黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

文字の大きさ
126 / 171
14章 十四日目 走ったり揉んだり

14-9 結局いつもどおりな夜

しおりを挟む

「なんかちーちゃんに聞いたら、あの子毎日あそこで姫探ししてるんだって」
「へー、にしては今まで遭遇しなかったな」

就寝前、俺と咲はいつものように通話アプリでどうでもいいような話をしていた。
そして今日の主な話題は、あのアトランティスの騎士。
まあ俺たちの間にあれだけのインパクトを残したのだから、当然といえば当然だろう。

「今日はいつもよりちょっとだけ早かったからかな」
「もしくは、別の人に引っかかってるところを運良くすり抜けられてたか、だな」
「あはは~」

そもそもあいつがどういう目的であんなことをしているのかがまったくわからなかった。
あいつの理屈では守るべき姫を探しているらしいが、そもそもその姫とやらの存在自体があいつの思い込みでしかない。
いや、もしかしたらなんかそういう生まれ変わりとか転生とかのよくわからないシステムが本当は世界に存在しているのかもしれないけど、とりあえずのところはそういうのはないことになっている。

「で、どっちなんだろうな。あいつが今日ロックオンしたのは」
「ん?」
「咲か麗美か、だよ。ほら、俺たちに向かって姫ーって言ってただろ?」
「あー、あれね。たぶん私でも麗美ちゃんでもないよ」
「は?」

咲の言っている意味がこれっぽっちもわからなかった。
咲でも麗美でもない?
ってことは……緑青か?

「っていうかさ、最近はああいうの流行ってるみたいね」
「え?」
「ほら、転生モノって流行ってるんでしょ? アニメとかラノベとかで」
「いやあ……あの転生は違うと思うぞ? あいつの言ってる転生は、もっとずーっと大昔に流行ったやつだ」
「そうなの?」
「俺もそんな詳しくはないからなんとも言えないけどさ、最近流行ってるのは異世界に生まれ変わったりしちゃうやつだろ? 前世がアトランティスの騎士とかそういうのは、ちょっとジャンル違いな気がするぞ」
「うーん、言われてみれば確かに」

もしかしたらまた絡まれるのだろうか、などと考えつつ俺は咲とどうでもいいような話を延々と繰り広げていた。

「さて、そろそろはじめようか」

咲が話題を切り替える。
なんのことかと思ったが、すぐにそれが筋トレのことだと気づく程度には俺は条件付けされはじめていた。

「腕立てと腹筋、どっちが先がいい?」
「は? 腹筋?」
「そう。腹筋。やっぱり、お腹は大事だよね」
「そりゃまあ、そうかもしれないけど……」
「コアマッスルっていうのも鍛えないといけないんだって。すずめちゃんが言ってた」

どこかで聞きかじった知識を咲が披露してくる。
俺的にはどうでもよかったが、とりあえずいつもの感じで腕立てのポジションを決めた。

「まずは腕立てから頼む」
「はーい。それじゃあカウント行くよー」
「おーう」
「いーち」
「ふんっ」
「にー」
「ふんっ」
「さーん」
「ふんっ」
「しー」
「ふんっ」

    *    *    *

そんなこんなで、いつものように俺たちの夜は更けていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

処理中です...