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16章 十六日目 テスト勉強
16-2 いつもとは違う乗り物
しおりを挟む「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ」
俺の走る速度に合わせて、景色が後方に流れていく。
そんな景色の中に、唯一後ろに流れていかないものがある。
それは……。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
俺と同じペースで走る咲だ。
「ふぁいとー、ふたりともがんばれー」
後ろからは緑青が自転車でついてくる。
駅を挟んで逆方向の商店街に自宅がある緑青。
わざわざ俺たちのランニングに付き合うために自転車でうちまで来てくれたのだ。
そして俺と咲の荷物は、その緑青の自転車のカゴに乗っている。
「それにしても咲。ジャージで出てきちまって大丈夫だったのか? 駅のトイレで着替えたりするのか?」
走りながら咲に尋ねる。
「ううん。このまま学校まで行くよ」
「へ?」
「で、部室で着替える。あと、シャワー使えることになってるからちゃんと汗流してね」
「それってどういう……」
「ぐふふ。実はこれ、オカルト研究部の朝練ってことになってる」
「はあ?」
知らない間にいつの間にか俺の朝トレが部活単位での朝練になっていた。
「だからジャージで登校しても怒られないの。登校っていうより、朝練だから」
ルールの穴をついたというよりも、うちの学校の決まりがガバガバなだけな気がする。
まあ、それで問題がないのならいいんだけど。
「っていうか朝練なら、緑青は走らないのか?」
「私はこれ。自転車役。これもこれで大変」
「そうか。まあ、荷物持ってくれるのはありがたいか」
「うむ」
走りながらいつもの駅をスルーする。
うちの最寄り駅から学校前までは二駅。
確かに走れなくもないが、さすがにちょっと厳しい気もする。
そして予想通り……。
「はあ、はあ、はあ。やっぱ電車は乗ろう」
「そうだね。ちょっと汗すごいけど、タオルで拭いてここからは電車いさせてもらおう」
「え……」
そうすると割りを食うのは緑青。
「よし、じゃあ悦郎が自転車ね」
「は?」
「荷物は私と咲で持っていくから。安心して」
「お、おい」
俺に自転車を押し付け、咲とともにいつもの駅の隣の駅の改札へと消えていく緑青。
俺はその後姿を呆然と見送り、まあ走るよりはいいかと自転車にまたがった。
「あいたっ!」
ゴスンと、大事な部分を打ってしまう。
「いててて……サドルの高さが低すぎた。そりゃそうか。さっきまで緑青が乗ってたんだからな」
痛みに耐えながら、俺は学校まで自転車を漕いだ。
意外なことに、電車組の咲たちよりも俺の方が早く学校に着くことができた。
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