オメガ転生。

文字の大きさ
上 下
31 / 302
学園生活

学園祭準備(雅貴)

しおりを挟む

「私でしょうか?」
「そうだ、君だ。もし良ければ学園の中を案内してくれないか?学園長もお忙しいようだし…かまいませんよね?」

そう言って、学園長に振り返った。
実際今の時期は忙しいのだから、許可がでるだろう。
生徒としての彼も忙しいだろうが、今日の目的を達成したいし、彼との時間が欲しい…

結果、学園長も、この後の予定があると言って、彼に『そうしてくれるとありがたい』と言って、案内役の依頼の許可が降りた。
ダメだと言っても、そこは上手く言いくるめるつもりだったんだが…

密かにフェロモンを漂わせ、愛しい者が反応しないかと期待した。
あの時抱きしめた時に嗅いだ彼の香りや、皮膚の感触など

愛しい者も、何か思い出したり、感じる者があるのか、ソワソワしたり、頬が紅潮し、時に可愛らしい笑顔がのぞけて、それだけでも幸せを感じた。
1人百面相をしている彼を見るのも楽しい。
コロコロと変わる表情が愛おしくてたまらない…
それはさておき…

「君の名前は?私は御堂筋 雅貴(みどうすじ まさたか)だ。雅貴と呼んでくれていい」
「僕…いや、私はは暁 翔(あかつき しょう)と言います。御堂筋様。目上の方を呼び捨てとか出来ません。」
「そうなのか?残念だ。でも、私は君を翔と気安く呼びたいのだが?では、雅貴さんで呼んでくれ。かしこまる必要もない」

妖の、アルファであるが、愛おしいものには気さくに名前を呼んでもらいたい。
この国では重要なポストについているが、これとそれとは別だ。
今の最重要問題は、彼に対してだ。

だから、何とか良い雰囲気を醸し出したくて頑張った。

彼なりの大きな苦悩があるのだろう。大きなため息をついている。
まぁ、わからないでもないが、何故か悲しい…
無理もないよね。番の態度で一喜一憂してしまうものだ…
悪くないよね……

初めは彼に誘われるままついて行ったが、いつも学園内で彼が使っている場所や道順などを案内するよう頼んだ。何で??と思われたようだが、その方がいつも使っているから案内しやすいだろ?と言ってみた。
実際はそれも理由の一つだが、あの場所を彼だけに伝えたかったんだ…


「ところで、翔はこの学園で特に何に対して学んでいるんだ?どんな学科が好きなんです?」
「魔力に対しての勉強は好きですよ。かと言って、炎や雷などの攻撃魔法が使えるわけではないのですが。後は、交易を学ぶのも好きですね。」
「武術とかも習得するのではないのですか?この学園卒業の騎士達はかなり優秀な逸材が多い者ですから」
「確かに習うのですが、筋肉が付きにくく、力も他の友人達に比べて…まぁ、力負けしてしまいますね」
「その時は、相手の力を利用して受け流せばいい。剣術や体術でも意外と使えるよ。私がよくやっていた」

相手を信用させるなら、まずは自分の事を伝えておいた方が良いだろう。
そんな感じで、過去の自分話しや、学園の事、そして彼も自分で許す限り話をしてくれた。
彼の話は報告通りだが、何か気になる事もあった。
何か隠しているような…
それはいずれ吐露してもらおう…

「翔、そう言えば、ちょっとこっちに行ってみよう」

目的地近くで、例の場所に行くため横道にそれた。
案内役をやってるのに、置いてかれる…と思ってか、慌ててついてきている。
まぁ、彼の足音や気配で確認しながら歩いてるのだが、秘密の場所なだけに、他の学生達に知られたくなく、ついつい早足になってしまった。ごめんね。

しばらくしてすぐに目的地についた。
木々に埋もれて鬱蒼としている空間ではないが、生垣や学園の建物の関係で他所から見えにくい場所だ。

「昔、この学園に通っていてね、この場所で昼寝をしていたんだよ。人目につきにくいから一人でゆっくりしたい時にはちょうど良かったんだ」
「こんな場所、知らなかった」
「ふふっ、知っている人はあまりいないと思うよ。何せ…いや、いい」

その空間にはベンチもある。
石のベンチだから、木製のベンチのように風化する事もない。
そして、ジメジメもしてないし、場所的にも本当に良い場所なんだ。
彼がヒートを起こした時、この場所に来ても欲しい。
建物の屋根があるから、多少の雨も防げるだろう?


そんな事を考えて彼を見つめた。
案内中なのに、彼自身もその空間を眺めて自分のことばかり考えてしまったと思ったのか、少し戸惑っていた。
そんな彼も愛おしく、可愛らしく感じた。
もう、浮かれているな…

「次に行こうか。実は他にもとっておきの場所があるんだ」

そう言って、次の場所を案内した。
彼は慌てて私を追いかける事になった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

パスコリの庭

BL / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:27

十年目の恋情

BL / 完結 24h.ポイント:340pt お気に入り:42

ポイズンしか使えない俺が単身魔族の国に乗り込む話

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:8

アンバー・カレッジ奇譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:0

恋と鍵とFLAYVOR

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:291pt お気に入り:7

ラグナロク・ノア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:305pt お気に入り:3

妖精のいたずら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,350pt お気に入り:393

処理中です...