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26. (縦ロールが)妨害してくれてまして

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「ラファエル様、実はここ数日、わたくしの縦ロールが不思議な動きをするんですの」
「え?」
「先日、花瓶が降って来た件もそうですがー……あの後ですね、他にも……」

  その日、一緒に昼食を食べていたラファエル様にここ最近、わたくしの身の回りで起きている事とそれに伴った縦ロールの動きについてのお話しをしました。
  話が進むとラファエル様のお顔が渋くなっていきます。
  花瓶の件ではとても心配をかけてしまいましたから、そのせいかしら?

「……何故、そんな変な顔をされるのです?」
「いや。ミュゼットが思う縦ロールの不思議な動きというのが、ここ数日の事……なのか、と思っただけだ」
「?」

  ラファエル様がおかしな事を仰います。

「だって凄いんですのよ?  花瓶の件だってあれは偶然では無いと思いますし、本日は行方不明だった教科書まで発見してくれましたのよ!」
「……その前に聞きたいんだが、行方不明の教科書って何だ?」
「少し、目を離した隙に無くなってましたの」

  ラファエル様のお顔は険しいまま眉がピクリと反応します。
  さすがにわたくしにも分かります。これは、お怒りですわ……

「それで?  縦ロールはどうやって見つけたんだ?」
「教科書のある所まで案内してくれましたわ。捨てられていましたの」
「案内……」
「えぇ。次の授業の準備をしようとしましたら、何故か教科書がごっそり見当たらなくて困っておりました。すると縦ロールがピクピク動き出しまして」
「……ピクピク」

  ラファエル様にもお見せしたかったですわー……
  ぶぉんとも、(お父様の首を絞めようとした)シュルシュルとも違う動きでしたのよ!

「それで、その導きに従ってみましたら無事に教科書達を発見出来たのですわ」
「……導いた」
「ええ!  やっぱりわたくしの、縦ロールは最強でしてよ!」

  わたくしが、興奮した様子で語り終えるとラファエル様は苦笑しました。
  ……?  どうして、笑うんですの??

「ははは、ミュゼットらしい」 
「何がですの?」

  ラファエル様がそう言いながらわたくしの頭を撫でます。

「俺はミュゼットのそういう所が好きだよ」
「!?」

  ぶぉんっ!!

「そんなに驚くか?」
「……は、恥ずかしいんですもの」

  す、す、好きとか言われるのは、ラファエル様と気持ちを通じ合わせてもやっぱり恥ずかしいのです……
  わたくしの頬が赤く染まりました。

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉんぉん!

「また、可愛い反応を……ミュゼットは相変わらず照れ屋さんだなぁ……だが、しかし」
「……分かっておりますわ」

  ラファエル様の表情が真剣なものに変わります。

  わたくしだってバカではありません(多分)
  ラファエル様の言いたい事は分かっておりますわ!

「いい加減、野放しにするのも危険だな」

  それは“犯人”の事を言っておりますのね?
  犯人が誰なのかは、悩まなくても分かるのですが……困った事に証拠が無いのです。
  
「ラファエル様……」

  ぶぉーん、ぶぉんぶぉん!

  あぁ、どうやらわたくしの縦ロールはやる気満々ですわよ!

「すごいやる気だな……」
「ええ!  何でも出来ちゃいそうですわ!」
「……本当にな」
   
  ラファエル様も驚いてましたわ!



  この時のわたくしはもちろん知りません。
  わたくしの目はラファエル様しか見えておりませんでしたから。
  嫌がらせの犯人──アマンダ様がこの時もわたくし達の様子を、物陰からとても怖い表情で睨んでいる事など……



───……



「ミュゼット様 」

  証拠は揃ってないけれど、もうアマンダ様を呼び出して話をつけるしかない!
  ラファエル様とそう決めましたその日の放課後の事でした。
  わたくしが教室に一人でいましたらアマンダ様がやって来ました。

「アマンダ様……それに、そちらは……」

  アマンダ様の後ろにいる3人の男性達はどこのどなたでしょう?
  クラスメートでは無い事は確かですが……
  わたくしに声をかけたのはアマンダ様だけではありませんでした。

「あぁ、彼らは私の事が大好きな人達よ!」
「アマンダ様の事……を大好きな人達?」

  ぶぉん?

  困りましたわ。アマンダ様が何を仰ってるのかさっぱり分かりません……
  ですが、困惑するわたくしの事など気にもとめずアマンダ様はニッコリ笑って言います。

「私はラフ様しか眼中に無いとはっきり言ったのだけど……それでも私の力になりたいんですって。ふふ、ヒロインって罪な女よね」
「……」

  ぶぉぉん!

  縦ロールが「この、なよなよ髪の女はバカなのか」と言ってますわよ。

「何を仕掛けても全く空振りばかり!  何か妨害電波でも出てるの?  だからもう、いい加減まどろっこしいのは終わりにしようと思いまして。分かってるかしら?  悪役令嬢あなたのせいで、私のラフ様がおかしくなってしまったのよ。だから……」
「わたくしを排除する……と仰るの?」

  アマンダ様は勝ち誇ったような表情を浮かべます。

「そうよ!  何も殺さなくても、あなたがラフ様の婚約者である資格さえ無くなればいいんだもの。だから、彼らを呼んだの」
「!」
「あぁ、頼みのラフ様は来ないわよ。先生からの呼び出しを受けてる所だから。話を引き延ばすようにお願いしてあるのよ」

  ラファエル様が、先生に呼び出されたのでわたくしは教室で待っていたのですが……
  どうやら、アマンダ様はわたくしが一人になるように仕組んでいたようですわ。
  
「ふふ、残念ねぇ?  ラフ様の婚約者と言ってもここはベニテンツ国では無いから、あなたに護衛はついていない……あはは!  だからヤラれちゃうのよ~。さぁ、その辺に連れ込んでお楽しみの時間よ!!」

  アマンダ様のその言葉を受けて男性達もニヤニヤした笑いを浮かべています。
  彼らはこの国の貴族のはず。
  こんな所でわたくしに手を出して、ただで済むと思っているのでしょうか?
  
  (そう口にしても彼らには通用しなさそうですわね……)

「ミュゼット様!  是非、楽しんで下さいね!  ふふっ」
「へぇ、これが、本物のドリル」
「いつも、遠くで見てたが本当に動くのかな」
「だとしても、さすがに男3人には適わないだろ」

  アマンダ様の命令を受けた男性達はニヤニヤした笑いを浮かべたままそんな事を言いながら、わたくしへと近付いて来ました──……

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