【完結】飽きたからと捨てられていたはずの姉の元恋人を押し付けられたら、なぜか溺愛されています!

Rohdea

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第十八話

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「リラジエ様!」

  会場入りと共に声を掛けられた私が振り返るとそこにはミディア様が居た。

「ミディア様!」
「デビューおめでとうございます。お兄様はちゃんとエスコート出来てます?」

  ミディア様がチラッとジークフリート様の方を見ながら言った。

「当然だろう!」

  ジークフリート様はそう言いながら私の腰に手を回し自分の方へと引き寄せた。

「まぁ!  相変わらずの独占欲の激しいお兄様ですこと」
「今日のリラジエはいつもの数倍は可愛いんだ。気など抜けるか」
「そうですわね、先程からチラリチラリと視線を感じますものね……」

  ミディア様がそう言いながら辺りを見回す。
  確かに見られている気はするけれど、それって隣に居るのがジークフリート様だからだと思うのよね。
  そう思ってジークフリート様を見ると、何故か彼はキョロキョロと辺りを見回しながらブツブツ呟いていた。

「……確かあそこの男の家はバーモン子爵家、あっちはルシアン伯爵家の令息だったか?」
「ジークフリート様?  何を呟いているのですか?」
「ん?  あぁ、大した事じゃないよ。ただ、リラジエによこしまな視線を送って来ている人間を確認してるだけだから、リラジエは気にしないでいいよ」
「は、い!?」

  ジークフリート様がとっても爽やかな笑顔でそう言い切った。
  ちなみにそう口にしながら私の腰に回している手の力が強まったのは気の所為?
  それに、ものすごく色んな意味で気になります……

「我が兄ながら、怖いですわ……この勢いで変なリストを作成しそうですわぁ……」

  ミディア様が横で若干引いていた。
  ……えぇ、何だか否定出来ないわ。


  その後は、ミディア様を通じて仲良くなったマディーナ様を始めとするご令嬢への挨拶、ジークフリート様の知り合いにも挨拶とあちこち挨拶周りが続く。

  たびたび、ジークフリート様の謎の独占欲が発揮されるものの、概ねトラブルなども無く平和だった。


「アボット伯爵家の娘?  ……それじゃ君はレラニア嬢の……」
「妹のリラジエでございます」

  私が名乗ると目の前の相手はあから様に私に対して侮蔑の表情を浮かべる。

  “あの”とつくあたりで、お姉様の悪評高さが窺える。
  相手が高位貴族になればなるほど、その傾向は強かった。

「へぇ、レラニア嬢とは似てないね」

  お姉様の噂を面白おかしく捉えている人の中には、そんなお決まりの台詞セリフを言う人もいた。
  けれど、どんな相手でもジークフリート様が、

「そうだろう、そうだろう?  リラジエはレラニア嬢と違ってすっごく可愛いんだよ!」
「は?」
「目に入れても痛くないくらい可愛いだろう?  君はさすが見る目があるようだ。でも、申し訳ないが彼女は僕の予約済みなんだ。諦めてくれ」
「そ、そうですか……ははは」

  こんな感じでジークフリート様がデレデレに惚気けるので、完全に毒気を抜かれていく人もいてそれが何だか可笑しくて。
  惚気けながらも、さり気なく牽制していくジークフリート様。
  私はその手腕に素直に感心していたのだけど、

「違いますわ、あれ……本気で惚気けてるだけですわよ。わたくし達家族が毎日聞かされてるのと変わりませんもの」

  と、ミディア様は遠い目をして言う。
  ……毎日って本当だったの!?




 “フェルスター侯爵家のジークフリートは、本日エスコートしている女性にかなり執心しているらしい。しかも、その女性が毒薔薇の妹でどうも彼女とは似ていないようだ──”

 “毒薔薇と違って妹は交友関係も広そうだ。あのマディーナ公爵令嬢が気にかけている”

  気づくと会場内の私に対する見方は、そんな空気に満ちていた。

  (さすが、マディーナ様だわ……!  やはり、マディーナ様の目に留めるか否かは社交界での立ち位置に大きく影響するのね)


  なんて私が感心していると、とたんに会場内が大きく騒めいた。

  何事かと入口に目を向けると、やって来たのはお姉様。
  お姉様のエスコートは何故かグレイルで、なんとも嫌な二人の組み合わせだ。

  (お姉様……!)

  私と目が合うとお姉様はニッコリと微笑む。
  ……毒薔薇の笑み全開で。

  横にいるジークフリート様の私を支える腕にグッと力が入ったのが分かる。
  そして、私の耳元で小さく囁いた。

「大丈夫だ。僕がついている」
「……はい」


  ──そうよ。ジークフリート様が隣にいてくれているんだもの。
  大丈夫。例えお姉様が何を言って来ても──




  お姉様はコツコツと靴音を鳴らしながらこちらへ近付いて来た。

「ふふ、あぁ、リラジエ。あなたみたいな子でも楽しめているのかしら?」

  相変わらずお姉様の言葉には嫌味が含まれている。
  昔は気付けなかったけれど、さすがに今はよく分かるようになった。

「楽しんでいます……だから、お姉様に心配していただかなくても結構です」
「まぁ!  酷いわ、何なの?  その言い方。私は心配してあげたのに。さみしいわねぇ。本当にいつもの様に冷たい妹ね」

  お姉様は嘆く素振りを見せながら、全く心にも無い事を言う。
  その瞳は全く悲しんでなどいないではないの!
  そもそも、心配はするものであって、あげるものではないと思う。

「……聞きました?  いつもですって」
「冷たい妹……」

  お姉様の声が大きいからか、その部分の声だけを拾った人達がヒソヒソと話し出す。

  なるほど……こうして、勝手な噂は広まっていくものなのね。
  私よりも社交界に詳しいお姉様は、どこをどうすれば効果的なのか熟知している。
  
  (ミディア様を通じて知り合いをたくさん作っていなかったら酷い事になっていたかもしれない)

  改めてミディア様と会わせてくれたジークフリート様や、他の令嬢達との関係を繋げてくれたミディア様への感謝の気持ちが生まれた。
 
「ふふ、まぁ、いいわ。それよりもリラジエ。ちょっと早いけど約束のプレゼントを届けに来たわよ。喜んで受け取ってね!」

  ギクリと思わず身体が震えた。

「……?」

  確かにプレゼントとは言っていたけれど、それはいったい……?

「……」

  私を支えるジークフリート様の腕にも力が入る。

「……お姉様はいったい何を……」
「ふふふ、優しい私が届けに来てあげたわよ、さぁ、彼を受け取って。、リラジエ」
「?」

  これまで何度も聞いてきたお姉様のその言葉。
  その始まりは──グレイルだった。
  だけど、この場所でこの言葉を聞く事になるなんて。
  どういう事なの?  誰をあげる、と……?

  ふふふ、とお姉様は嬉しそうに笑いながら、それまで黙ってお姉様の横にいたグレイルを前に押し出した。

「私からのプレゼント、グレイルよ!  本来なら帰国したばかりで今日のパーティーには参加資格の無かったグレイルを私のエスコート役として連れて来てあげたわ」
「は?」
「え?」

  私とジークフリート様の困惑の声が重なる。

「嬉しいでしょう?  だってグレイルはリラジエの初恋の人だものね。初恋の人と結ばれるなんて素敵よね!  羨ましいわ」
「お姉様……何、言って……?」

  声が震えてしまうのは困惑しているから?  動揺しているから??

「さぁ、エスコート役の交代よ、リラジエ!  本来、エスコートはだもの」
「「!?」」

  私の横でジークフリート様も息を呑んだ。

  ──エスコートは、婚約者となる予定の男性がする。

  本来ならそれはその通り。
  ジークフリート様が今、私をエスコートしてくれているのは例外だ。
 
  なら、今のお姉様が言った言葉が指す意味は……
  冷たい嫌な汗が背中を流れる。
  そして、お姉様が毒薔薇の微笑みを浮かべて言った。

「だってリラジエの婚約者は、ジーク様ではなく、だもの!」
「え!」
「……は?」

  再び、私とジークフリート様の驚きの声が重なる。

「ははは、だから言っただろ、リラジエ。エスコートは本来、俺の役目だったのにってな!」
「グレイル……」

  お姉様の言葉に乗っかってグレイルまでもが笑いながらそんな事を言い出した。 


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