そんなに嫌いで好きで怖いなら…… 《シリーズ番外編》

Rohdea

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コラボ話 (ひっそり生きてきた私~&そんなに怖いなら~)

精霊の愛し子と髪の愛し子の夫 〈後編〉

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 ラファエル殿下は饒舌に語る。

「そうか。やはり精霊もミュゼットのあの真っ直ぐさには勝てないのか」
「ん?」

 そんな話だったか?

「ミュゼットはとても愛らしいからな。あの照れた時の顔を真っ赤にする顔はいつだってそそられる」

 これは惚気か?  惚気が始まったのか?
 そう思った時には既に遅い。
 ラファエル殿下の重そうな妃殿下への愛の語りが開始した。

「───つまり、だ。きっとこの国の精霊たちも、そんなミュゼットには勝てないと感じたのだろう」
「え?  いや、ラファエル殿下。精霊達が挑んだのは妃殿下の縦ロール……」

 ラファエル殿下の言うように妃殿下は素直で真っ直ぐそうな性格ではあると思うが、精霊たちが挑んだのはあくまで、あのぶぉんぶぉん音がする縦ロール。
 あれを大好きなツルツルチリチリに出来なかったという話なのだが……

「ミュゼットの縦ロール?  あぁ、あれも凄い。なんと言っても照れ屋で可愛いミュゼットの思ってる事を全て語ってくれるんだ!  あんな髪の毛は他を探しても無いだろう」
「……そう思います」

 あんな凄い縦ロールが他にもあったら驚きだ!

「誤解されがちなミュゼットを助けてくれるいい髪の毛だろう?  そして、可愛いミュゼットがさらに可愛くなる!」
「……」

 ウンウンと嬉しそうに頷くラファエル殿下を見ながら僕はうまく言葉を返せない。

(いやいや、会話出来るのはラファエル殿下くらいだろう!?)

 それよりも、やはりこの方は縦ロールと会話をしていたんだなと改めて思った。

「あの、何故ラファエル殿下は縦ロールと会話が出来るのでしょうか?」

 これはきっと、王子夫妻が過ごす姿を見た事がある者は誰もが持つ疑問だと僕は思うんだ。
 そんな、僕の疑問にラファエル殿下は少し考える表情を見せてから言った。

「分からない。だけど、ミュゼットに恋をしてミュゼットと縦ロールを見ていたら、何となく言いたい事が伝わって来るようになったんだ」
「え?」
「縦ロールもミュゼットの一部だからな。俺は全てを愛してる」

 ──やはり、ラファエル殿下は只者ではない!  
 そう思った。

「そう言えばだが、ミュゼットは俺のかなりヤキモチ妬きの大事な犬とも縦ロールを通じて中を深めているぞ」
「は!?」
「マンディー、あ、これは犬の名なのだが、ミュゼットとマンディーはあの縦ロールで仲良くなったみたいなんだ。俺以外には懐かない嫉妬深い犬だったのだが、まさかあんなに懐くとはな……」
「犬、とも?」

 僕は思う。
 髪の神様に愛されると、もはや人外の存在のようになるんだな。
 精霊たちが勝てなかった理由が分かった気がした。
 そして、更に思う。
 そんな髪の愛し子の夫もきっと普通ではない──

「愛し子の夫と言うのはあなたくらい超人でないといけないのだろうか?」
「ん?  どうかしたのか?  ジーフリート殿」

 僕がそう呟くとラファエル殿下は不思議そうな顔をした。

「いや、アリスティアの事を思い出して……」
「ああ、“精霊の愛し子”というだけあって素晴らしそうな女性だと思ったな」
「──!  そうなんだ!  ティアは最高なんだ!  天使なんだよ!!」

 僕は思わずラファエル殿下の肩を掴んでそう語る。
 だって、ティアの可愛さは一言でなんて表せない。
 だが、あえて言うならやはり天使────

「見ず知らずのおとこを助けてくれるあの心優しさ……」
「うちのミュゼットも優しいぞ。困ってる奴を放っておけない」
「ティアは、長年、酷い扱いを受けて生きて来たのに誰の事も恨まないで、人の幸せばかりを願って真っ直ぐ生きて来たような人なんだ……」
「うちのミュゼットは曲がった事が嫌いでな。頭の中に花畑を育てていそうな女にも逃げずに戦いを挑む真っ直ぐさがあるぞ」

 僕のティアは……
 俺のミュゼットは……

 愛する妻の話になると、止まらなくなる僕達は延々と妻の可愛いところを互いに語り合った。

『ジーフリート~?』
『大丈夫ー?』
『戻って来るのが遅いとアリスティアが心配してるよ~』
『ボコボコにされちゃったぁ?』

「……!」

 戻りが遅くて心配したらしい精霊たちがフヨフヨとやって来た。
 彼らの声でようやく、僕も我に返る。

「あ……」
「どうした?」
「い、いや、精霊たちが僕の心配をして様子を見に来たんだ」

 心配してくれるのは有難いが、最後の“ボコボコにされちゃったぁ?”は何だか聞き捨てならない。
 ……何なら声が弾んでいた気がするぞ!?
 ティアもよく言っていたが、彼らは無邪気でたまに残酷だ……


「精霊か……俺にはその姿が見えないが本当に存在するんだな」
「そのうち、“やっほー!  髪の神様の使いだよ☆”とか言って妃殿下の元にも現れるかも」
「……それは嫉妬しそうだな」

 ラファエル殿下は苦笑する。
  
「嫉妬……僕は精霊たちと仲良くしているティアを見ていると嬉しくなる」
「そういうものなのか?」

 ラファエル殿下は少し驚いた顔を見せた。

「そういうものですね」
「そうか……少しは心を広く持つべきか……」


『何だか仲良しになったねー』
『良かった良かった』
『ちぇっ……ボコボコにされてると思ったのに~』


 そう語り合う僕らを見て精霊たちが呑気に会話をしている。
 そして、やっぱり僕に厳しい精霊が紛れ込んでいるな、と思った。



******



「それじゃ、ラファエル殿下は怒らなかったのね?  よかった……」
「うん。むしろ、自分の妻は最高だ!  だってさ」

 ティアの元に戻った僕は、ラファエル殿下が怒ることもなく受け入れてくれた事を説明する。

「本当にミュゼット様の事を愛しているのね」
「そうだね」
「それなら、どうしてジェフはこんなに戻って来るのが遅かったの?」
「……」

 …………互いの妻への愛を語っていたから。
 なんて口にするのは何だか恥ずかしいなぁ。

「ジェフ?」

 くっ!  
 そんな可愛い目で僕を見つめるのは反則だ!
 あぁ、ティアはやっぱり天使!  僕の天使!

「ティア……」
「ん……あ、ジェフ……!」

 僕はそっとティアを抱き寄せる。
 そして、そのままそっとキスをして誤魔化した。



   
 ───一方、愛する妻の元に戻ったラファエル殿下も、

「ミュゼット!  例え髪の精霊が現れても俺を一番に愛して欲しい!」

 などと大真面目な顔をして妃殿下にそう語ったようで、

「何を突然、意味の分からない事を言っているんですの!?」

 ……ぶぉん!

 と、照れた妃殿下の縦ロールにペチペチされていたらしい。




✼✼✼✼✼✼✼✼


コラボも番外編も、気まぐれに今後も更新は続けます!
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