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1話

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「ノルン。俺はお前との婚約を破棄し、俺の領地から追放する。さっさと出て行くがいい」

 私にはある特殊な力があった。とても単純なものだけど、強力な力。
 その力はどのような魔物でも従えることができるというもの。婚約者であるフィリップが治める領地は魔物による被害が多かったようで、その力を欲して私と婚約した。

 だから、私としては別に婚約を破棄されようが、追放されようがまったくもってどうでもいい。
 のだが、今フィリップの隣にいる女性がどうにも気に食わない。

 その女性の名前はフレイア。私の実の妹である。
 私のことが大嫌いな彼女は、おさがりというものが大嫌いなはずなのだが、フィリップにはべったりだ。
 一体、どういう風の吹き回しなのかは分からないが、きっとロクなことは考えていないだろう。

 それに、フィリップもフィリップだ。私と婚約した理由を忘れてしまったのか?
 私としては別にフィリップの領地に住む人間が魔物に喰われて殺されようが知ったことじゃない。
 だが、フィリップはそうもいかないだろう。

 もしかしたら、このことを忘れているかもしれない。

「フィリップ様、1ついいですか?」
「何だ」
「私を追放するということは、再び魔物による被害が発生するということ。
 それでも、私をこの領地から追放するのですか?」
「ハッ。お前は馬鹿か? フレイアはお前の妹なんだから、同じ力を持っているに決まってる。
 それが分かっていたら、初めからお前のようなブサイクと婚約しなかった」

 ……あなたにだけは言われたくないんですが。

 というのは、胸のうちに留めておくとして、なるほど。私にある力は妹にもあると。
 たしかに先祖代々受け継がれる力ならそうかもしれないが、私の力はそういうものじゃない。

 そのことはフレイアも知っているはずだが……。

 私は可愛くない妹に視線を向けた。すると、彼女はゴブリンのような気持ちの悪い笑みを浮かべた。
 ああ、本当に気色悪い。フレイアはマジモンのブサイクで、濃いメイクで何とか誤魔化しているんだけど、そのメイクが意味をなさないぐらいに顔面が崩壊している。
 
 ふむ。たしかにフィリップとフレイアはお互いブサイク同士、お似合いなのかもしれない。
 ならば、私は大人しく手を引こう。フィリップの領地に住むひとには申し訳ないけど、大人しく死んでもらおう。

 恨むならフィリップを恨んでね。私は関係ないから。



~フィリップ視点~

 ノルンとの婚約を破棄してから3日ほど経過した。新しく婚約を結んだフレイアとの関係は良好だ。
 強いて不満を言うなら、同じベッドで眠ってくれないことだが、彼女は少し奥手なのかもしれない。
 だから、自分が眠っている姿も見られたくないのだろう。

 さて、そろそろノルンは俺の領地から出て行った頃合いか。今のところ何の変化もないから、やはりフレイアにもノルンと同じ力が備わっているに違いない。
 しかし、気がかりだな。ノルンがこのことを知らないわけがない。

「……俺と離れるのが嫌だったのか?」

 いや、だとしたらもう少し引き下がるはず。

 ……まぁいい。アイツとは2度と会うことはない。



 ――その1週間後、魔物による被害が相次いで発生した。
 
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