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13章 十三日目 いろんな趣味
13-4 ほぼいつもどおりだったけど触れちゃいけない話もあったお昼
しおりを挟む昼。
俺たちはいつものように、机を動かして島を作り、お弁当を広げていた。
そして繰り広げられていたどうでもいいトークの内容は、昨日見た夢だった。
「っていう夢を見たの。どう思う?」
「どうって言われてもなあ」
咲のかなり謎な内容の夢の話を聞かされながら、俺は春巻きをモグモグと咀嚼する。
お弁当に入れられていた春巻きは、さすがに揚げたてのようにパリパリとはいかない。
パリパリとはいかないが、そこは咲。シナシナになってしまっていてもちゃんと美味い。
たけのこ、もやし、肉、よくわからないフニャフニャしたもの。
たっぷりとした旨味が、口の中いっぱいに広がっている。
「そういうのは、俺よりも友美に聞くべきじゃないか?」
「え?」
麗美がポカンとした顔で俺を見た。
そういえば、麗美が転入してきてから友美の名前を出したのははじめてだった気がする。
「そういえば麗美にはまだ紹介してなかったっけ。っていうか友美、今日来てるのか?」
椅子に座ったまま、俺は振り向く。
俺たちの島とは別の島。
教室の前方の方で固まっている女子ばかりのグループに友美の姿を見つけた。
「おーい友美! 咲が夢占いして欲しいってよー」
メガネの女子が俺の声に反応する。
ザワザワと友美のいたグループの女子がざわめき立ち、俺の方を見ながら何かを耳打ちしあっている。
(あー、またなんか言ってる。なんだろう、あのグループちょっと苦手なんだよな)
なぜか女子たちは、俺と砂川を交互に見るようにしている。
受けとか攻めとかリバとかよくわからない単語が聞こえてくるが、深く突っ込むのはやめておく。
それは、覗いてはいけない深淵のような気がするからだ。
「あ、友美さんって空五倍子(うつふし)さんのことだったんですね」
近づいてきた友美を見て、麗美が小さく頷いている。
「あれ、知り合いだったか」
「ぐふふ。麗美はクラス全員と知り合い。転入してきた初日に、ちゃんとみんなに挨拶して回ってた」
「はー、律儀だな」
「挨拶は重要ですから」
「クラスメイトの顔さえちゃんと覚えてない悦郎とは違うね」
「うっせ」
「ぐふふ~」
などと意味のありそうでまったくないやりとりを俺たちがしている間に、友美は咲から夢の話を聞いていた。
俺と咲、緑青と小さいころから知り合いな友美。
幼なじみといえば幼なじみなのだが、咲たちとはちょっと付き合い方が違っていた。
幼なじみというよりも、古馴染みと言ったほうがいいのかもしれない。
「それは抑圧された性衝動のあらわれね」
「え?」
クイッとメガネの位置を直しながら、友美がそう宣言する。
言われた方の咲は、呆気にとられていた。
「夢の中に出てきた人参も大根も、男性器の象徴よ。それらを使った料理がどうしても完成しないというのは、あなたがそれらに対して一歩踏み込めないでいるということを表している」
「え、えーっと……」
そのあともツラツラと自分の分析を述べ続けている友美。
そういえばこういう奴だった。
夢に関していろいろ調べているとか言うから夢の話をしてやると、結局は全部性的衝動のあらわれとか言い出し始めるんだった。
すまん咲。
すっかり忘れてた。
そういえばこのことが原因で、中学のときに咲と友美は大喧嘩したっけ。
もし今回もそんなことになったりしたら俺うまく仲裁できるだろうか。
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