【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第1話

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  その日、我が家を訪ねて来た王子様はとんでもない事を言い出した。


「……え!?  エリオス殿下……今なんて仰いました……?」
「だから、セシリナ嬢。君にお願いをね」
「えぇ、それは聞きましたけど、その、内容がですね……」

  私は、たった今聞いた、そのお願いは何かの間違いだろうと思いながら聞き直す。
  更におかしくなったのかもしれない。そう思いながら。


「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」


  えっと……?  聞き間違いでは無かったらしい。
  数日前に初めて会ったこの王子様……今度はいったい何を言い出したの??

  私は笑顔でおかしな事を言っている王子様を見ながらそんな事を思った。






***************





  私、セシリナには物心がついた時から、不思議な力が備わっていた。
  何故か人に触れると心の中にその人の声が聞こえてくるのだ。

  初めてそれに気付いたのは、まだ子供の頃……自分の世話をするメイド、リンの手に触れた時だった。

《あぁ、どうして私がセシリナ様付きなのかしら?  姉のマリアン様の方が今後の事も考えたら絶対良かったのに!》

  突然、頭の中になだれ込んできた声は確かにリンのもの。
  しかし、リンの口から発せられたようには感じない。
  そして、子供だった私は深く考えずに聞いてしまった。

「リンは私よりお姉様の方がいいの?」

  リンはその言葉を聞いてサッと青ざめた。

《……どういう事?  何でバレたの。今のは私が心の中で考えた事よね?  まさか口に出していたのかしら…… 》

「そんな事はありません!  リンはセシリナ様に仕えられて幸せですよ」

  リンは笑顔でそう答えたけれど、私にはリンの焦る気持ちが全て聞こえて来ていた。

「え?  でも……」 

  (言っている事と頭の中で聞こえてくる事が全然違うわ)

  私が戸惑っていると、頭の中にリンの声がまた聞こえて来た。

《何なの?  まるでこっちの気持ちが見透かされているみたい。気持ち悪いわ》

  私はその頭の中に聞こえて来た声にショックを受けた。
  気持ち悪いと言われた。
  なのに、目の前のリンはニコニコした笑顔で「どうしましたか?」と聞いてくる。

「何でもないわ……」

  その時の私はそう答える事しか出来なかった。





  その日から、私は人に触れると頭の中にその人の声がするのだと気付いた。
  そして頭の中に聞こえてくる声はその人の心の声だ。

  直に人に触れるとそれは心の声としてはっきり聞こえてくる。
  しかし直に触れずともちょっと触れるだけでもその人の大まかな感情が伝わって来るようだった。

  (何なのこれ……)

  それはまだ幼かった私には衝撃が大きく、到底受け止められるものでは無かった。
  何故なら、使用人だけでなく家族の心の声も伝わって来てしまったから。

  ある日、不意に聞こえて来たお母様の心の声に私は大きく傷付いた事がある。

《マリアンと違ってセシリナは本当に可愛げがないのよね》

  マリアンというのは、私の2つ上の姉。
  ストロベリーブロンドのフワフワした髪に、翡翠色の瞳。
  パッチリした目は大きく、とても可愛いと言われているお姉様。

  一方の私は、髪の色は同じだけれど、フワフワもしておらず、ただ真っ直ぐなだけの髪。
  瞳の色は琥珀色。
  この色は家族が誰一人として持っていない瞳の色だった。過去を遡ってもいないらしい。

  そんな私の目は、お姉様と違って目もパッチリではなく、どちらかと言うと切れ長。
  自分の容姿がお姉様と似ていない事が、私にとってはコンプレックスとなっていたけれど、お父様もお母様もいつも「セシリナも可愛いよ」と言ってくれていたから私はその言葉を信じていた。

  ──たった今、こうしてお母様の心の声を聞いてしまうまでは。

  可愛げがない。
  やっぱり、自分はお姉様みたいに可愛くないんだ。
  天真爛漫なお姉様と違い、もともとの性格も内向的だった私は、確かにお母様からすれば可愛げは無かったかもしれない。

  (それでもショックだわ)


  その日を境に私はどんどん内気になり、家族、使用人との会話も減っていく。
  また、直接人に触れてしまって頭の中に声が聞こえてくるのが嫌で、ワガママを言って手袋を常に着用するようになると、ますます家族との溝は広がっていった。


  皆、笑顔で話してくれるのに、心の中では全然違う事ばっかり思っているわ!  
  もう何を信じたらいいのか分からない!!


  こうして人とあまり関わらずに成長したバルトーク伯爵家の次女の私、セシリナは人前でも殆ど笑わず、常に手袋を着用する薄気味悪い令嬢として世間に噂がどんどん広がっていった。




****




「セシリナのせいよ!!  あなたの噂のせいで私が選ばれなかったんだわ!!」

  今、私の目の前でお姉様が怒り狂っている。
  お姉様は昔から「将来は絶対王子様のお嫁さんになるの!」と夢を見ている人で、子供の頃ならまだしも成長してからも……絶対に私が選ばれるの!  と常に自信満々だった。


  我が国に王子は2人いる。
  “私は王子様に選ばれる!”
  可愛いらしい容姿が武器になると思ったのか、自分に自信を持っていたお姉様は狙いを王太子殿下に決め、必死にアプローチを繰り返していた。
  ……それはそれは、もはや王宮に出入り禁止を言い渡されてもおかしくない程に王太子殿下の事を常に追いかけていたので、ある意味とても迷惑な……コホンッ



  しかし、なんとこの日。
  ついに王太子殿下の婚約が発表された。

  しかし、その相手はお姉様では無かった。

  なのでお姉様は今、自分が選ばれなかった理由を私のせいにしてこうして暴れている。
  正直、無茶苦茶な言い分だとは思うけれど、お姉様の言いたい事は分からなくもない。

  ───バルトーク伯爵家の次女は薄気味悪い令嬢だ───……

  バルトーク伯爵家の次女とは、もちろん私のこと。
  お姉様は、社交界に流れる私のこの噂のせいで、王太子殿下の婚約者に選ばれなかったと言いたいらしい。

  王子様……王太子殿下の花嫁になる事を夢見て生きてきたお姉様は、もう20歳。
  この国での結婚適齢期を少し過ぎている。
  そんなお姉様は、殿下に選ばれなかった不満とこれからの不安が入り交じって私に八つ当たりをしているのだと思う。

「何か言いなさいよっ!  本当に薄気味悪い妹だわ。あなたのせいで我が家が何と噂されているのか知っているんでしょう!?」
「………」

  お姉様の言葉を聞きながら手袋を装着している自分の手を見つめる。

  何と罵られようと、私は人前でこの手袋を外すわけにはいかない。
  むやみやたらに、他人の心の声など聞いてはいけないし、聞きたいとも思わない。
  そして、この不思議な力の事を誰かに知られるわけにもいかない。

 
  だけど、私ももう18歳。
  いつまでもこのままではいられないし、そろそろ自分の今後の身の振り方も考えなくてはいけない。

  (だからと言ってこんな私が誰かの元に嫁ぐなんて事も考えられないわ)

  
「ちょっと!  セシリナ!!  聞いてるの!?」

 
  プリプリ怒るお姉様を横目に私は、はぁ……と、ため息を一つ吐いた。

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