1 / 48
第0章
第1話:前世の旅【前編】
しおりを挟む
久々に帰省した実家を見て俺は大きくため息をついた。誰もいない家は何年もホコリをかぶっていた。
そんな家をゆっくりと進み家の隅の方にある座布団に座る。
しばらく茫然と写真を眺めてから――チーーン。
心地良いようで暗い音が響く。
幼い時に事故で両親を亡くし、ばあちゃんに育て上げられた俺は立派な社会人となり、大手企業に就職をして沢山働いて、ばあちゃんと共に過ごしてきた。
幸いにも俺の会社はホワイト企業だったので仕事に不満はなく、人生ではいつまでたっても彼女が出来なかった事くらいが不満だった。
そんな俺に悲劇が訪れたのは5年前。
ここまで俺を立派に育て上げてくれたばあちゃんが心不全で死んでしまった。
突然の事だった。いつものように家に帰ってきたら台所でばあちゃんが倒れていた。その時は息が有ったものの救急車で病院に運ばれた時には息をしていなかった。
本当に辛かった。葬式を開いた。沢山の親戚の人やばあちゃんと仲が良かった人たちが足を運んでくれた。
だが、葬式も火葬もあっという間に終わってしまい残っていたのは、ばあちゃんの写真と遺骨のみだった。
苦しくて悲しくて辛くて、俺はその夜、遺骨ばあちゃんを抱いて大泣きした。
会社からは一週間の有休をくれた。精神的に不安定だった俺を気遣ってくれたのだろう。
だがその一週間のうち三日は争いだった。
ばあちゃんの財産の取り合いだった。ばあちゃんが残した財産は3億を超えていた。ばあちゃんがなぜそこまでのお金があったのか理解はできなかった。
それどころでなく、その3億を誰が受け取るか、が問題だった。親戚同士でばあちゃんの財産を取り合った。
いや、親戚同士金に釣られ溺れようと互いを潰し合った。
そんな中、弁護士がやってきたのだ。
最初は誰が呼んだのか分からなかった。尋ねたところばあちゃんの担当弁護をしている人だそうだ。
その人の鞄から「遺書」と書かれた紙を取り出した。裏にはばあちゃんの物である指印と判子、が押されてあった。
その遺書には、俺がその3億を受け取ることが記されていた。
当時の俺はばあちゃんが死んでしまったショックで財産何てどうでもよかった。
だが、突然目の前にばあちゃんが残した3億が現れたのだ。
当然親戚らは不満を持ち、裁判を開くもばあちゃんが記した遺書は絶対覆ることはなく、3億はあっけに俺の物へとなった。
そして、ばあちゃんの遺品の掃除に四日かけてその一週間を過ごした。
それから俺は、会社で優秀な功績を残し昇格した。給料も増え財布の中はお札で埋まっていた。
だけど心に空いた穴が埋まることはなかった。そして金目当てに近づく女ばかりで俺の人生は暗いものだった。
大きくため息をつきながら暗い夜道を歩いていた俺の目の前にばあちゃんの担当弁護士の姿があった。
最後の仕事にきました、と一言言ってから俺に封筒を渡したのだった。そうして弁護士は二度と俺の前に姿を現わすことは無くなってしまった。
封筒の中身には安全祈願のお守りと三つ折りにされた紙が入っていた。
そんな家をゆっくりと進み家の隅の方にある座布団に座る。
しばらく茫然と写真を眺めてから――チーーン。
心地良いようで暗い音が響く。
幼い時に事故で両親を亡くし、ばあちゃんに育て上げられた俺は立派な社会人となり、大手企業に就職をして沢山働いて、ばあちゃんと共に過ごしてきた。
幸いにも俺の会社はホワイト企業だったので仕事に不満はなく、人生ではいつまでたっても彼女が出来なかった事くらいが不満だった。
そんな俺に悲劇が訪れたのは5年前。
ここまで俺を立派に育て上げてくれたばあちゃんが心不全で死んでしまった。
突然の事だった。いつものように家に帰ってきたら台所でばあちゃんが倒れていた。その時は息が有ったものの救急車で病院に運ばれた時には息をしていなかった。
本当に辛かった。葬式を開いた。沢山の親戚の人やばあちゃんと仲が良かった人たちが足を運んでくれた。
だが、葬式も火葬もあっという間に終わってしまい残っていたのは、ばあちゃんの写真と遺骨のみだった。
苦しくて悲しくて辛くて、俺はその夜、遺骨ばあちゃんを抱いて大泣きした。
会社からは一週間の有休をくれた。精神的に不安定だった俺を気遣ってくれたのだろう。
だがその一週間のうち三日は争いだった。
ばあちゃんの財産の取り合いだった。ばあちゃんが残した財産は3億を超えていた。ばあちゃんがなぜそこまでのお金があったのか理解はできなかった。
それどころでなく、その3億を誰が受け取るか、が問題だった。親戚同士でばあちゃんの財産を取り合った。
いや、親戚同士金に釣られ溺れようと互いを潰し合った。
そんな中、弁護士がやってきたのだ。
最初は誰が呼んだのか分からなかった。尋ねたところばあちゃんの担当弁護をしている人だそうだ。
その人の鞄から「遺書」と書かれた紙を取り出した。裏にはばあちゃんの物である指印と判子、が押されてあった。
その遺書には、俺がその3億を受け取ることが記されていた。
当時の俺はばあちゃんが死んでしまったショックで財産何てどうでもよかった。
だが、突然目の前にばあちゃんが残した3億が現れたのだ。
当然親戚らは不満を持ち、裁判を開くもばあちゃんが記した遺書は絶対覆ることはなく、3億はあっけに俺の物へとなった。
そして、ばあちゃんの遺品の掃除に四日かけてその一週間を過ごした。
それから俺は、会社で優秀な功績を残し昇格した。給料も増え財布の中はお札で埋まっていた。
だけど心に空いた穴が埋まることはなかった。そして金目当てに近づく女ばかりで俺の人生は暗いものだった。
大きくため息をつきながら暗い夜道を歩いていた俺の目の前にばあちゃんの担当弁護士の姿があった。
最後の仕事にきました、と一言言ってから俺に封筒を渡したのだった。そうして弁護士は二度と俺の前に姿を現わすことは無くなってしまった。
封筒の中身には安全祈願のお守りと三つ折りにされた紙が入っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる