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17章 十七日目 期末テスト
17-1 いつもだけどいつもと違う朝
しおりを挟むいつものように朝は……来なかった。
いや。
来たには来たけれども、それはいつもとはちょっと違っていた。
主に、目覚める場所が。
「あー、背中痛い」
机に突っ伏したまま寝落ちしていた俺は、うーんと唸りながら身体を伸ばす。
ボキボキといろいろな部分が音を立てて、縮こまった関節が伸びていく。
といっても実際に伸びるわけではない。
感覚的に、伸びているような気がしているだけだ。
などと無駄なことばかり考えているのは、俺の意識があることから目をそらそうとしているから。
それは何か。
それはつまり……。
「コンコンコン。起きてるー? 起きてるよねたぶん。テストの日だよー。顔洗ってご飯食べて、学校いこー」
部屋の扉の向こうから、咲の声が聞こえてきた。
昨夜は俺が寝落ちする時間まで、咲も起きて勉強をしていた。
あいつはあのあともしっかりテスト対策をしたのだろう。
それはいつもの成績の違いからも明らかだ。
ほぼ同じような時間を過ごしているというのに、俺と咲のテストの結果は段違い。
いったいなぜだと思ったりもするが、実のところその理由ははっきりとわかっていたりもする。
それは普段の勉強習慣もそうだが、一番違うのは授業中の聞く姿勢だ。
俺はぼーっと気もそぞろな状態で先生の話を聞いていることが多いが、あいつは違う。
俺の何倍もの集中力で、しっかりと先生の話を聞いている。
それこそ、あとで俺が咲に質問したりすれば、一言一句間違わずに答えてくれたりするくらいだ。
まあその割には、それが成績に結びついていない部分もあったりするのだが。
「コンコンコン。ねえってばー。起きてるのー? もしかしてまだ寝てたりするー」
扉の向こうの咲が焦れてきた。
そういえばまだ返事をしていなかった。
「おー。起きてるぞー。机で寝てたけどなー」
「あははー。そっかそっか。やっぱり寝落ちしてたか。途中から返事がなくなってたから変だなーって思ってたんだよねー」
俺は机の上を片付け、使っていたノートと教科書をカバンの中に入れた。
「じゃあ着替えて降りてきてね。朝ごはんの支度、もうできてるから」
「おー」
とんとんとんとんと咲が階段を降りていく。
俺は寝汗を吸ってじっとりと重くなったTシャツを脱ぎ、タンスから新しいTシャツを取り出してそれを身に着けた。
「シャワー浴びる時間は……ないか」
朝のこの時間は美沙さんたちもいてうちの浴室は渋滞している。
寮の方もフル回転してこの状態だから、正直ちょっとキャパオーバーなんじゃないかとも思っている。
まあ、その辺を考えなきゃいけないのはかーちゃんなんだけどな。
俺は今の状況でどうしたら自分が快適に過ごせるかを考えるだけだ。
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