黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

文字の大きさ
117 / 171
13章 十三日目 いろんな趣味

13-9 いつもっぽくごまかせなかった夜

しおりを挟む

「あー、ねー」

就寝前、いつものように咲と通話アプリでダラダラと雑談をしていた。

「そういえば、帰りに駅前のコンビニで若竹さんと会ったよ」
「お、地方回りから帰ってきてたのか」
「地方回り?」

そういえば咲は若竹たちがなんで遠征してたのか知らなかったっけ。
俺は出発前に若竹たちと会って話したことを咲に伝えた。

「ふーん、地方でライブしてたのか。大変だね」
「まあな。でも、メディアに乗らない以上自分たちで行くしかないからな。そこはしゃーない」
「ふふっ。でも旅行みたいでちょっと楽しそうだよね」
「それはあるかもな」
「今度オカルト研究部でも合宿する? たとえば、オカルト研らしく地方のパワースポット巡りとか」
「いちおう洋子先輩に言っとく。たぶん、忘れるだろうけど」
「あはは~」

そしてコロコロと話題が変わる。

「そういえばさ、夜ご飯のときカレーの話ししてて思い出したんだけど、カレーの種類ってホントいっぱいあるよね」
「カレーの種類? ルーのメーカーとかか?」
「違う違う。カレーを使った料理ってこと。ほら、今日はドライカレーだったじゃない? あんな感じの、よくあるカレーライス以外のカレー料理」
「ああ。そういうことな」
「寝る前とかけっこう想像しづらいし、今日ドライカレー食べたばっかりで難しいかもしれないけど、そういうカレーライス以外なら何食べたい?」
「そうだなあ……」

俺は思いつくものをそのまま咲に伝える。

「カレーうどんとか」
「あー、美味しいよねカレーうどん」
「カレーそばとか」
「うんうん。いいよね、お蕎麦屋さんのカレーって」
「カレー南蛮」
「なんかさー、全部お蕎麦屋さんのカレーじゃない?」
「っていうか、カレー料理って他なにがあるのさ」
「え? うーん……言われてみれば。カレーまんとか?」
「それ料理に入れていいのか?」
「ちょっと違う気もする」
「だろ?」
「あれ……もしかして意外と少ないのかも」
「味付け的にカレーを使うのはあるけど、カレーメインだとそんくらいなんじゃね?」
「かもねー」

そろそろカレーの話しは終わりかと思ったそのとき。

「あっ、一個思い出した」
「なんだよ」
「焼きカレー!」
「それもカレーライスの一種じゃねーか?」
「あー、それもそっか。じゃあライスカレー」
「ひっくり返しただけじゃねーか」
「あははー」

そんな感じで今日もいつもどおりに夜は更けていった。

「ってちょっと待って」
「なんだ?」
「いまいい感じに締めようとしたでしょ。バレてるんだから」
「ちっ」
「ほらほら、今日も腕立てする」
「わかったよ」

うまくごまかせたかと思ったがそうはいかなかった。
そして今日は昨日よりも、咲の掛け声がさらにゆっくりになったような気がした。
そのペースでの腕立ては10回が限界だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...