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41. (ロディオ視点)

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  ──あぁ、ソフィアが可愛いなぁ。

  俺の腕の中で顔を赤くしてオロオロしているソフィア。
 
  (早く、こいつらを始末してソフィアを愛でたい)

  フニフニ……

  エレペン伯爵家の屋敷はこれまで何度も訪ねた事があるから、空き部屋がある事も知っている。頼めば一部屋くらい……

  (なんてな。今、本気で迫ったら可愛い俺の嫁は逃げ出す気がする……)

  びっくり箱みたいな俺の嫁は、何をしでかすか分からない所があるからな。
  …………もちろん、そんな所もたまらなく可愛いが。

  (そして、相変わらず頬の触り心地は最高だ)

  最近のこの最高に可愛い俺の嫁は、ふにふに返しというとんでもない技を繰り出して来た。その時の笑顔が超絶可愛い!

  (あれは駄目だ。ペラッペラの俺の理性が遥か彼方に飛んでしまう……)

  フニフニフニ……

  皆がソフィアの可愛さに見蕩れている。そこで更にソフィアのこの頬の魅力が知られてしまったら手を出そうとするヤバイ奴が現れるかもしれない。
  それなら、こんな大勢の前でふにふにするなと言われそうだが、我慢が出来ない!

  (とにかくこの可愛い可愛いソフィアは俺の嫁だと皆に知らしめるしかないんだ)
  
  キャンキャン喚かれてうるさいが、そういう意味ではこんな公の場でソフィアに振られてくれているマッフィーには大感謝だ。

  ──しかし、この小悪魔で鈍感な俺の嫁は、きっとまだこの関係を契約だと思っている。
  でも、気のせいでなければ……単なる俺の願望でなければ……だが。
  最近のソフィアの俺を見る目には熱がこもっているような気も……する。

  (意識はしてくれているはずなんだ!)

  さっきだって、マッフィーが邪魔さえしなければ念願のソフィアの唇に触れられたはずなのに……!  嫌がられなかった……はず、だ!
  
  (マッフィーはそれだけでも万死に値する!)

  そして、この全ての黒幕であろう気味悪い女──
  こいつらを片付ければ、念願の可愛い可愛い嫁とのふにふに生活の始まりだ!
  
  フニフニフニフニ……



────……


  茶葉店女は、いちいち行動が怪しかった。
  なんとなく違和感が残る店での対応。ソフィアとのデートの時のわざとらしい体当たり。
  そもそも平民で、何故俺に粉をかけてくるのかと不思議でもあった。

  (愛人狙いか?)

  気持ち悪い。
  俺には可愛い可愛い嫁のソフィアがいる。他の女なんて要らない。

  (そもそも、皆、同じに見えるんだよなぁ……目が二つあって、鼻が一つで口も一つ……)

  ソフィアだけだ。ソフィアだけが俺の中で特別だ。


  ──そうして、調べた薄気味悪い女。そして、監視を続けていたマッフィー。

  監視の者から“ミスフリン侯爵子息が例の茶葉店に向かいました”と報告を受けた時には、驚きはもう無かった。
  2人には繋がりある、そう思えて仕方なかったから。
  マッフィーはポンコツだ。そんなんだから金策に苦しむ事になったんだろう。

  
  ───だったら、もうどんな方法でも良いから消すしかないと思わない?


  マッフィーがこっそり会っていたフードを被った謎の女はそう言った。謎の女は茶葉店の女。そして、その消すと言っている相手はソフィアだろう。
  俺の可愛い嫁を消すだと?  ふざけた事を言ってやがる。

  (俺のこの先の幸せふにふに生活を奪おうとする者は許さない!)

  だから、
  我が家と懇意にしているエレペン伯爵にパーティーを開くようお願いした。
  その際、マッフィーを必ず招待する事と、平民の女が接触して来る可能性が高い事を伝えた。

  (使用人のフリでもして紛れ込もうとするか、招待されてもいないのにパーティーに乗り込んでくるかのどちらかだろうとは思ったが……)

  伯爵にはどちらに転んでも拒まないでくれとお願いしておいた。そして、パーティーの数日前に「平民の女性が使用人として雇ってくれと訪ねて来た」と聞いた時は“当たり”だと思った。

  (あの女は知らないのだろうな。貴族の屋敷で働くにはそれなりの人物からの紹介状が必要な事を)

  そんな事を知らない女は当然紹介状など無かったが、採用されて浮かれていたと言う。
「こんなに上手くいくなんて!  やっぱり天は私の味方ね!」とか何とか言っていたらしいが……阿呆だな。
  まぁ、おかげで監視しやすくなった。

  俺は俺の大事な嫁……ソフィアを傷つけようとする人間を許す気は無い。


────……


「二人が密会……ですか?  それに、私を消す計画……」

  俺の腕の中でソフィアが困惑と怯えた表情を見せる。
  可愛い可愛い俺の嫁にそんな顔をさせる計画を立てた2人はやっぱり万死に値するな、と思う。

「そう。使用人として紛れ込んだあの女を利用してソフィアを連れ去る計画を立てていたみたいだ」
「連れ去る?  毒を飲ませるのではなくて?  あ、そっか、私……」
「そうだよ、ソフィアは飲食物を警戒しているからコイツらは毒が使えない」
「……ですよね」

  フニフニフニ……

  (あぁ、本当はこんなふにふにしながら、話すべき話では無いと分かっているが……)

  愛しいソフィアが俺の腕の中にいるのだから触らずにはいられない!
  そのうち禁断症状が出そうだな……いや、もう出てるか……

  フニフニフニフニフニ……

  会場中の人達が、ふにりふにられている俺達の様子を唖然とした顔で見ている。あちこちで令嬢達がフラフラと倒れているみたいだが、ソフィアに害が及ばないなら特に気にすることでも無い。

  (男性の視線は気になるな。俺のソフィアだとまだ分かっていないのだろうか?)

  とりあえず、男共はこのままソフィアをふにふにしながら警戒するとして……
  
「何か言いたい事はあるか?  茶葉店の女」
「…………っ」

  リンジーとか名乗っていた女はギリッと唇を噛んで身体を震わせている。

  (そろそろだろうか?)

  この女の事だ。痺れを切らして怒鳴──……

「本っっっ当に何なのよーーー!! 」

  ほらな。痺れを切らしてそろそろ怒鳴ると思ったんだ。
  そして多分、最初はマッフィーを責めるんだろうな……

「……この約立たずのへっぽこ男ーー!!」
「は?  へっぽこって、まさか俺の事か?」
「他に誰がいると思ってるのよ!?  へっぽこ!  大失敗じゃないの!」
「お前がそれを言うのか!?  お前こそロディオに怪しまれていたじゃないか!!」

  二人が言い合いを始めた。
  こいつらの事だ。勝手にどんどん余計な事を口にして自滅していくんだろうな。

「ロディオ様……」

  俺の腕の中でソフィアが困惑した目を俺に向ける。

  (あぁ、その上目遣い……可愛い可愛い可愛い可愛い)

  フニフニフニフニフニフニ……

  バカな言い合いを始めた二人の攻防は暫く続く気がしたので、その間、俺は可愛い可愛い嫁の魅惑のほっぺたを存分に愛でる事にした。

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