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第二話
しおりを挟む「はぁ!? ちょっ、ちょっと、どういうつもりよ!!」
お姉様は怒っていた。
それはそうだろう。
だって、ジークフリート様はお姉様の思い通りの反応を示さなかったばかりか、事もあろうに自分を追い出しにかかっているのだから。
……ちょっとだけ、ざまぁみろと思ってしまう私は性格が悪いかしら?
いつもお姉様にされている事を思い出し、そんな事を考えてしまった。
「どういうつもりって、レラニア嬢、君こそ何が言いたいんだい?」
「は?」
お姉様が意味が分からないわって顔をして首を傾げた。
「リラジエ嬢の頼みを受けて君は僕を彼女に紹介したんだろう? なら、もうその役目は終わったじゃないか。だからもう君がここに居る必要は無いよね? それとも君がここないなきゃいけない理由がまだ何かあるのかな?」
「そ、それは……」
ジークフリート様の言葉にお姉様がたじろいだ。
「あぁ、もしかして心配してるのかな? 妹さんに酷い事なんてしないから安心してくれていいよ?」
「そうじゃないわ! 私はそんな事を心配してるわけじゃないのよ!! おかしいわよ。あなたは何で……」
「おかしい? 何で、とは? どういう意味かな?」
「……ぅ」
なんと! あのお姉様が押されてる。
ジークフリート様、凄い!
私はとっても珍しい物を見た、と思わず感激してしまう。
「っっっ! もういいわよっ!! 知らない! 分かったわよ、好きにしなさいよ!」
ジークフリート様には勝てないと思ったのか、お姉様は怒り心頭のまま部屋から出て行こうとする。
昔からお姉様はそうだった。
自分の思い通りにならないとすぐ憤慨して機嫌を損ねてしまう。
お父様はそういった時は、必ずと言っていいほどお姉様を追いかけて謝り、これでもかってほどにデレデレに甘やかすのだけど……
なので、これは引き止めて欲しいアピールなのでは?
そう思ったけれど、肝心のジークフリート様は「そう? それは良かった」と言って出ていくお姉様を笑顔であっさりと見送っていたので心底驚いた。
(えぇぇ!? いいの!?)
「……」
「……」
お姉様が出て行ってしまったので、部屋には私とジーク様が取り残された。
扉は開いているとはいえ、異性と2人きり! これは初めての経験。
私の心臓はバクバクとものすごい鼓動を刻んでいた。
(私はどうすれば……??)
このパターンは初めてで、正直どうしたらいいのか分からない。
私はひたすら戸惑っていた。
「騒がせて申し訳なかった。改めて、ジークフリートです、リラジエ嬢」
「あ、リラジエ……です」
何故かお互いもう一度挨拶を交わす。
「……そんな不安そうな顔をしないで?」
「え?」
「この場は君が、リラジエ嬢が望んだ事では無いよね?」
ジークフリート様は私を安心させるように微笑みながら言った。
さっき、お姉様を追い出す時の笑顔とは違って優しい笑顔だった。
「どうせ、レラニアが無理やり仕組んだんだろう?」
「そ、それは……」
その事を素直に認めてしまっていいのか分からず、私はオロオロと視線を泳がせる。
そして何も言えず俯く事しか出来なかった。
「…………君は分かりやすいね」
「っ!」
「大丈夫だよ、悪いようにはしないから」
「……」
その言葉を信じていいのかしら?
そう思って顔を上げてジーク様を見つめる。
(かっこいい人だわ……)
ジーク様は銀の髪に青空のように澄んだ色の瞳をしている。
顔も整っていて、いかにもお姉様が好きそうな顔立ち。
しかも、フェルスター家は私の記憶違いで無ければ侯爵家。
私が知っている今までのお姉様の元恋人達は、我が家より爵位が下かもしくは同じ伯爵家までだったのに。この方はまさかの格上!
お姉様にかかれば格上とかそんなもの関係無いのかもしれないけれど、こんな方を飽きたと言って捨てるなんてお姉様はどれだけ鋼の心を持っているのかしら。
お父様が知ったら卒倒しそうね。
「……リラジエ嬢?」
「え?」
「どうかした?」
ジークフリート様が私を覗き込むようにしていた。その顔はどこか心配そうだ。
「え! あ、いえ、全然大丈夫? です!」
「ふっ」
全く大丈夫とは、思えない返事だったからかジークフリート様はクスクスと可笑しそうに笑う。
私は一気に恥ずかしくなってしまい頬を赤く染めた。
「それで、これからの事なんだけど」
その言葉にドキッとした。
──そうだった。この方は本日無理やり連れてこられただけのお姉様の元恋人。
今までの人と違い過ぎたからちょっと忘れそうになっていたわ。
今日限りの付き合いだろうけど、私をバカにしない良い人もいるのだと知れた事は良かったなと思う。
これまで嫌な男性ばかりに会いすぎて、危うく男性不信になる所だったもの。
私がそう1人でウンウン頷いていると、
「そうだなぁ……まずは、デートでもしませんか?」
「はい?」
ジークフリート様は、またしてもいい笑顔でとんでもない爆弾発言を投下した。
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