妹に婚約者を奪われ、追放された私は魔物の王。魔物による被害で領地が滅びるから戻ってこいと言われてももう遅いです。勝手に滅びてください。

無名 -ムメイ-

文字の大きさ
2 / 2

2話

しおりを挟む
『モリス領にて大規模な魔物災害が発生。しかし、住民の避難は完了していたのか死者数はゼロ。
 なお、モリス領の領主、フィリップ・モリスの行方は不明』

 モリス領から出て10日ほどした頃、私の耳にそのような情報が飛び込んできた。が、どうでもいい。
 それにしても大規模な魔物災害か。半年も支配されていたら、その反動でそれぐらいになってもおかしくないか。

 流石にこうなるとは思わなかったけど。

 ちなみに住民の避難が完了しているのは、領地を出る際に私が事前に話しておいたのだ。
 避難する場所がないなら、私の父様が治めている『フィーベル領』に来るといい、とも。

『フィーベル領』は現段階でもひとが住める領地はそれなりに広いが、未開拓の領域が多く存在している。
 だから、その領域を開拓する人手は多い方がいいかなという私の独断でその判断をした。

 決して可哀想だからという理由ではない。

「そういえば……」

 モリス領から早馬で届けられたらしい差出人不明の手紙を渡されたのを思い出した。
 恐らく、差出人はフィリップだろう。追放した私に何の用だろう。宛先は書いてないが、フィーベル領とモリス領の境にある検問所で渡されたのだ。

 どうして私宛だと分かったのかは聞かなかったが、多分、この手紙を届けた人間の伝言によるところだろう。

「えーと、なになに?」

 私は封筒を開封して、手紙に目を通した。

『――お前のせいで、俺の領地が滅びかけている。魔物災害を引き起こしたのはお前だから、さっさと戻ってこい。
 それとフレイアも連れ戻せ。俺の財産をすべて持ち逃げしやがった。俺の言うことを聞いてくれたら婚約を結び直してやる。だから、早く帰ってこい。このブス』

 急いで書いたからか汚くて読めない字が多かったが、多分、こんな感じの内容だと思う。
 ……まず最初に言っていい? ブスはいらないでしょブスは。

 それにあのゴミ妹は何をしてんの? フィーベル家から勘当されてお金がないからって……。
 ……まあ、いいか。多分、今ごろ魔物に襲われて喰い殺されているだろうから。

 フィリップは……まあ、放っとこうかな。
 私はこうなると忠告したし、婚約を結び直すとか言っている辺り、何も反省してないのが丸わかりだから、誰に頼まれても戻ってなどやらない。

 なので、勝手にモリス領は滅びてください。
 フィリップも死んでください。

「……帰りましょうか」
 
 受け取った手紙をビリビリに破り捨てて、父様と母様が待つ屋敷へと帰ることにした。
 勝手にモリス領の人を避難させてしまったから、話すことが多いからね。



『――モリス領にて行方不明だったフィリップ・モリスが屋敷の地下で死亡が確認されました。
 また、この事態に乗じてモリス家の屋敷から多額の資産を盗んだとされる女性の身柄を確保し――』

 そんな情報を耳にしたのは、フィーベル家の屋敷に戻って5日目のことだった。

 
 
 




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され一人寂しく家を出た私を連れ戻したのは…まだ見る事の無かった運命の相手でした。

coco
恋愛
婚約破棄され、一人寂しく家を出た私。 そんな私を連れ戻したのは…まだ見る事の無かった運命の相手でした。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから

神崎 ルナ
恋愛
 アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。    だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。  その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。  

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

婚約破棄を突き付けられた方の事情 わかってます?

里中一叶
恋愛
学園の卒業パーティーで婚約破棄を高らかに発表する公爵子息。 された側の事情わかってますか?

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

処理中です...