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本編
心配(18禁シーン無し)
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目の前に現れた大きな魔物。しかも、1匹だけではない。ぱっと見る限り、2、3匹くらいいる。私は、思わず、腰を抜かしてしまった。そんな、私の姿を見て、アースさんが大きな声で叫んだ。
「おい、君、ミラを逃がしてくれ!」
私の近くにいた、若い魔術師にアースさんが指示する。
「わかりました!」
指示された魔術師が、私の身体を支える。アースさんは、そんな私の姿を見た後、魔物と向かい合った。魔術師さんは、そのまま、私を連れて、出口まで向かう。
部屋を出る直前になって。1人で歩けるようになった私は、ちらりと混沌となったそこを見た。
魔物と戦う、アースさんたちの姿。かなり苦戦しているようで、アースさんの額には、大きな汗が浮かんでいる。アースさん以外の人々は、魔物たちに傷をつけるのも、苦戦しているようだ。この間見た敵よりも、手強いということは、素人である私でも分かる。しかし、私にできることは、彼らの無事を祈ることのみであった。
そういえば、エディートルトさんやララさんの姿はない。私の知らぬ間に逃げたようだ。
私たちは、小屋を出る。小屋の外は森であった。しっとりとした夜の森を、私たちは駆け抜ける。緑と緑の間を駆け抜けて。枝や蔓に足を絡ませながら。一心不乱に走っていく。数分間、ずっと走りつづけると、森を抜けた。森をぬけた先は、道だった。たくさんの馬と、十数人ほどの人間がそこにいる。魔術師さんは、その人間たちの元に歩み寄った。最初は誰か分からなかったが、近づくにつれ、その人々の正体がわかる。そこにいたのは、レティーシアさんおよび、教会の人間たちであった
彼らは真剣な面立ちで、そこに立っている。レティーシアさんが、私たちの姿を見るなり、すぐにこちらへやってきた。そして、レティーシアさんが、教会の人間を代表して、私と共にやってきた魔術師さんとやり取りをする。
「状況は?」
「魔物が出現して、現在、アース様たちが交戦中です。犯人であるララ・ミスリル氏およびエディートルト様は逃亡中。マーティン様が追いかけています」
「ララさんと……エディートルト様が……」
「はい。あとで、マーティン様かアース様が詳しく説明してくださるかと。では、私は戻ります」
「わかったわ。ありがとう。気をつけてちょうだい」
魔術師さんが、森の中へと再びはいっていく。魔術師さんの姿が消えた頃、となりにいたレティーシアさんが、私に語りかけた。
「聖女様……身体にご無理があれば、お先に帰ることもできますが……どうしますか……?」
レティーシアさんが、躊躇いながらそう言った。
「大丈夫です。ここにいます。アースさんが戦ってるのに、帰るなんて嫌です」
「……でも……」
彼女の目は、私の体に向く。ああ、そうだ。今、私は素肌の上にアースさんの上着を着ている状態なんだ。誰の目から見ても、恥辱されてしまったあとであろう。ああ、なるほど、レティーシアさんが、問いにくそうにしてたのは、これが理由か。
「未遂です。大丈夫です」
「そう、ならいいけども……」
レティーシアさんが、複雑そうな表情を浮かべる。確かに、身体を蹂躙されたが、未遂だ。アースさんが助けてくれたから、心に傷は負っていない。
「……戦ってる人たち、無事ですかね」
「彼らはこの国一の魔法使い部隊です。それに、アース様もいます。安心してください」
レティーシアさんの声が、ほんの少しだけ明るくなった。
そうだ、アースさんは国一番の魔術師なのだ。チートレベルで強いのだ。心配することは無い。頭ではそう言い聞かせるが、やっぱり、不安だ。私は、心の中でアースさんの無事をひたすら祈る。
「私たちの仕事は、もし魔力切れが起きた魔術師がいれば、魔力供給をすること。あと、怪我人の治療をすることです。聖女様も、アース様に何かあれば、彼のサポートをしてください」
「わかりました」
私とレティーシアさんの会話はそこで終わる。私たちは、じっと、森の方を見続けた。小屋からここまでは、かなり距離があるはずなのに、激しく争う音は、はっきりと聞こえる。しかし、段々と、音は小さくなっていった。私はそれを聞き、戦闘の終焉が段々と近づいてくるのを悟る。最後にひとつ、切ない遠吠えが聞こえた。魔物の遠吠えである。その声を最後に、森の中から聞こえる戦いの音が止んだ。
「終わったのね……」
レティーシアさんが、小さく呟く。パタパタと、森の方から足音が聞こえた。森の中から、隊員が1人あらわれる。レティーシアさんは、その隊員の姿をとらえると、後ろに控えていた聖職者たちに目配せをする。
「魔術師の方々の元へ向かいましょう」
私たちは、森の中へ入っていった。森をぬけ、再び、小屋へと戻る。やはりそこには、倒れた魔物の姿しか無かった。その近くに、疲れきった魔術師たちの姿がある。壁にぐったりともたれかかる魔術師、床に寝っ転がる魔術師……身体に怪我を負う魔術師もいた。私は、その中で、アースさんを探す。
倒れている魔物のその隣に、魔物をまじまじと観察するアースさんの姿があった。仕事中かなと思い、彼に駆け寄るのを躊躇ってしまう。そんな、オロオロとしている私の姿を、アースさんはすぐさま捉えた。そして、にこりと笑みを浮かべ、こちらへとやってくる。やってきたアースさんは、ギュッと私の体を包み込んだ。すっぽりと、私の身体が彼に隠される。
「ああ……ミラ……怖かったよね」
耳元で、彼の吐息がかかる。
「アースさんが無事でよかった……」
「俺はこんな敵には殺られないよ。ミラからたくさん、魔力供給されてるわけだし」
クスクスと、耳元で柔らかい声が聞こえる。その甘い声が、くすぐったい吐息が、気持ちよすぎて堪らない。
ふと、周りを見ると、魔力供給をしている人々がちょくちょくいる。肌と肌を重ね合わせて……周囲は軽い乱交会場のようになっていた。私は、そんな周りからすぐに目を逸らし、アースさんの胸板に顔を埋める。
「ミラ……」
アースさんが、私の唇を啄む。
ああ……彼も、魔力供給したいのか。私も、彼のキスを享受する。
アースさんの手が、私の胸元に伸びた──瞬間だった。後ろにいた、魔物の腕が、ぴくりと動いた──。
「おい、君、ミラを逃がしてくれ!」
私の近くにいた、若い魔術師にアースさんが指示する。
「わかりました!」
指示された魔術師が、私の身体を支える。アースさんは、そんな私の姿を見た後、魔物と向かい合った。魔術師さんは、そのまま、私を連れて、出口まで向かう。
部屋を出る直前になって。1人で歩けるようになった私は、ちらりと混沌となったそこを見た。
魔物と戦う、アースさんたちの姿。かなり苦戦しているようで、アースさんの額には、大きな汗が浮かんでいる。アースさん以外の人々は、魔物たちに傷をつけるのも、苦戦しているようだ。この間見た敵よりも、手強いということは、素人である私でも分かる。しかし、私にできることは、彼らの無事を祈ることのみであった。
そういえば、エディートルトさんやララさんの姿はない。私の知らぬ間に逃げたようだ。
私たちは、小屋を出る。小屋の外は森であった。しっとりとした夜の森を、私たちは駆け抜ける。緑と緑の間を駆け抜けて。枝や蔓に足を絡ませながら。一心不乱に走っていく。数分間、ずっと走りつづけると、森を抜けた。森をぬけた先は、道だった。たくさんの馬と、十数人ほどの人間がそこにいる。魔術師さんは、その人間たちの元に歩み寄った。最初は誰か分からなかったが、近づくにつれ、その人々の正体がわかる。そこにいたのは、レティーシアさんおよび、教会の人間たちであった
彼らは真剣な面立ちで、そこに立っている。レティーシアさんが、私たちの姿を見るなり、すぐにこちらへやってきた。そして、レティーシアさんが、教会の人間を代表して、私と共にやってきた魔術師さんとやり取りをする。
「状況は?」
「魔物が出現して、現在、アース様たちが交戦中です。犯人であるララ・ミスリル氏およびエディートルト様は逃亡中。マーティン様が追いかけています」
「ララさんと……エディートルト様が……」
「はい。あとで、マーティン様かアース様が詳しく説明してくださるかと。では、私は戻ります」
「わかったわ。ありがとう。気をつけてちょうだい」
魔術師さんが、森の中へと再びはいっていく。魔術師さんの姿が消えた頃、となりにいたレティーシアさんが、私に語りかけた。
「聖女様……身体にご無理があれば、お先に帰ることもできますが……どうしますか……?」
レティーシアさんが、躊躇いながらそう言った。
「大丈夫です。ここにいます。アースさんが戦ってるのに、帰るなんて嫌です」
「……でも……」
彼女の目は、私の体に向く。ああ、そうだ。今、私は素肌の上にアースさんの上着を着ている状態なんだ。誰の目から見ても、恥辱されてしまったあとであろう。ああ、なるほど、レティーシアさんが、問いにくそうにしてたのは、これが理由か。
「未遂です。大丈夫です」
「そう、ならいいけども……」
レティーシアさんが、複雑そうな表情を浮かべる。確かに、身体を蹂躙されたが、未遂だ。アースさんが助けてくれたから、心に傷は負っていない。
「……戦ってる人たち、無事ですかね」
「彼らはこの国一の魔法使い部隊です。それに、アース様もいます。安心してください」
レティーシアさんの声が、ほんの少しだけ明るくなった。
そうだ、アースさんは国一番の魔術師なのだ。チートレベルで強いのだ。心配することは無い。頭ではそう言い聞かせるが、やっぱり、不安だ。私は、心の中でアースさんの無事をひたすら祈る。
「私たちの仕事は、もし魔力切れが起きた魔術師がいれば、魔力供給をすること。あと、怪我人の治療をすることです。聖女様も、アース様に何かあれば、彼のサポートをしてください」
「わかりました」
私とレティーシアさんの会話はそこで終わる。私たちは、じっと、森の方を見続けた。小屋からここまでは、かなり距離があるはずなのに、激しく争う音は、はっきりと聞こえる。しかし、段々と、音は小さくなっていった。私はそれを聞き、戦闘の終焉が段々と近づいてくるのを悟る。最後にひとつ、切ない遠吠えが聞こえた。魔物の遠吠えである。その声を最後に、森の中から聞こえる戦いの音が止んだ。
「終わったのね……」
レティーシアさんが、小さく呟く。パタパタと、森の方から足音が聞こえた。森の中から、隊員が1人あらわれる。レティーシアさんは、その隊員の姿をとらえると、後ろに控えていた聖職者たちに目配せをする。
「魔術師の方々の元へ向かいましょう」
私たちは、森の中へ入っていった。森をぬけ、再び、小屋へと戻る。やはりそこには、倒れた魔物の姿しか無かった。その近くに、疲れきった魔術師たちの姿がある。壁にぐったりともたれかかる魔術師、床に寝っ転がる魔術師……身体に怪我を負う魔術師もいた。私は、その中で、アースさんを探す。
倒れている魔物のその隣に、魔物をまじまじと観察するアースさんの姿があった。仕事中かなと思い、彼に駆け寄るのを躊躇ってしまう。そんな、オロオロとしている私の姿を、アースさんはすぐさま捉えた。そして、にこりと笑みを浮かべ、こちらへとやってくる。やってきたアースさんは、ギュッと私の体を包み込んだ。すっぽりと、私の身体が彼に隠される。
「ああ……ミラ……怖かったよね」
耳元で、彼の吐息がかかる。
「アースさんが無事でよかった……」
「俺はこんな敵には殺られないよ。ミラからたくさん、魔力供給されてるわけだし」
クスクスと、耳元で柔らかい声が聞こえる。その甘い声が、くすぐったい吐息が、気持ちよすぎて堪らない。
ふと、周りを見ると、魔力供給をしている人々がちょくちょくいる。肌と肌を重ね合わせて……周囲は軽い乱交会場のようになっていた。私は、そんな周りからすぐに目を逸らし、アースさんの胸板に顔を埋める。
「ミラ……」
アースさんが、私の唇を啄む。
ああ……彼も、魔力供給したいのか。私も、彼のキスを享受する。
アースさんの手が、私の胸元に伸びた──瞬間だった。後ろにいた、魔物の腕が、ぴくりと動いた──。
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