そんなに嫌いで好きで怖いなら…… 《シリーズ番外編》

Rohdea

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コラボ話 (ひっそり生きてきた私~&そんなに怖いなら~)

精霊の愛し子と髪の神様に愛された縦ロール 〈後編〉

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「初めまして。わたくしミュゼット・ベニテンツと申します」

 ベニテンツ国のお妃様が頭を下げてそう挨拶をする。
 すると、

 ぶぉん、ぶぉん、ぶぉん……

 今まで生きていて聞いた事のない音がする。
 そして、これまで見た事が無い程の迫力満点のその縦ロールは、私の目の前で元気いっぱいに揺れていた。

 ぶぉん、ふぉん……

『うわぁぁぁぁ、アリスティアーー本物だよぉぉ』
『すごい音がする~』
『これ、髪の毛の音じゃないよね!?』

 遂に髪の愛し子と対面した精霊たちの興奮がすごい。
 こんなに興奮しているのは、セレスティナ達をツルツルチリチリボワンにした時以来かもしれない。

 ぶぉん、ぶぉん、ぶぉぉん……

 ミュゼット様の縦ロールはとにかく元気!  
 その一言に尽きる。

(知らなかったわ。髪の毛って“ぶぉん”って音がするものだったのね)

 自分の髪の毛に視線を移してみたけれど、そんな音はしそうにない。

『アリスティア、これは比べるものじゃないんだよ』
『アレは特別なんだから』
『髪の愛し子だからこそなんだよ』

「……!」

 精霊たちに優しく諭された。
 今までは暴走しがちな彼らを諌めていたのは私なのに。
 まさか、私が精霊たちに諭される日がやって来るなんて……ちょっとショックだわ。

「……ティア?  大丈夫?」
  
 ずっと私と精霊たちの会話を聞いていたであろうジェフが、心配そうな表情で私の顔を覗き込んで来る。
 さすが、ジェフ。
 これくらいの事では動揺しないのね。
 私も見習わなくては!

「え、えぇ。大丈夫………………ん?」

 と、思ったのだけど。

「…………ふっ……くっ」

 ジェフの肩が震えていた。
 違うわ。
 動揺していなかったんじゃない!  
 これは笑いを堪えている!
 賓客の手前、冷静を保とうとしていたもののついに我慢出来なくなったみたい。

(……耐えて!  耐えるのよ、ジェフ!)

 私は心の中でエールを送った。

「……?  どうかしましたの?」

 そんな私たちの様子にミュゼット様は不思議そうに首を傾げる。

 ……ぶぉん!

「!!」

 何故、首を傾げて髪が揺れるだけで、そんな音がするの!?

「いえ、失礼致しました。えっと、ところで、ラファエル殿下は?」
「今、来ますわ。あぁ、ほら……ちょうどあちらに」

 ミュゼット様の夫であるベニテンツ国の王子、ラファエル殿下は陛下と話をしていたのでちょっと遅れて私たちの前に現れた。

「ミュゼット!」
「ラファエル様、お疲れ様でございますわ。今、ちょうど王太子夫妻に挨拶をしていた所ですの」
「あぁ、そうか!  初めまして、私はー……」

 ラファエル殿下は私たちに向かって丁寧に挨拶をしながらも、ミュゼット様の腰に手を回してさり気なく抱き寄せている。

(なるほど!  これがジェフの言っていた愛が深いという事ね!)

『わー……嫉妬深そうな匂いがするよー』
『これ、完全に髪の愛し子の虜になってるよね』
『王宮内が甘くなりそう~~』
、甘いのにねー』

 後半の精霊たちの言っている言葉がよく分からなかった。

(更に甘い?  ただでさえ甘い?  毎日王宮でお菓子でも焼いてるの?)

 そんな事を考えていたら、パチッとジェフと目が合う。
 すると彼はニッコリした笑顔を私に見せた。
 何かしら?

「……?」

『“愛し子”たちは鈍そうだねぇ』
『そうだね~』
『アリスティアだけじゃないんだね』

(どういう意味よ!!)

   精霊達たちの呑気そうなそんな言葉が聞こえた。



─────……



「ジェフ!  凄かったわ、ベニテンツ国のお妃様の髪!」
「何だっけ?  精霊曰く、髪の神様に愛された愛し子だっけ?」
「そうよ!」

 その夜、夫婦の寝室で興奮した私はミュゼット様の髪の毛についてジェフに語る。
 興奮が冷めやらず私はジェフに向かって語り捲る。

「だって、見た?  ラファエル殿下が何かを口にする度に、ぶぉん、という音を奏でて揺れていたわ!」
「僕にはラファエル殿下が縦ロールと会話しているように見えたよ?」

 ラファエル殿下がお妃様……ミュゼット様に何かを囁く度にその縦ロールは反応を示していた。
 ミュゼット様は照れやすいのかすぐ顔が赤くなっていて、その度にぶぉん、ぶぉんと縦ロールが……
 精霊たちも、

『縦ロールと会話!?』
『人間の出来る領域じゃないよぉぉぉ』
『やっぱり勝てないぃぃー』

 と、慄いていた。

「でも、お互いを大切に想い合っているのが伝わって来る素敵な王子夫妻だと思ったわ」
「そうだね……」
「ジェフ?」

 相槌を打ったジェフがそのまま黙り込んでしまったので、どうしたのかしら?  と顔を覗き込むと、思いっ切りジェフと目が合った。

「!」

 その瞳に熱がこもっているのが伝わって来てドキッとする。

「ティア……」
「……ジェフ」

 そのままジェフの顔が近づいて来て、チュッと私の唇と重なった。

「僕だってティアを大事に思ってる!」
「わ、私だってそうよ!!」

 私たちは互いにそう口にしながら見つめ合う。
 そして、自然ともう一度唇を重ねる。

「……あ」

 ドサッとそのままジェフにベッドに押し倒された。

「可愛い可愛い僕のティア……」  
「ジェフ……」

 ジェフが甘く私の名前を囁いてそっと覆い被さって来る。
 私もそんな彼を優しく迎える。

「愛してるよ」
「私もです」

 そっと、私達の唇がもう一度重なる──
  
(明日は寝不足ね……)

 そんな事を思いながらジェフに身を委ねた。


 そうして精霊に愛された愛し子のアリスティアたち、王太子夫妻が甘い甘い夜を迎えている頃────



「ミュゼット……」
「あ、もう!  ラファ……んんっ」

 ペチペチペチ……

「あぁ、ミュゼットのペチペチはやっぱりいいな。癖になる」
「も、もう!  相変わらず何を言っているんですの!」

 髪の愛し子のミュゼットたちも甘い甘い夜を迎えていた。


 こうして、ベニテンツ国の王子夫妻が王宮に滞在している間は、精霊たちが口にしたようにどこもかしこもいつもより甘い甘い空気が流れていたと言う……



✼✼✼✼✼✼✼✼


想像以上に楽しそうなので、コラボもう少し書きたいと思ってます。
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