーキ様の所で飼われていた牛の子孫なんですよ。気難しい女の子なんですが、とても可愛い子なんです」
エリオの敬語は癖の様な物で直らなかったが、その敬語使いが動物たちを丁寧に扱う動作に表れているようだった。ブラシを掛けられている牛はとても気持ちよさそうだ。
「ハヤトもやってみますか?」
「え? 俺?」
エリオが俺にブラシを渡すと、牛が「モォ!?」と怒ったような声を出した。
え? もしかして威嚇されてる?
「ごめんね、【なつ】。ハヤトにやり方を教えたいんだ。いいよね?」
エリオが牛(【なつ】っていう名前らしい)に話しかけると、牛はそっぽを向いてしまった。
怒ってるんだね~~。ブラッシングを途中で止められた挙句に、初めて見る人間が代わりに触ろうとしているんだから。
「【なつ】!」
「いいよ、エリオ。この子は俺が嫌いなようだ」
「本当にごめんなさい。今いる牛の中でこの子が一番大人しいから大丈夫だと思ったんです」
「気にしなくていい。きっと俺の動物に初めて触れるっていう緊張を察したんだよ」
祖父ちゃんが生きていた頃に、一度だけ動物に触らせてもらったことがあるんだけど、やっぱり俺が怖がっていたから、それを察したのか動物は暴れたからね。
「でも、この【なつ】、毛並みがすごく綺麗だね。それに他の牛と比べて美人だね」
「モモォ!!??」
「美人な子はやっぱりエリオが手入れした方がいいよ。俺だと傷つけちゃいそう」
「モォ…モォ~~モモモモゥ」
え? なんか急に【なつ】の様子がおかしくなったんだけど。なんか、急にモジモジしていない? え? 照れてるの!? 俺の言葉、わかるの!?
「【なつ】が『仕方ないわね』って。『ちゃんと丁寧にブラシをかけてね』って言ってます」
「は? エリオ、牛の言葉が分かるの?」
「羊族の血を引いているので、動物の言葉は理解できます。羊族が家畜の世話に長けているのは、動物の言葉を理解できるからなんです」
「そうなんだ…」
「僕たち魔族は、人間にはない能力を持っているので、人間と一緒に暮らすことは長い間出来ませんでした。でも、ユーキ様がそれは一人一人に備わった個性だから、それを理由に争う事はおかしいと訴えてくださり、人間に姿を変える事が出来ない魔物たちとも手を取り合って、誰もが幸せに暮らせる場所を作ってくださったんです!」
わぁ~~…エリオの目がキラキラと輝いている~~(棒読み)
祖父ちゃんがどういう人かわからないけど、祖父ちゃんの事を褒められると俺も嬉しいな。
因みにエリオが育てている牛の名前は全部【なつ】と名付けられている。そしてニワトリは、やはり牛と同じように全部【はる】と名付けられていた。
どうやら祖父ちゃんが育てていた時から、牛は【なつ】、ニワトリは【はる】、羊は【あき】と名付けられ、祖父ちゃんはそれに番号をつけて飼っていたとか。(【なつ1】とか【なつ2】とか)
「子供が生まれるたびに名前を付けるのが面倒だからって、番号を付けていったそうです。ユーキ様がこの村に来て、牧場を経営し始めたのが春で、その時に当時の動物屋から貰ったのがニワトリで【はる】と名付け、夏の釣り大会で優勝した時の景品で貰ったのが牛で【なつ】と名付けたそうです」
え? 祖父ちゃん、適当に名前付けているじゃん。
「それに、アスカ様はこの村で保護された時、すべての記憶を失っていたんですが、名前がないと不便だからって、ユーキ様の初恋の方の名前を付けられたそうです」
はぁ!? 初恋の名前!?
「因みに、ユーキ様の初恋の相手は、物語の中に登場する女性だそうです」
しかも物語の登場人物に恋するって……祖父ちゃん、どういう幼少期を過ごしていたんだよ……。
なんか、小さい頃に会った祖父ちゃんのイメージがどんどん崩れていくんですけど…。
お昼過ぎ、俺はエリオの案内で村の入り口付近にやってきた。
村の入り口である検問所のすぐ隣には、ギルドの裏にある職人広場と同じように、中央に女性の像を携えた大きな噴水があり、その噴水を囲むようにいくつものの店と宿屋が連立していた。
「ここには食べ物を中心に売るお店が建っています。ギルドの裏は職人広場と呼ばれており、武器などの冒険者に必要な物を売っていますが、こちらの広場はふれあい広場と呼ばれ、野菜やお肉を売る店、料理を売る店、日用品が買える雑貨屋や農業に必要な作物の種を売る店もあるんですよ」
広い広場を囲むように並ぶ建物は、とてもカラフルだ。ギルドの裏にある職人広場に並ぶ店とは全く違う雰囲気がある。
だが、カラフルに壁は塗られているけど、店先で売っている物とその色が統一されているような気がする。
「この広場は、子供だけでも買い物ができるように、色を分けているんです。お魚屋さんは青、お肉屋さんは赤、野菜を売る店は緑、穀物の種が買えたり、お花が買える店は黄色、料理が食べられる所は白、宿屋は黒となっています。これを考えたのはアスカ様なんです」
「祖母ちゃんが?」
「よく迷子になる子供がいましたので、広場を囲むように店を立て直して、居住地をその奥に網目のように作り替えたんです。今のように作り替えてからは、子供たちも迷子になることもなく、ギルドの依頼も受けやすくなったんですよ」
祖父ちゃんも祖母ちゃんもこの村の生まれでもないのに、村人の為に色々と尽していたんだ。
やっぱ、虹色カード所持の人間は、自分の為だけじゃなく、誰かの為に動くことも必要なんだね。
エリオと一緒に広場を歩いていると、建物の前に長いテーブルを置いて、色々な物を並べている店を多く見かけた。魚屋の前では机の半分を占める長方形の鉄の箱の上に網を置き、そこで魚を焼いている。肉屋の前では油が大量に入った鍋で、何かの肉をあげているし、野菜を売っている店の前では、食べやすい大きさに切った夏野菜を容器に入れたり、見たこともない小さな黄色い粒がびっしりと付いている野菜(?)を、魚屋が使っていた鉄の箱の上で直接焼いている。
これ、全部食べ物だよね? 王都では見たこともない野菜や果物、料理が目につく。
「エリオ! 今日のお仕事は終わったの?」
白い建物の前を通りかかった時、店先にいた女の子が声を掛けてきた。
青い瞳に、水色の長い髪を二つ括りにしている女の子だ。たぶん年は俺とそんなに変わらないはず。
「こんにちは、アンナ」
「今年も夏祭りがやってきたね! 今日は新作があるから絶対に食べていってね!」
元気のいい女の子は、大きなお皿を両手で持っており、その皿の上には茶色く色づいた物が乗っていた。よく見るとキャベツやニンジンが入っており、肉らしき塊も見える。それらと一緒に細い紐状な物が一緒に絡まっており、とても香ばしい匂いがしてきた。
「あら? エリオのお友達?」
「一昨日、この村に移住してきたハヤト様です。ユーキ様とアスカ様のお孫様で、ユーキ様の牧場を継いでくださることになったんです」
「あなたがユーキ様のお孫様なんですか!? お会いできて光栄です!!」
「ハ…ハヤトです。初めまして」
「初めまして、アンナと申します! ユーキ様のお孫様がいらっしゃっている事は噂で聞いていました。本当にお会いできるなんて嬉しいです!」
アンナって子も、ギルドのエリーと同じように目が輝いている。あ~、祖父ちゃんと祖母ちゃんのファンなんだね~。
「このレストランの創設者のお孫様にお会いできるなんて、お父さんとお母さんにもお知らせしなくちゃ!!」
そういうとアンナは店の中に飛び込んでいった。
今、レストランの創設者って言葉が聞こえたんだけど……どういうこと?
しばらくすると、店の中からドタドタ!っという音と共に2人の男女が飛び出してきた。
一人はひょろっとした男の人で、白い服に緑色のスカーフを巻いている。もう1人は恰幅のいい女性で、アンナと同じ水色の髪を一つに纏め、緑色のスカーフを根元に縛っていた。
「あなたがユーキ様のお孫様ですか!?」
ひょろっとした男性は、俺を力強く抱きしめてきた。その体格からは想像もつかない強い力だ。
「村長が言っていた事は本当だったんですね! よくこの村に来てくださいました! 心から歓迎いたします!!」
女性もボロボロと涙を流していた。
一体何なんですか~~!!
アンナから話を聞くと、彼女の両親も祖父ちゃんと祖母ちゃんに助けてもらったらしい。
このレストランは代々この村で営業を続けていたが、これと言って名物もなく、味もいまいちだった。いつも閑古鳥が鳴いて、アンナの祖父(母方)が店を閉めようと考えた時、祖父ちゃんがこの村に来た。そして祖父ちゃんと仲良くなったアンナのお母さんが料理を教えてほしいと頼み込み、冒険者でも作れる簡単な料理を覚えたそうだ。
で、冒険者の間で評判のお店となり、たまたまこの村に立ち寄ったアンナのお父さんが料理に惚れこみ、アンナのお母さんに猛アタックして、結婚することになった。
アンナの祖父が亡くなって、一度はレストランを手放したけど、祖父ちゃんと祖母ちゃんが経営者ってことで、新しくレストランを開店することになり、アンナの両親が店長を任された……っていう経緯があるらしい。
そういう意味の創設者ってことね。
因みに、このレストランからは沢山の料理人が旅立って行き、その中の1人が、俺が王都で雇われていたレストランのマスターなんだってさ。
さっき、アンナが持っていた料理は、『焼きそば』っていう料理で祖父ちゃんの大好物なんだって。野菜と肉と小麦粉から作った麺っていう食材を、野菜と調味料を煮込んで作ったソースっていう液体を絡めて焼いた物。これも祖父ちゃんから教えてもらった料理の一つだって話してくれた。
聞けば、今、広場で準備しているそれぞれのお店で出している料理は、祖父ちゃんの故郷では祭りの定番の物らしい。この村では毎年夏の16日に夏祭りを行い、祖父ちゃんの好物の料理を作って販売することになっている。
「通常の営業でも出す料理もありますが、夏の16日だけは、ユーキ様の大好物を店頭で販売しているんです」
そうアンナが答えた。
「なんで夏の一日だけ?」
「特別な日だからです」
「特別な日?」
「今日はユーキ様のお誕生日なんです!!」
アンナの声が今日一番弾んだ。
え? 祖父ちゃんの誕生日?
<つづく>
祖父ちゃんがエリオたちに教えたやり方らしく、動物たちもとても嬉しそうな顔をしていた。
「この牛は、ユーキ様の所で飼われていた牛の子孫なんですよ。気難しい女の子なんですが、とても可愛い子なんです」
エリオの敬語は癖の様な物で直らなかったが、その敬語使いが動物たちを丁寧に扱う動作に表れているようだった。ブラシを掛けられている牛はとても気持ちよさそうだ。
「ハヤトもやってみますか?」
「え? 俺?」
エリオが俺にブラシを渡すと、牛が「モォ!?」と怒ったような声を出した。
え? もしかして威嚇されてる?
「ごめんね、【なつ】。ハヤトにやり方を教えたいんだ。いいよね?」
エリオが牛(【なつ】っていう名前らしい)に話しかけると、牛はそっぽを向いてしまった。
怒ってるんだね~~。ブラッシングを途中で止められた挙句に、初めて見る人間が代わりに触ろうとしているんだから。
「【なつ】!」
「いいよ、エリオ。この子は俺が嫌いなようだ」
「本当にごめんなさい。今いる牛の中でこの子が一番大人しいから大丈夫だと思ったんです」
「気にしなくていい。きっと俺の動物に初めて触れるっていう緊張を察したんだよ」
祖父ちゃんが生きていた頃に、一度だけ動物に触らせてもらったことがあるんだけど、やっぱり俺が怖がっていたから、それを察したのか動物は暴れたからね。
「でも、この【なつ】、毛並みがすごく綺麗だね。それに他の牛と比べて美人だね」
「モモォ!!??」
「美人な子はやっぱりエリオが手入れした方がいいよ。俺だと傷つけちゃいそう」
「モォ…モォ~~モモモモゥ」
え? なんか急に【なつ】の様子がおかしくなったんだけど。なんか、急にモジモジしていない? え? 照れてるの!? 俺の言葉、わかるの!?
「【なつ】が『仕方ないわね』って。『ちゃんと丁寧にブラシをかけてね』って言ってます」
「は? エリオ、牛の言葉が分かるの?」
「羊族の血を引いているので、動物の言葉は理解できます。羊族が家畜の世話に長けているのは、動物の言葉を理解できるからなんです」
「そうなんだ…」
「僕たち魔族は、人間にはない能力を持っているので、人間と一緒に暮らすことは長い間出来ませんでした。でも、ユーキ様がそれは一人一人に備わった個性だから、それを理由に争う事はおかしいと訴えてくださり、人間に姿を変える事が出来ない魔物たちとも手を取り合って、誰もが幸せに暮らせる場所を作ってくださったんです!」
わぁ~~…エリオの目がキラキラと輝いている~~(棒読み)
祖父ちゃんがどういう人かわからないけど、祖父ちゃんの事を褒められると俺も嬉しいな。
因みにエリオが育てている牛の名前は全部【なつ】と名付けられている。そしてニワトリは、やはり牛と同じように全部【はる】と名付けられていた。
どうやら祖父ちゃんが育てていた時から、牛は【なつ】、ニワトリは【はる】、羊は【あき】と名付けられ、祖父ちゃんはそれに番号をつけて飼っていたとか。(【なつ1】とか【なつ2】とか)
「子供が生まれるたびに名前を付けるのが面倒だからって、番号を付けていったそうです。ユーキ様がこの村に来て、牧場を経営し始めたのが春で、その時に当時の動物屋から貰ったのがニワトリで【はる】と名付け、夏の釣り大会で優勝した時の景品で貰ったのが牛で【なつ】と名付けたそうです」
え? 祖父ちゃん、適当に名前付けているじゃん。
「それに、アスカ様はこの村で保護された時、すべての記憶を失っていたんですが、名前がないと不便だからって、ユーキ様の初恋の方の名前を付けられたそうです」
はぁ!? 初恋の名前!?
「因みに、ユーキ様の初恋の相手は、物語の中に登場する女性だそうです」
しかも物語の登場人物に恋するって……祖父ちゃん、どういう幼少期を過ごしていたんだよ……。
なんか、小さい頃に会った祖父ちゃんのイメージがどんどん崩れていくんですけど…。
お昼過ぎ、俺はエリオの案内で村の入り口付近にやってきた。
村の入り口である検問所のすぐ隣には、ギルドの裏にある職人広場と同じように、中央に女性の像を携えた大きな噴水があり、その噴水を囲むようにいくつものの店と宿屋が連立していた。
「ここには食べ物を中心に売るお店が建っています。ギルドの裏は職人広場と呼ばれており、武器などの冒険者に必要な物を売っていますが、こちらの広場はふれあい広場と呼ばれ、野菜やお肉を売る店、料理を売る店、日用品が買える雑貨屋や農業に必要な作物の種を売る店もあるんですよ」
広い広場を囲むように並ぶ建物は、とてもカラフルだ。ギルドの裏にある職人広場に並ぶ店とは全く違う雰囲気がある。
だが、カラフルに壁は塗られているけど、店先で売っている物とその色が統一されているような気がする。
「この広場は、子供だけでも買い物ができるように、色を分けているんです。お魚屋さんは青、お肉屋さんは赤、野菜を売る店は緑、穀物の種が買えたり、お花が買える店は黄色、料理が食べられる所は白、宿屋は黒となっています。これを考えたのはアスカ様なんです」
「祖母ちゃんが?」
「よく迷子になる子供がいましたので、広場を囲むように店を立て直して、居住地をその奥に網目のように作り替えたんです。今のように作り替えてからは、子供たちも迷子になることもなく、ギルドの依頼も受けやすくなったんですよ」
祖父ちゃんも祖母ちゃんもこの村の生まれでもないのに、村人の為に色々と尽していたんだ。
やっぱ、虹色カード所持の人間は、自分の為だけじゃなく、誰かの為に動くことも必要なんだね。
エリオと一緒に広場を歩いていると、建物の前に長いテーブルを置いて、色々な物を並べている店を多く見かけた。魚屋の前では机の半分を占める長方形の鉄の箱の上に網を置き、そこで魚を焼いている。肉屋の前では油が大量に入った鍋で、何かの肉をあげているし、野菜を売っている店の前では、食べやすい大きさに切った夏野菜を容器に入れたり、見たこともない小さな黄色い粒がびっしりと付いている野菜(?)を、魚屋が使っていた鉄の箱の上で直接焼いている。
これ、全部食べ物だよね? 王都では見たこともない野菜や果物、料理が目につく。
「エリオ! 今日のお仕事は終わったの?」
白い建物の前を通りかかった時、店先にいた女の子が声を掛けてきた。
青い瞳に、水色の長い髪を二つ括りにしている女の子だ。たぶん年は俺とそんなに変わらないはず。
「こんにちは、アンナ」
「今年も夏祭りがやってきたね! 今日は新作があるから絶対に食べていってね!」
元気のいい女の子は、大きなお皿を両手で持っており、その皿の上には茶色く色づいた物が乗っていた。よく見るとキャベツやニンジンが入っており、肉らしき塊も見える。それらと一緒に細い紐状な物が一緒に絡まっており、とても香ばしい匂いがしてきた。
「あら? エリオのお友達?」
「一昨日、この村に移住してきたハヤト様です。ユーキ様とアスカ様のお孫様で、ユーキ様の牧場を継いでくださることになったんです」
「あなたがユーキ様のお孫様なんですか!? お会いできて光栄です!!」
「ハ…ハヤトです。初めまして」
「初めまして、アンナと申します! ユーキ様のお孫様がいらっしゃっている事は噂で聞いていました。本当にお会いできるなんて嬉しいです!」
アンナって子も、ギルドのエリーと同じように目が輝いている。あ~、祖父ちゃんと祖母ちゃんのファンなんだね~。
「このレストランの創設者のお孫様にお会いできるなんて、お父さんとお母さんにもお知らせしなくちゃ!!」
そういうとアンナは店の中に飛び込んでいった。
今、レストランの創設者って言葉が聞こえたんだけど……どういうこと?
しばらくすると、店の中からドタドタ!っという音と共に2人の男女が飛び出してきた。
一人はひょろっとした男の人で、白い服に緑色のスカーフを巻いている。もう1人は恰幅のいい女性で、アンナと同じ水色の髪を一つに纏め、緑色のスカーフを根元に縛っていた。
「あなたがユーキ様のお孫様ですか!?」
ひょろっとした男性は、俺を力強く抱きしめてきた。その体格からは想像もつかない強い力だ。
「村長が言っていた事は本当だったんですね! よくこの村に来てくださいました! 心から歓迎いたします!!」
女性もボロボロと涙を流していた。
一体何なんですか~~!!
アンナから話を聞くと、彼女の両親も祖父ちゃんと祖母ちゃんに助けてもらったらしい。
このレストランは代々この村で営業を続けていたが、これと言って名物もなく、味もいまいちだった。いつも閑古鳥が鳴いて、アンナの祖父(母方)が店を閉めようと考えた時、祖父ちゃんがこの村に来た。そして祖父ちゃんと仲良くなったアンナのお母さんが料理を教えてほしいと頼み込み、冒険者でも作れる簡単な料理を覚えたそうだ。
で、冒険者の間で評判のお店となり、たまたまこの村に立ち寄ったアンナのお父さんが料理に惚れこみ、アンナのお母さんに猛アタックして、結婚することになった。
アンナの祖父が亡くなって、一度はレストランを手放したけど、祖父ちゃんと祖母ちゃんが経営者ってことで、新しくレストランを開店することになり、アンナの両親が店長を任された……っていう経緯があるらしい。
そういう意味の創設者ってことね。
因みに、このレストランからは沢山の料理人が旅立って行き、その中の1人が、俺が王都で雇われていたレストランのマスターなんだってさ。
さっき、アンナが持っていた料理は、『焼きそば』っていう料理で祖父ちゃんの大好物なんだって。野菜と肉と小麦粉から作った麺っていう食材を、野菜と調味料を煮込んで作ったソースっていう液体を絡めて焼いた物。これも祖父ちゃんから教えてもらった料理の一つだって話してくれた。
聞けば、今、広場で準備しているそれぞれのお店で出している料理は、祖父ちゃんの故郷では祭りの定番の物らしい。この村では毎年夏の16日に夏祭りを行い、祖父ちゃんの好物の料理を作って販売することになっている。
「通常の営業でも出す料理もありますが、夏の16日だけは、ユーキ様の大好物を店頭で販売しているんです」
そうアンナが答えた。
「なんで夏の一日だけ?」
「特別な日だからです」
「特別な日?」
「今日はユーキ様のお誕生日なんです!!」
アンナの声が今日一番弾んだ。
え? 祖父ちゃんの誕生日?
<つづく>
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