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第8話
しおりを挟む「…………んッ」
「っ! アリアン……」
優しく触れるだけだったキスは、なぜか一度で終わらず、レオナールは角度を変えながら私に何度も何度もキスをした。
「……」
「……」
ようやく満足したのか、そっと唇が離れる。
私が照れと恥ずかしさで顔をあげられずにいると、頭上で慌てた声が聞こえてきた。
「……ゔ……あ、やべぇ……俺は何を……」
レオナールは口元を押さえて顔を真っ赤にしていた。
「レオナール……」
「す、すまない!! アリアン! 俺はっ!!」
レオナールが額を床に擦り付ける勢いで謝ってくる。
「何でレオナールが謝るの!?」
レオナールとのキスを受け入れたのは私だ。私なのに。
「だって……アリアンにはラウルが……アイツと交際を始めたんだろ?」
「は? 何でそんな話になってるの!?」
ラウル様は皆の前で私に交際を申し込んでるとは言ったけど、交際を始めたなんて言ってない。
「そ、れは……」
「それは? それは、何?」
レオナールは言葉を濁して言いたくなさそうだったけど、私は断固として譲らなかった。
観念したレオナールは、ようやく観念して口を開いた。
「中庭で……二人がキスしてるのを…………見たから」
「え!?」
「あの日、ラウルがアリアンに交際を申し込んでるって言って連れ出した後……」
「……!!」
「アリアンは、いつだったかゴンさんって呟いてたし……アイツの家名はゴンザーガだろ?」
まさか、あのキス未遂を見られてたの!?
それで、レオナールは誤解してしまったの!?
そして、まさかのゴンさん疑惑!!!!
「レオナール! 違う! 私はラウル様と交際もしてないし、キスもしてないわ! ついでにゴンさんも彼じゃないわ!!」
「え?」
レオナールは怪訝そうな顔を向ける。
「確かに交際も申し込まれたわ。キスも……その、されそうになった……でも!」
「でも?」
「嫌だ、無理だって思って押し退けて逃げたの。交際もその場で断ったわ……」
「…………」
レオナールが無言になってしまった。
「……レオナール?」
私がおそるおそる顔を上げてレオナールを見ると、レオナールはプルプルと震えて何かに堪えるような表情をしていた。
「そんな、俺は……バカッ……誤解して……?」
「ちょっ……どうしたの?」
レオナールの様子が変なんだけど!?
「……初めてだったんだ」
「?」
「アリアンとラウルのあの光景を見て……全然試験に集中出来なかった…………こんな事は今までの人生の中で初めてだったんだ……」
そう言いながらレオナールが私を抱き締める。さっきよりも強い力だった。
「ちょっと……苦し……」
「────好きなんだ」
「え?」
レオナールの突然の言葉に、引き剥がそうとしていた力が緩んだ。
今なんて言った?
「俺は……ずっとずっとアリアンの事が好きだったんだ」
「レオ、ナール……?」
レオナールの腕に力がこもる。
だから、苦しいってば!!
「アリアンの面倒を見る事になって……初めは面倒だなって思った。だけどいつも明るくて真っ直ぐで元気いっぱいなアリアンに俺はずっと……ずっと……」
「……」
「でも俺はこんな性格だから素直になれなくて。煙たがられてるのも感じてた」
「レオナール」
煙たがるって言うか……オカンのように思ってたと言うか……
……って、これ絶対今言うことじゃないわね。
「……賭け……だったんだ」
「賭け?」
「『農業の基本』アリアンならあの本を読むんじゃないか……そう思って俺はあの本に手紙を挟んだ。アリアンに届けと願って」
「!!」
「顔を合わせると、突っかかって思うように話せないけど、手紙なら……俺も少しは素直になれるんじゃないかって思ったんだ」
ここでまさかのカミングアウトが来た!!
あぁ、やっぱり……やっぱり権兵衛さんはレオナールだったんだ。
「返事が挟まってた時……すげぇ嬉しかった。間違いなくアリアンだと分かったよ」
「何で?」
「手紙の内容もそうだけど……字体がな。筆跡で確信出来た」
「ひっせき……」
考えもしなかった!
え、つまり私もよくよく考えてみれば筆跡で権兵衛さんがレオナールだって分かったんじゃ……
今更ながらその事に気付いて愕然とする。
「アリアンは、俺だって気付かずに返事をくれてたな」
レオナールが苦笑いする。
「どーせ、鈍いですよー」
そうよ。他の人だって勘違いまでしちゃったし!
「それで良かったんだよ。俺はすげぇ幸せだったから」
「私も……ゴンさん……権兵衛さんとのやり取り楽しかったわ」
「……ん? ゴンさんって俺……権兵衛の事だったのか?」
「そうよ。ラウル様は関係ない」
私のその言葉に、レオナールは目を丸くしている。
「俺は! いったい! 何に嫉妬してたんだ……!!」
「あはは」
頭を抱えるレオナールの姿がおかしくて思わず笑ってしまった。
「笑い過ぎだ!」
「だってぇ……って? ……ちょっ、レオ……」
笑い過ぎの罰だとかわけの分からない事を言いながら、
レオナールは再び私の唇を塞ぐ。
そして、しばらくそのまま離してくれなかった。
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