【完結】私は、顔も名前も知らない人に恋をした。

Rohdea

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第9話

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「ラウルが、権兵衛のフリをしてた?」
「そうなの。私の事を“名無しさん”って呼んでたわ」

  レオナールの気持ちも落ち着いたようなので、私はレオナールにラウル様の事を伝えた。

「本の事も手紙の事も知ってて……あ、手紙の中身も、かな?」
「……」
「どうしてかな?」
「……そういう事か。確かアイツは……」
「レオナール?」

  レオナールは、何か思い当たる事があったのかちょっと怖い顔をしていた。



****


  翌日。
  レオナールはラウル様を校舎裏に呼び出した。
  もちろん、私も一緒だ。
  だってちゃんと話を聞かないといけない。


「こんな所に呼び出して何の用ですか?  レオナール様」
「……」
「忙しいんですよ、僕はあなたと違って勉強しないといけないのでね」

  ラウル様のその言葉の言い様にカチンとくる。
  その言い方は、まるでレオナールが勉強していないみたいじゃないの!

  私がラウル様を睨むとラウル様は「へぇ……」って顔をして私達を見る。

「おやおや、どうやらお二人……名無しさんと権兵衛さんはうまくいっちゃったみたいですねぇ……」
「っ!」

  やっぱりラウル様は知ってたんだ。

「せっかくワザと嘘の交際の申し込みまでしたのに……残念です」
「嘘……?」
「そうですよ、アリアンさん。あんなの嘘に決まってるじゃないですか。どうして私があなたみたいな田舎娘の平民を相手にしなくちゃいけないんです?」
「……!」

  分かっていても……分かっていてもすっごく腹立つ!

「アリアンをバカにしないでもらおうか?」
「いや、その平民女は実際バカでしょ?  成績なんて散々じゃないですか」
「!!」

  当たり前の事を言われただけなのに、その言葉が胸に刺さる。

「アリアンはバカなんかじゃない!!  お前なんかがバカにしていい女じゃない」
「はぁ?  何を言っているんですか?」
「レオナール?」

  レオナールはとても怒ってた。私がバカにされたから?
  私の成績が悪いのは本当の事なのに。

「お前には分からないんだな。俺達のような貴族と違って幼少期から学習の時間を設けられてきたわけでもないアリアンがこの学校に入学出来た凄さを!」
「何だそれは?」
「限られた時間と環境の中で誰に教わるでもなく勉強してきたアリアンがシュテルン王立学校の入学試験を突破した。それも一発でだ!  そこにどれだけの努力があったと思う?  そんなアリアンを俺は心から尊敬している!  だからこそアリアンを侮辱する事は許せない!」
「……レオナール……」

  知らなかった。レオナールは私の事をそんな風に思ってくれてたんだ。

「アリアンが学校に入学してから成績が奮わなかったのは、今まで自己流で勉強していたから、“学校”という体制に慣れなかっただけなんだ!!  お前にバカにされる謂れは無い!」
「……そんな事知らん!」

  そう言い切るラウル様はあくまでも私の事なんてどうでもよさそうだ。

「……まぁ、お前にアリアンの素晴らしさを知ってもらおうとは思わない。今日話したかったのは別の事だ」
「……」
「お前、全部では無いだろうが、俺とアリアンのやり取りしていた手紙を盗み見していたな?」
「え!」

  レオナールの言葉に私が驚きの声を上げる。
  そんなレオナールは一息つきながら話を続ける。

「お前は図書委員だったな。だから、俺達が頻繁に図書館にやって来ては毎回同じ区画に行ってる事に気付いた。そして、本に手紙を挟んでる事を知ったーー違うか?」
「……」

  ラウル様は、否定も肯定もしなかった。
  だけど、その顔には図星だとかかれているようだった。

「お前は手紙を盗み見た事で、俺がアリアンに想いを寄せている事に気付いたな?」

  ……ん?  あの手紙のやり取りからそんな事が推測出来たの?  何で??
  そういえば、ラウル様って私が権兵衛さんを好きなのも見抜いてたけど、そんなに分かりやすかったのかな?

「だから、ワザと俺の前でアリアンを誘惑した。俺が最もダメージを受ける形にしてな! そして、俺はまんまとその手に引っかかりお前の目論見通り成績を落としたわけだ」
「……はっ!  上手くいったと思ったのになぁー残念だ。せっかく一番になれたのに」

  ラウル様は、開き直ったのか素直に認めた。

「こっちが迂闊だったのもあるが、アリアンを利用しやがって!」
「面白かったなぁ、ボロボロになったレオナール様を見るのは。このまま最後の試験までボロボロでいてくれれば良かったのに。そうしたら、ご褒美は僕のものだったんだけどなー。ざーんねん」

  そうか……ラウル様は首席卒業者になりたくて、こんな事を……
  ようやく、彼がそんな事をした理由が分かった。

「やはり、そこの女を落とせなかったのが失敗だったかー……」

  そう言ってラウル様は、チラリと私を見る。

「ラウル……」
「あー、はいはい。申し訳ございませんでしたー。もうしませんよ。どうせレオナール様に勝てる人間なんていないんだから。一時の夢でしたよー。あなたはどうせ必死に努力してる僕達をいつだって嘲笑ってるんでしょ。あぁ、頭の構造が違う人は羨ましい」
「!」

  そのレオナールをバカにするかのような発言に私はとうとう我慢が出来なくなった。

「アリアン!?」

  私はレオナールが制止するのも聞かずにラウル様の元へと走り出した。

「ラウル様!!」
「?」
「勝手な事言ってるんじゃないわよーー!!!!」

  と、私は叫びながらラウル様を思いっ切りグーで殴った。

「レオナールは!  レオナールはね!?  誰よりも必死に努力して来た人なのよ!!  そんな事も分からないからあんたはレオナールに勝てないのよっっ!!」
「ア、アリアン!  落ち着け……!!」

  レオナールが私を宥めようと必死に止めに入る。

「止めないで!  落ち着けるわけないでしょ!?  レオナールをバカにしたのよ!  私は私の大切な人をバカにしたコイツが許せないのーー!!」

  興奮した私と、必死にそれを止めるレオナール。
  そして、私に殴られてへたり込みダラダラと鼻血を流すラウル様。


  その光景はまるで地獄絵図のようだった。と、その現場を見た者は後に語った。

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