【完結】飽きたからと捨てられていたはずの姉の元恋人を押し付けられたら、なぜか溺愛されています!

Rohdea

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第三話

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「デデデ、デートです、か!?」

  その言葉のあまりの衝撃に思わず声が裏返ってしまった。

「そうだよ、デート。だってお互いをよく知る為の時間は必要だと思うんだよね」
「…………え?」
「いつにしようか?  うーん。レラニアには邪魔されないようにしたいよね」
「え、いや、あの……?」

  私の驚きを分かっているのかいないのか、ジークフリート様は淡々と話を進めていく。
  しかも!  またしてもあのお姉様を邪魔者扱いしている!?
  
  (これまでの態度といい、もしかして、ジークフリート様はお姉様に捨てられたショックでヤケになっているのかしら?)

  恋人なんていう存在がこれまでいた事のない私にはこういった男女の機微がさっぱり分からなかった。

  だからと言ってこのままでいいはずが無いわ。 
  このままではジークフリート様と私の交際が始まりかねない。

  私は慌てて口を開く。

「あ、あ、あの、ジークフリート様!」
「何かな?」
「私達、姉妹の話にわざわざ付き合わなくていいんですよ?」
「?  どういう意味かな?」

  ジークフリート様が不思議そうな顔をする。

「ジークフリート様には大変申し訳ないですけれど、これはいつもの事なのです。お姉様は私をからかいたいだけで……ですから私とお付き合い……とか本気にしなくても構わないのです!」
「いつもの事……」

  何故かジークフリート様の目がスっと細められた。

  ……え?  ちょっと機嫌が悪くなった!?
  気の所為でなければ冷気のようなものまで感じる。
  こ、これは怒っている……の?

「それはつまり……」
「はい?」
「こうして、レラニアが連れて来た男性は僕以外……他にもたくさんいる、という事だよね?」
「えっと……」

  困ったわ。
  これはお姉様のこれまでお付き合いした男性の数を気にして怒り出してしまったのかもしれない。
  お姉様にはあなたよりも前にお付き合いした男の人が、それはそれは沢山いるんです、と暴露してもいいものなのかしら?
  やっぱり過去の事とはいえ面白くはないわよね?

  と、躊躇ったものの、待って?  と思う。

  ……いえ、お姉様の通り名は社交界の毒薔薇!
  さすがにジークフリート様もそこは分かってお付き合いしていたはず!  ならきっと頷いても大丈夫よね!

「…………そうです」

  そう思い直して、私は頷いた。
  そんな私の頷きと返した言葉を受けたジークフリート様はますます眉を顰めた。


  (何でそんな顔……!)


「…………何人?」
「?」

  予想と違う反応に内心でダラダラと冷や汗を流していると、何やら人数を聞かれた。
  これは、お姉様の元恋人の数を聞いているのかしら?  
  多すぎてさすがにそれは分からない……と答えようとしたら、何故かジークフリート様は畳み掛けるように違う質問を被せて来た。


「リラジエ嬢はその中の何人と付き合いがあったの?」
「…………へ!?」

  何で私の話?  
  意味が分からなくて間抜けな声が出てしまった。

「リラジエ嬢は、これまでレラニアのをたくさん紹介されて来たんだよね?」
「そう……ですが」

  どうしてかしら?  謎の圧力をビシビシと感じるわ。
 
「なら君はそいつらの中の誰かと……」
「い!  いえ、わ、私!  誰ともそんな関係になっていませんーーーー!!」

  ジークフリート様の視線があまりにもいたたまれなくて、気付いたら私は大声でそう叫んでいた。

  はぁはぁ……
  思わず声を張り上げてしまったせいで、息が……辛い、わ。

「……そうなの?」
「はい……その恥ずかしながら……」

  恥ずかしくて下を向く。
  誰からも見向きもされなかった私……何だかその事をジークフリート様に知られるのが嫌だなと思ってしまった。

「リラジエ嬢、顔を上げて?」

  そう言われてしまったので、私は仕方なくそっと顔を上げる。

  (え!?)
  

  ジークフリート様は今度はニッコニコの笑顔を見せていた。
  さっきまでの冷気は何処へ!?
 

「そっか。なら良かった。ん?  ……良かった、なのかな? でも、安心したよ」
「あ、んしん?」
「そ、安心。安心出来たからね、デートの日取りを決めようか!」
「へ?」

  全くもって意味が分からないまま、私はあれよあれよと流されて、気付いたら妙にご機嫌になったジークフリート様とデートする事が決定していた。
  何故なの!




◇◇◇





  ジークフリート様は「また連絡するよ」そう言って今日のところは帰られた。

  見送りを終えて部屋に戻る途中、お姉様と鉢合わせした。

「!」
「ちょっとリラジエ!  調子に乗るんじゃないわよっ!!」
「お、姉様……」

   お姉様はやはり怒っていた。

「ジーク様がアンタに何を言ったか知らないけど、アンタを気にかけたのは、ほんの気まぐれに過ぎないわ。勘違いするんじゃないわよ!  この身の程知らずが!!」
「……」

  身の程知らず……いや、まぁ、確かにその通りだけれども……
  でも、彼には飽きたから私に譲ると言って紹介して来たのはお姉様なのだけど……

  そんな反論しようものなら、お姉様の当たりはますますキツくなるのは間違いない。

「ふんっ!  そもそもアンタなんかが彼とまともに付き合えるなんて思わない事ね!」
「どういう意味ですか?」
「そのまんまの意味よ!!  だって、彼は……」

  お姉様は何かを言いかけたけど、ハッと何かを思い出したかのように口を噤んだ。

「とにかく!  調子には乗らない事ね!!」
「あ……」

  お姉様は私をひと睨みして、言いたい事だけ言って踵を返し去って行った。



  分かってるわ。勘違いなんてしない。
  ジークフリート様は今までのお姉様の元恋人達と違って、好感が持てる人だったけれどそれだけだもの。
  きっとあの人は優しいから、お姉様に利用された私を放っておけなかっただけ。

  それにこんな私とデートしたところで……
  “つまらなかったな”  そう思われてしまって、きっとデートも1度きりで終わるに違いないわ。

  期待なんてしない。

  ちょっと予想外の反応や出来事ばかり起きたけれど、
  ジークフリート様はお姉様の元恋人なのだから。
  何故かお姉様に対する態度は素っ気ないけれど、ジークフリート様はお姉様の事が好きだった。それは間違いない。
  だから、こんな正反対の妹の私を好きになる事なんてあるはずがない。

「……いつもみたいに嫌な人だったら良かったのにな」

  ちょっと良い人だわ、と思ってしまっただけに、私の惨めな気持ちは一層強くなった気がした。



 
  そして、私はそんな風にボンヤリと考え事をしていたせいで、お姉様の声を最後まで聞いていなかった。





「……認めない。絶対にこんなの認めないわ。ふふ、そうよ。これは何かの間違い。リラジエが私より幸せになるなんて、あり得ないし許せないもの。なら私は……」


  ──まさに、毒薔薇の微笑みで何やら呟いていた事を。


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