もふもふの世界に落っこちて、気がついたら離してくれなくなった件

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手放せない

家族(ガナード)

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アイリがこの世界、僕たちの元にやって来て、毎日が楽しくて仕方がない。
双子のクロードはいつも「俺」「俺たち」とか言ってたけど、アイリが来てからは怖がらせたくないとかで、「私」「僕たち」とか言っている。
まぁ、職場では「俺」とか言ってるんだけどね。

お互い持ち場は違えど騎士として、皇族として生きてきた。
騎士として仕事をするのは性に合っているが、皇族の一員として、貴族社会で生きていくのはうんざりする事が多い。
全てのものがそうではないが、媚びへつらい近寄ってくるものが多い。
自分を過剰評価し、触手を伸ばすように近づいてくる令嬢もおり、いかに回避するかで、精神が疲弊する。

そんな時に現れた運命の番い。
まさか「渡り人」がそうであるとは、今まで考えも及ばなかったが…

甘い香りに包まれ癒される。
「またたび」のような興奮状態にも陥るが、そこは我慢した。
クロードも同じ感じのようだ。
双子だからか?

「番い」に対しての独占欲は、獣人ではほぼ当たり前だ。
何故ほぼなのか…それは、全ての獣人が「番い」であるからと、すぐにお互いが好意を持つとは限らないからだ。
「捕食」と「非捕食者」のような関係なら、逃げようともする。
逃がさないが…

ただ、「渡り人」に関しては、それに関係せず欲しがる事が多かった。
だから、過去に色んな事が起こり、その中には悲劇的な事もあったと記されている。
よって、国をあげての保護対象となるのだが…

アイリは、僕たちのものだ。誰にも渡さないし、奪われるはしない!
そして、逃しもしない!!

思わず舌舐めずりをしてしまうが、アイリには見せられないな…

そんな愛しいものを奪おうとする馬鹿なものがやはりいた。
何処の国にもクズはいる。
あえて囮として泳がしているものもいるが、今回の者は潰させてもらった。
徹底的に!!
あえて、見せ付けるように暴いて潰した。

これで安心と思いきや、アイリ自身が逃げようとして、捕らえて、ほぼ強引に推し進めた感はあるが妻とした。
どんな手を使っても、愛しい者を逃がすわけにはいかない。必ず手に入れる。
そう決めていたしな…

そして、今に至る。
いきなりの陣痛には驚いたが、医師や産婆の手配は以前からしていたし、全ての準備は屋敷のもの達と準備は整えていたから安心していたのだが……

別室に追いやられ、ただひたすら堪える。
自身に対しての肉体的・精神的な物には耐えられるが、アイリが苦しんでいると思えば、代われるものなら代わってやりたい。側に行きたい。抱きしめてやりたい……

「旦那様方、落ち着いてください。そんな今にも死にそうな表情や、威嚇するような表情では…」

室内をぐるぐる回っては椅子に腰掛け、ドアを無理やり開けて駆けつけようとして止められて…

「大丈夫ですよ。女は強いんです。それに、アルメル医師と産婆のアマンダが付いてるんですから」

この国一番と言って良いほどの腕利きの2人がついているんだ。
そうだ、大丈夫…


「もう少しですよ。頑張って。」
「う~~~ひぃ~~ん~~」
「赤ちゃんも頑張ってますからね!」
「ん~~~あぁ~~」
「頭が見えてきましたよ!はい、息吸って!いきんで!!」
「ん~~~~~、!!」

部屋は離れているが、獣人である自分達は耳が良い。
聞こえてくるアイリの……

2人して椅子から立ち上がる。
もう、我慢できない!!

「ふぅ~ふぇ~ふぎゃ~!!」

う…産まれた…

思わず膝から崩れそうになった。
クロードも同じ様だ…

「はい、元気な男の子だよ!もうひと頑張り!!」
「ん~~~!!」

アイリ……

「ん~~~~~~!!」
「「オギャー」」
「はははっ、お兄ちゃんと産声が重なってるよ。元気な女の子だ!おめでとう!」



「「よかった…」」

2人で立ち上がる。もう行っても良いだろうか…

「旦那様方、おめでとうございます。もう少しだけ我慢してください。」

そう言って、ドアを遮られた。
まだダメなのか?

「まだダメですよ。呼びに来てからです。お気持ちはわかりますが、もうしばしご辛抱を」


執事のセバスチャンに止められた。
元諜報部員でかなり有名人だったこの男には敵わない。幼少時からの付き合いもあるから…

「今から綺麗にしてあげないとね。」と言う会話が聞こえた。
そうだな。もう少し待とう。もう少しだけ…

しばらくして呼ばれてかけて行った。
愛しい妻を2人で抱きしめて、抱擁する。
頬に涙が伝い、情けない声が出たが、それだけ心配だったんだ。

「アイリ。大丈夫か?苦しく無いか?」
「アイリ、何処も痛みとか無いですか?」

2人の子を産んだのだから、それなりのものはあるだろう。少し疲れ切っているようだが、幸せそうに微笑んで見つめてくれる。
掠れてしまlったら声も、何とも言えなかった。

「「ありがとう!!」」

そう言いながら、顔中に唇を寄せた。
勿論、苦しませないように2人で抱き込んだ。
幸せだ~~

「旦那様。お子様を抱いて差し上げてください。可愛らしい坊っちゃまとお嬢様ですよ」

そう言って、弱々しく、小さな生き物を渡される。
何ともおぼつかない動作で受け取る我が子。

綺麗に産着を着せられ、おくるみに包まれたアイリとの我が子を抱きしめた。
壊物を扱うが如く、ビクビクしてしまうのは、許して欲しい…

「可愛い。この髪は僕たちか?瞳は…」

黒髪と白銀に豹である証の耳。そして尻尾が感じられる。そして、閉じられていた瞼が開き、僕たちと目があう。
獣人の赤子は、半獣の姿で産まれる。そして、ある一定の年齢で半獣の姿から、人型へと変わる。獣の姿はそれ以前に変われるが…いわゆる第一成長、第二成長という感じだ。

そうそう、渡り人の世界では、産まれたての赤子は直ぐに瞳を開けないと言っていた気がするが、獣人の子はそんな事はない。獣人の種類にも多少誤差はあるが…

綺麗な黒曜石のような瞳。アイリと同じ…
渡り人との子供は獣目でない事もあるらしい。
ただ、能力は獣人と同じらしく、理由はわからないとされていた。

「「アイリの瞳だ。綺麗だ。」」

我が子の頬にキスをする。

「産まれてきてくれてありがとう。アレクシス」
「これからは、家族だフレイヤ。一緒に幸せになろうな」

子供の名前はいくつか決めていた。
男の子なら…女の子ならと…
だが、一目見て、この名前だと決めた。

2人でお互い抱いた子に名を与えようとも決めていた。
それは、アイリの了承を得ている。
案を決める時は、勿論アイリにも伝えていたしな…

黒髪の男の子と白銀の女の子。
アレクシスとフレイヤ。
新しい家族。護るべき者。
そして、アイリには絶対に言わないが、繋ぎ止めるための枷……

これで、アイリは逃げられない。
家族と言う檻の中に閉じ込めた。

絶対に言わないがな……



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