黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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18章 十八日目

18-2 すっかりいつもになりつつある朝練

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「ファイト~、ファイト~」
「はっ、はっ、はっ、はっ」

どこか間の抜けた緑青の掛け声に合わせながら、俺と咲が学校に向かって走る。
走りながら俺は緑青に手を出し、ペットボトルを渡してもらう。
キャップを外して咲に渡す。
咲がそれに口をつけ、ぬるめの液体で喉を潤す。
半分も飲まないうちに、咲がペットボトルを俺に戻してきた。
俺はそれを頭から浴び、滴り落ちてきた液体を舐め取って水分を補給した。

「あーあ。頭びちゃびちゃ」
「どうせすぐに乾く」
「そうだけどさー」

空になったペットボトルを緑青に渡し、しゃべりながら咲と併走する。
試験期間中はちょっと忘れていたが、そういえば部の活動に朝練が追加されていたんだった。
最初は鈴木さんに腕相撲で負けてはじまった俺のトレーニングだったけれども、最近ではその最初の動機すら忘れがちだった。

「っていうか最近鈴木さん見ないな」
「すずめちゃん? 向こうも定期試験で忙しいんだって」
「テストの間は出入り禁止って言われたみたい」
「そうか」

うちに出入りしている子のことなのに、なぜか俺は知らない。
そしてうちに住んでいない咲や緑青は知っている。
まあ、割りといつものことなので気にしてはいないが、俺はもう少し自分の身の回りのことに気を配った方がいいような気がした。
なにしろ、家族のスケジュールすら把握してないし。

「はい一駅走破~。ここからは速歩き~」

オカルト研究部の朝練のメニューは少しずつ変化していた。
最初は俺一人だけが走って咲が自転車でついてきたりしていたが、今は俺と咲が走って緑青が自転車でついてくるスタイルになった。
そして距離も駅までだったものが、学校までと延長された。
だが、その距離はさすがにいきなりは無理だった。
途中で電車に乗り換えることが何回かあり、そこから少しずつ変化して今では途中でウォーキングを挟むことによって全距離踏破することが可能となった。

「っていうかこれ、下手な運動部よりちゃんとした朝練してないか?」
「あはは~。あんまり活動してないとこだと、朝はやってなかったりもするもんね」
「でもおかげでシャワー室の使用許可出てる。うちは一応文化部なのに」
「それもそうか」

勢いよく腕を振りながら、いつもの倍ほどのスピードでノシノシと歩く。
最初は大股での歩き方がどうにもコツがつかめず、変なところに力が入って次の日腰に来たりもしたが、いまではだいぶスムーズに足が出るようになった。
筋肉痛とかにならないから負荷が足りなくなったのかしらとかも思ったけれども、どうやら美沙さんによるとそういうことでもないらしい。
まあ、それでもドバドバ汗が出たりして身体にはかなり負担がかかってそうな感じはするけどな。

「あ、水が切れそう。ちょっと先に行って補給しておく」
「わかった」
「とりあえずこれ1本ずつ渡しておく」

緑青は俺にペットボトルを2本渡すと、きっちとペダルを回して自転車の速度をぐんぐん増していった。

「咲、ほら」
「はーい」

俺はペットボトルを咲に渡す。
両手で持っていたほうがバランスがいいような気もするが、それはそれこれはこれ。
喉が乾いたと思ったときにはもう遅いって話もあるし、真夏の運動時には水分補給はスピードが命だ。
俺が2本持っているよりも、咲と1本ずつ持っていた方がよっぽどいいだろう。

そうして俺たちはジョギングとウォーキングを何度か繰り返し、汗まみれになりながら学校へと到着した。
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