21 / 39
1年目
秋の月26日(水の曜日) ミントさんの正体
しおりを挟む
リックさんが仲間を連れて救助に来てくれたため、俺たちも冒険を切り上げることにした。
大怪我を負ったリーダーは診療所へ運び、他の冒険者はギルドで詳しい話を聞く事になった。
ガイはリックさんと共に森に戻った。調査してくるらしい。
アルベールは自警団から大量の武器の注文が入ったので、ガンツさんのお手伝いをするため武器屋に戻った。
俺は冒険を切り上げたため、アンナの店で食事を取ることにした。
お昼のピークも過ぎていたので、店の中は閑散としていたが、エリオとミントさんが同じテーブルで食事をしているのが目に入った。
「お帰りなさい、ハヤト。大変でしたね」
エリオは手を振りながら俺たちを出迎えた。
「もう知っているんですか?」
「ギルドで大騒ぎになっていましたわ。この村周辺の魔物退治や素材採取の依頼がすべて取り下げられましたの。村の出入りも強化すると聞きましたわ」
ミントさんはお気に入りのハーブティーの入ったカップを手にしながらギルドの事を教えてくれた。
確かに依頼終了と依頼キャンセルの手続きをしにギルドに行ってきたけど、受付がバタバタしていたな。特に冒険者専用受付のジョシュアさんは今にも倒れそうなほど忙しそうだった。
「シルバーウルフが出没したんですって?」
「あ、はい。俺たちは直接見たわけではないので、冒険者たちからの話だと、灰色の大きなオオカミが襲ってきたそうです。パーティのリーダーはシルバーウルフだと言っていました」
「あの森にシルバーウルフが出るなんて、今までになかった事ですよ。シルバーウルフは生息地が山間部なんです。時々、餌を求めて麓の森まで下りてきますが、人間に対して警戒心が強いので、人間が多くいる所には来ないんです。あの森には沢山の人間が出入りしているので、シルバーウルフは近寄らないはずなんです」
さすがエリオ。魔物について詳しい。
「それに、シルバーウルフはSランクの魔物ですわ。いくら冒険者ランクがAでも、こちらから攻撃を仕掛けなければ、相手のレベルを見て手を出さないはずですもの」
「じゃあ、あの冒険者たちが手を出したってこと?」
「そう聞きましたの?」
「いや。湖で一休みしていたら、森の奥から魔物や動物たちが逃げ出してきて、その後にシルバーウルフが飛び出してきて襲われたって言ってました」
「ますます謎ですわ。わたくしもシルバーウルフと戦ったことありますが、魔物や動物たちが逃げ出すなんてありえませんでしたもの」
ミントさん、今、サラッと言いましたね? シルバーウルフと戦ったって。
錬金術師で薬師のミントさんは、冒険者でもあったんですか?
「シルバーウルフはSランクの魔物の中では下の位になりますが、伝説級の魔物を除いては最高ランクに値します。最高ランクの魔物は他の魔物や動物たちに慕われているものなんですよ」
「森の主とか、洞窟の番人とかしていますものね。今の所確認されているSランクの魔物は、十数種類もありますわ。でも、そのどれも人間が攻撃しなければ襲ってくることはありませんもの」
「中には人間に恨みを持っている魔物もいますけどね」
「そういう魔物はSランクから外され、危険ランクになっているはすですわ。国がちゃんと管理していればの話ですけど」
うわぁ~…俺の知らない事が次から次へと出てくる~~。
テーブルの上を見ると、難しい話に飽きたリーフが、エリオとミントさんが食べていたデザートを美味しそうに頬張っているし~。それ、他人のだよ~!
「あ…あの~……こんな時に申し訳ないんですけど……魔物のランクとかについて教えてもらえませんか? 俺、あんまり知識がなくて…」
申し訳なさそうに申し出ると、ミントさんは笑顔で「いいですわ」と返事をしてくれた。
エリオも、アンナに追加のオーダーを出し、詳しく話してくれる様子だ。
よかった、呆れた顔をされなくて。
エリオとミントさんが教えてくれた魔物のランクはこんな感じだった。
/\
伝説級(SS)
/____\
/ Sランク \
/シルバーウルフ \
/__________\
/ Aランク \
/ 精霊、魔物族長 など \
/________________\
/ Bランク \
/ ゴブリン、ゴースト、昆虫亜種 など \
/______________________\
/ Cランク \
/ 植物系、昆虫系、動物系(すべて上級) など \
/____________________________\
/ D・E・Fランク \
/ スライム、動物、昆虫、植物の低ランク系 など \
/__________________________________\
ざっくりとした図形はこんな感じらしい。
下のランクの魔物たちも上の魔物たちに従うってく感じらしい。でも、上のランクの魔物は下のランクの魔物を攻撃することもなく、お互いの縄張りは持っていても争うことはないらしい。
因みにテイム(契約)できる魔物も、冒険者ランクと同じランクでないと出来ないとか。
俺が解約を結んだスライムはFランクがほとんどで、土属性や植物属性のスライムはEかDランクらしい。今の俺は冒険者ランクがEなので、ノームやリーフたちと契約を結べたのではないか…ということらしい。
Fランクって言う魔物は、さっきまで行っていた森に多く生息し、その辺の棒で叩いても退治できるほど弱い魔物。Eランクの冒険者にとって大切な経験値稼ぎとなっている。
で、今回あの森に現れたのはSランクの魔物。この魔物は伝説級の魔物の手下になっている事もあるらしく、土地に住む精霊たちよりも位が上。魔族の族長たちが何か困ったことがあると助けを求めるほど、魔物の中では最高地位にいる。
「今の所、確認されているSランクの魔物は十数種類って話は、先ほどしましたでしょ? 数が少ないのはCランクやBランクの魔物の中で、戦闘能力の高い個体が突然誕生することがありますの。その突然変異で誕生した魔物…特に冒険者レベルSでなければ倒す事が出来ない個体をSランクにしていますの」
「ランクAの冒険者が遭遇しても倒す事が出来ず、Sランクの冒険者に国から討伐の依頼を出した魔物がSランクになります。ユーキ様はよく国からの依頼を引き受けていました」
「現在、この国でSランクに格付けされている魔物のほとんどは、ユーキが倒した魔物たちですわ。ユーキが討伐した後、その個体が見つかっていない物を伝説級、何度も現れる物をSランクにしていますの」
「じゃ…じゃあ、今回現れたシルバーウルフも祖父ちゃんが倒したことがあるってこと?」
「ええ。わたくしと一緒に退治しましたわ」
ミントさんと一緒?
は? どういうこと? ミントさんって、祖父ちゃんの仲間だったの!?
「あら、わたくし、話しませんでした? わたくし、ユーキとアスカが結成したパーティ『希望』のメンバーの1人なんですのよ」
あっけらかんとハンスミントさん。
その顔には「もうご存知かと思いましたわ」と書いてある。
聞いてませ~~~ん!!!
祖父ちゃんと祖母ちゃんの事を呼び捨てにするから、何らかの関係を持っているとは思ったけど、仲間だなんて聞いた事ないです!!!
え!? ちょっと待って!
祖父ちゃんの仲間ってことは、ミントさん、結構な年だよね?
まさかミントさんも魔族とか!?
「ミントさんは、祖父ちゃんの仲間なんですよね? 祖父ちゃんはかなり前に冒険者を辞めたと思うんですけど……その……ミントさんておいくつなんですか?」
「女性に年を聞くなんて失礼ですわ!」
「ご…ごめんなさい。あまりにも若く見たので…その……俺と同い年かと思ってました」
「あら、そうなんですの? これでもわたくし、ユーキと同い年ですわ」
「えぇ!!??」
「ユーキとアスカが虹色カード所持になった時、わたくしたちパーティ全員も虹色カード所持を許可されましたの。でも、わたくしはそれを断わりまして、この村でのんびりと薬師をやりたいと願い出ましたの。そしたら、女神さまが一つだけ願いを叶えてくださるって仰ったので、わたくしの中に流れる【時】を止めてくださるようにお願いしましたの」
「【時】を止める?」
「永遠の命を得る事ですわ。ユーキとアスカのその後も見守りたかったですし、2人が亡くなった後もこの村を見守るために永遠の命をいただきましたの。わたくしが【時】を止めていただいたのが、30ちょっと手前でしたので、その時のままですのよ」
そ…そんなことが可能なんですね…。
この村はなんでもありだ!
ん? 祖父ちゃんの仲間だったってことは、先代国王も仲間ってこと!?
ミカエルがそんな事言っていた気がする。
「ミントさんは王宮に仕える魔術師だったんですよ」
「魔術師?」
「表向きは魔術師ですわ。本当は錬金術師。わたくしが作る薬や回復魔法、攻撃魔法などが、他国で人気のある魔術師とそっくりという事だけで、王宮魔術師という位を与えられていましたの。毎日退屈でしたわ。決められた部屋で決められた量の薬を作り、決められた書類にサインする。そんな毎日を送っていましたの。そんな時、ドラゴン族が街を襲っているっていう報告が王宮に届けられまして、その討伐並びに鎮圧に向かったのがユーキたちのパーティですの。その時はユーキとアスカ、エリオのお父さんのみのパーティだったんですが、当時の国王様…というよりも後継者争いをしていた第三妃様が、ご自分の息子さんを仲間に入れて、その監視役としてわたくしも同行することになりましたのよ」
「その息子さんっていうのが、先代国王様?」
「ええ。当時の国王様もドラゴン退治が達成できれば王位を譲るって仰っていたものだから、第三妃様が大いに張り切っていました。そして、何故かわたくしが王子の婚約者に選ばれてしまいましたわ」
「婚約者!?」
「わたくしは恋愛に興味はなかったので、一応形だけっていうことで引き受けましたけど、第三妃様がしつこくてね。結婚式の日取りまで決めてしまいましたのよ」
「結婚はしなかったんですか?」
「当たり前ですわ! いくら幼馴染みでも、わたくしは王子の事なんて何とも思っていませんでしたもの! 王子は王子でわたくしの親友に恋してましたし、2人をくっつけるために色々とやりましたの。特に結婚式当日の第三妃様のあの悔しそうなお顔は今でも忘れられませんわ!」
突然高笑いをするミントさん。
きっと、俺を想像する以上の事をやらかしたんだろうね~。
「何をやらかしたんですか!?」
いつの間にかアンナが俺の隣に座って、リーフにクッキーを与えていた。
本当にいつの間に!?
「結婚式当日、わたくしと親友を入れ替えて式を挙げましたのよ。王宮には色々と儀式があったんですが、ユーキたちが討伐だ、なんだかんだで王子も駆り出されていたので、略式で行われましたの。でも結婚式は派手にやりたい!っていう第三妃様の願いで、式の事はすべて第三妃様が仕切っていたので、これはチャンスと思い、式当日に親友と入れ替わる事を思いつきましたの。衣装はわたくしの家に使える仕立て屋に頼みましたので、入れ替わりはスムーズにできましたわ」
「それで? それで?」
アンナが凄い興味深々だよ。
「結婚式では、女神の前で宣誓するんですが、一番最後まで花嫁のベールは顔を隠したままなんですの。それで、婚姻誓約書の署名も終わり、王子の妃になる方に捧げられるティアラの贈呈も終わり、花嫁のお披露目って時に、ベールの向こうから現れたのは、わたくしではなく、親友の顔。それを見た途端、第三妃はそれはそれはとても大きな悲鳴を上げましたの。これは無効だ、今すぐやり直せ!って喚いていましたけど、署名は親友の名前、ティアラは親友の頭の上、しかも女神さまも認めてしまいましたので、無効にはできませんでしたの。あの時の悔しそうな第三妃様の顔、本当に最高でしたわ!」
「よく王室が怒らなかったね」
「それは大丈夫ですわ。第三妃様は王子の事など眼中になかったんですもの。本当はもう1人の息子を王位に就かせたかったんですの。その為には上の王子が邪魔。じゃあ、ドラゴン退治に行かせて、その場で命を落とすようなことがあれば、下の王子に継承権が転がり込んでくるんじゃないの?なんて思っていたらしく、溺愛する下の息子を王位に就かせるためにユーキに預けたんですの。でも予想を反して王子は大活躍。もちろん女神さまから虹色カード所持の許可も得ていましたのよ」
「さぞ悔しかったでしょうね」
「ええ! ええ! 結局、上の王子が国王に就き、第三妃様は実の母親なのに王宮を追放されてしまいましたの」
「なんで!?」
「実は第三妃様、王子の父君が敵対する国の宰相と不倫関係にあったんですの! それを掴んだのはわたくし。国王に就かれた王子にこっそり教えてあげましたの。もちろん敵対する国はユーキに頼んで成敗してもらいましたわ。今ではこの国の領地になっているはずですわ」
笑顔で話すミントさん。
アンナもエリオも楽しそうに聞いているけど、これって、本当に笑い話でいいの?
だいぶ前の話だから、当事者たちはいないと思うんだけど、時の流れって怖い……。
「でも、よくそんな事思いつきましたね」
「わたくし1人の考えでは実行できませんわ。最高の協力者がいましたの!」
「誰ですか!?」
「もちろん、アスカに決まっていますわ!」
祖母ちゃん!! 王宮で何をやっているんですか!!!
一歩間違えれば祖母ちゃんが捕まるじゃないか!!
この日はミントさんの昔話で盛り上がった。
ミントさんを初めて見た時、内面から上品さが滲み出ていると思ったけど、王宮で暮らしており、更に王室に近い侯爵家の令嬢だったと話す。生まれ持った気品ってやつか。
ただ、侯爵令嬢である事、王宮に閉じ込められている事(当時の女神候補だったんだって)に嫌気が指し、自分の好きな事をやりたい為に、王宮を追放されるような事をやり続けたのは、そこら辺の女の子と変わらないよね。
ミントさんの昔話、物語にして販売したら売れそうなんだけど…。
<つづく>
大怪我を負ったリーダーは診療所へ運び、他の冒険者はギルドで詳しい話を聞く事になった。
ガイはリックさんと共に森に戻った。調査してくるらしい。
アルベールは自警団から大量の武器の注文が入ったので、ガンツさんのお手伝いをするため武器屋に戻った。
俺は冒険を切り上げたため、アンナの店で食事を取ることにした。
お昼のピークも過ぎていたので、店の中は閑散としていたが、エリオとミントさんが同じテーブルで食事をしているのが目に入った。
「お帰りなさい、ハヤト。大変でしたね」
エリオは手を振りながら俺たちを出迎えた。
「もう知っているんですか?」
「ギルドで大騒ぎになっていましたわ。この村周辺の魔物退治や素材採取の依頼がすべて取り下げられましたの。村の出入りも強化すると聞きましたわ」
ミントさんはお気に入りのハーブティーの入ったカップを手にしながらギルドの事を教えてくれた。
確かに依頼終了と依頼キャンセルの手続きをしにギルドに行ってきたけど、受付がバタバタしていたな。特に冒険者専用受付のジョシュアさんは今にも倒れそうなほど忙しそうだった。
「シルバーウルフが出没したんですって?」
「あ、はい。俺たちは直接見たわけではないので、冒険者たちからの話だと、灰色の大きなオオカミが襲ってきたそうです。パーティのリーダーはシルバーウルフだと言っていました」
「あの森にシルバーウルフが出るなんて、今までになかった事ですよ。シルバーウルフは生息地が山間部なんです。時々、餌を求めて麓の森まで下りてきますが、人間に対して警戒心が強いので、人間が多くいる所には来ないんです。あの森には沢山の人間が出入りしているので、シルバーウルフは近寄らないはずなんです」
さすがエリオ。魔物について詳しい。
「それに、シルバーウルフはSランクの魔物ですわ。いくら冒険者ランクがAでも、こちらから攻撃を仕掛けなければ、相手のレベルを見て手を出さないはずですもの」
「じゃあ、あの冒険者たちが手を出したってこと?」
「そう聞きましたの?」
「いや。湖で一休みしていたら、森の奥から魔物や動物たちが逃げ出してきて、その後にシルバーウルフが飛び出してきて襲われたって言ってました」
「ますます謎ですわ。わたくしもシルバーウルフと戦ったことありますが、魔物や動物たちが逃げ出すなんてありえませんでしたもの」
ミントさん、今、サラッと言いましたね? シルバーウルフと戦ったって。
錬金術師で薬師のミントさんは、冒険者でもあったんですか?
「シルバーウルフはSランクの魔物の中では下の位になりますが、伝説級の魔物を除いては最高ランクに値します。最高ランクの魔物は他の魔物や動物たちに慕われているものなんですよ」
「森の主とか、洞窟の番人とかしていますものね。今の所確認されているSランクの魔物は、十数種類もありますわ。でも、そのどれも人間が攻撃しなければ襲ってくることはありませんもの」
「中には人間に恨みを持っている魔物もいますけどね」
「そういう魔物はSランクから外され、危険ランクになっているはすですわ。国がちゃんと管理していればの話ですけど」
うわぁ~…俺の知らない事が次から次へと出てくる~~。
テーブルの上を見ると、難しい話に飽きたリーフが、エリオとミントさんが食べていたデザートを美味しそうに頬張っているし~。それ、他人のだよ~!
「あ…あの~……こんな時に申し訳ないんですけど……魔物のランクとかについて教えてもらえませんか? 俺、あんまり知識がなくて…」
申し訳なさそうに申し出ると、ミントさんは笑顔で「いいですわ」と返事をしてくれた。
エリオも、アンナに追加のオーダーを出し、詳しく話してくれる様子だ。
よかった、呆れた顔をされなくて。
エリオとミントさんが教えてくれた魔物のランクはこんな感じだった。
/\
伝説級(SS)
/____\
/ Sランク \
/シルバーウルフ \
/__________\
/ Aランク \
/ 精霊、魔物族長 など \
/________________\
/ Bランク \
/ ゴブリン、ゴースト、昆虫亜種 など \
/______________________\
/ Cランク \
/ 植物系、昆虫系、動物系(すべて上級) など \
/____________________________\
/ D・E・Fランク \
/ スライム、動物、昆虫、植物の低ランク系 など \
/__________________________________\
ざっくりとした図形はこんな感じらしい。
下のランクの魔物たちも上の魔物たちに従うってく感じらしい。でも、上のランクの魔物は下のランクの魔物を攻撃することもなく、お互いの縄張りは持っていても争うことはないらしい。
因みにテイム(契約)できる魔物も、冒険者ランクと同じランクでないと出来ないとか。
俺が解約を結んだスライムはFランクがほとんどで、土属性や植物属性のスライムはEかDランクらしい。今の俺は冒険者ランクがEなので、ノームやリーフたちと契約を結べたのではないか…ということらしい。
Fランクって言う魔物は、さっきまで行っていた森に多く生息し、その辺の棒で叩いても退治できるほど弱い魔物。Eランクの冒険者にとって大切な経験値稼ぎとなっている。
で、今回あの森に現れたのはSランクの魔物。この魔物は伝説級の魔物の手下になっている事もあるらしく、土地に住む精霊たちよりも位が上。魔族の族長たちが何か困ったことがあると助けを求めるほど、魔物の中では最高地位にいる。
「今の所、確認されているSランクの魔物は十数種類って話は、先ほどしましたでしょ? 数が少ないのはCランクやBランクの魔物の中で、戦闘能力の高い個体が突然誕生することがありますの。その突然変異で誕生した魔物…特に冒険者レベルSでなければ倒す事が出来ない個体をSランクにしていますの」
「ランクAの冒険者が遭遇しても倒す事が出来ず、Sランクの冒険者に国から討伐の依頼を出した魔物がSランクになります。ユーキ様はよく国からの依頼を引き受けていました」
「現在、この国でSランクに格付けされている魔物のほとんどは、ユーキが倒した魔物たちですわ。ユーキが討伐した後、その個体が見つかっていない物を伝説級、何度も現れる物をSランクにしていますの」
「じゃ…じゃあ、今回現れたシルバーウルフも祖父ちゃんが倒したことがあるってこと?」
「ええ。わたくしと一緒に退治しましたわ」
ミントさんと一緒?
は? どういうこと? ミントさんって、祖父ちゃんの仲間だったの!?
「あら、わたくし、話しませんでした? わたくし、ユーキとアスカが結成したパーティ『希望』のメンバーの1人なんですのよ」
あっけらかんとハンスミントさん。
その顔には「もうご存知かと思いましたわ」と書いてある。
聞いてませ~~~ん!!!
祖父ちゃんと祖母ちゃんの事を呼び捨てにするから、何らかの関係を持っているとは思ったけど、仲間だなんて聞いた事ないです!!!
え!? ちょっと待って!
祖父ちゃんの仲間ってことは、ミントさん、結構な年だよね?
まさかミントさんも魔族とか!?
「ミントさんは、祖父ちゃんの仲間なんですよね? 祖父ちゃんはかなり前に冒険者を辞めたと思うんですけど……その……ミントさんておいくつなんですか?」
「女性に年を聞くなんて失礼ですわ!」
「ご…ごめんなさい。あまりにも若く見たので…その……俺と同い年かと思ってました」
「あら、そうなんですの? これでもわたくし、ユーキと同い年ですわ」
「えぇ!!??」
「ユーキとアスカが虹色カード所持になった時、わたくしたちパーティ全員も虹色カード所持を許可されましたの。でも、わたくしはそれを断わりまして、この村でのんびりと薬師をやりたいと願い出ましたの。そしたら、女神さまが一つだけ願いを叶えてくださるって仰ったので、わたくしの中に流れる【時】を止めてくださるようにお願いしましたの」
「【時】を止める?」
「永遠の命を得る事ですわ。ユーキとアスカのその後も見守りたかったですし、2人が亡くなった後もこの村を見守るために永遠の命をいただきましたの。わたくしが【時】を止めていただいたのが、30ちょっと手前でしたので、その時のままですのよ」
そ…そんなことが可能なんですね…。
この村はなんでもありだ!
ん? 祖父ちゃんの仲間だったってことは、先代国王も仲間ってこと!?
ミカエルがそんな事言っていた気がする。
「ミントさんは王宮に仕える魔術師だったんですよ」
「魔術師?」
「表向きは魔術師ですわ。本当は錬金術師。わたくしが作る薬や回復魔法、攻撃魔法などが、他国で人気のある魔術師とそっくりという事だけで、王宮魔術師という位を与えられていましたの。毎日退屈でしたわ。決められた部屋で決められた量の薬を作り、決められた書類にサインする。そんな毎日を送っていましたの。そんな時、ドラゴン族が街を襲っているっていう報告が王宮に届けられまして、その討伐並びに鎮圧に向かったのがユーキたちのパーティですの。その時はユーキとアスカ、エリオのお父さんのみのパーティだったんですが、当時の国王様…というよりも後継者争いをしていた第三妃様が、ご自分の息子さんを仲間に入れて、その監視役としてわたくしも同行することになりましたのよ」
「その息子さんっていうのが、先代国王様?」
「ええ。当時の国王様もドラゴン退治が達成できれば王位を譲るって仰っていたものだから、第三妃様が大いに張り切っていました。そして、何故かわたくしが王子の婚約者に選ばれてしまいましたわ」
「婚約者!?」
「わたくしは恋愛に興味はなかったので、一応形だけっていうことで引き受けましたけど、第三妃様がしつこくてね。結婚式の日取りまで決めてしまいましたのよ」
「結婚はしなかったんですか?」
「当たり前ですわ! いくら幼馴染みでも、わたくしは王子の事なんて何とも思っていませんでしたもの! 王子は王子でわたくしの親友に恋してましたし、2人をくっつけるために色々とやりましたの。特に結婚式当日の第三妃様のあの悔しそうなお顔は今でも忘れられませんわ!」
突然高笑いをするミントさん。
きっと、俺を想像する以上の事をやらかしたんだろうね~。
「何をやらかしたんですか!?」
いつの間にかアンナが俺の隣に座って、リーフにクッキーを与えていた。
本当にいつの間に!?
「結婚式当日、わたくしと親友を入れ替えて式を挙げましたのよ。王宮には色々と儀式があったんですが、ユーキたちが討伐だ、なんだかんだで王子も駆り出されていたので、略式で行われましたの。でも結婚式は派手にやりたい!っていう第三妃様の願いで、式の事はすべて第三妃様が仕切っていたので、これはチャンスと思い、式当日に親友と入れ替わる事を思いつきましたの。衣装はわたくしの家に使える仕立て屋に頼みましたので、入れ替わりはスムーズにできましたわ」
「それで? それで?」
アンナが凄い興味深々だよ。
「結婚式では、女神の前で宣誓するんですが、一番最後まで花嫁のベールは顔を隠したままなんですの。それで、婚姻誓約書の署名も終わり、王子の妃になる方に捧げられるティアラの贈呈も終わり、花嫁のお披露目って時に、ベールの向こうから現れたのは、わたくしではなく、親友の顔。それを見た途端、第三妃はそれはそれはとても大きな悲鳴を上げましたの。これは無効だ、今すぐやり直せ!って喚いていましたけど、署名は親友の名前、ティアラは親友の頭の上、しかも女神さまも認めてしまいましたので、無効にはできませんでしたの。あの時の悔しそうな第三妃様の顔、本当に最高でしたわ!」
「よく王室が怒らなかったね」
「それは大丈夫ですわ。第三妃様は王子の事など眼中になかったんですもの。本当はもう1人の息子を王位に就かせたかったんですの。その為には上の王子が邪魔。じゃあ、ドラゴン退治に行かせて、その場で命を落とすようなことがあれば、下の王子に継承権が転がり込んでくるんじゃないの?なんて思っていたらしく、溺愛する下の息子を王位に就かせるためにユーキに預けたんですの。でも予想を反して王子は大活躍。もちろん女神さまから虹色カード所持の許可も得ていましたのよ」
「さぞ悔しかったでしょうね」
「ええ! ええ! 結局、上の王子が国王に就き、第三妃様は実の母親なのに王宮を追放されてしまいましたの」
「なんで!?」
「実は第三妃様、王子の父君が敵対する国の宰相と不倫関係にあったんですの! それを掴んだのはわたくし。国王に就かれた王子にこっそり教えてあげましたの。もちろん敵対する国はユーキに頼んで成敗してもらいましたわ。今ではこの国の領地になっているはずですわ」
笑顔で話すミントさん。
アンナもエリオも楽しそうに聞いているけど、これって、本当に笑い話でいいの?
だいぶ前の話だから、当事者たちはいないと思うんだけど、時の流れって怖い……。
「でも、よくそんな事思いつきましたね」
「わたくし1人の考えでは実行できませんわ。最高の協力者がいましたの!」
「誰ですか!?」
「もちろん、アスカに決まっていますわ!」
祖母ちゃん!! 王宮で何をやっているんですか!!!
一歩間違えれば祖母ちゃんが捕まるじゃないか!!
この日はミントさんの昔話で盛り上がった。
ミントさんを初めて見た時、内面から上品さが滲み出ていると思ったけど、王宮で暮らしており、更に王室に近い侯爵家の令嬢だったと話す。生まれ持った気品ってやつか。
ただ、侯爵令嬢である事、王宮に閉じ込められている事(当時の女神候補だったんだって)に嫌気が指し、自分の好きな事をやりたい為に、王宮を追放されるような事をやり続けたのは、そこら辺の女の子と変わらないよね。
ミントさんの昔話、物語にして販売したら売れそうなんだけど…。
<つづく>
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる