【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第7話

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「そうだなぁ……面白そうだと思ったから……かな」
「はい?」
「セシリナ嬢となら楽しく過ごせそうな気がしたんだ」
「……待ってください!  何ですか、その理由はー……って、ひゃぁ!」

  思ってもみなかった発言に驚いて殿下に思わず詰め寄ろうとしてー……私はまた自分の足に躓いた。

「っ!?  セシリナ!」
「……っ」

  エリオス殿下が、咄嗟に手を伸ばして抱きとめてくれた。

「大丈夫?」
「……うぅ、すみません……」

  またやってしまった……
  そして、しまったと気付く。この体勢は……

《びっくりした……本当におっちょこちょいな子だな》

  当然だけどエリオス殿下の心の声が聞こえて来た。

「驚いた……気を付けて?」
「はい。すみません……でも、殿下が変な事を言うからです……」
「あぁ、そうだね、ごめん、ごめん」

  殿下は私の抗議に軽く笑ったのだけど。

《まぁ、そうだよな。失敗した。言い方が悪かったよなぁ。でも……》
《仮の恋人を求めてるのは本当だけど、そもそも今日訪ねた本当の目的はセシリナ嬢とまた会って話がしたいと思ったからだって言ったら気味が悪いと思われてしまうのかな?》

  ──ん?
  恋人のフリをしてくれ発言より聞き捨てならない言葉が聞こえて来た気がする。

《誰でも良かったわけじゃない。……セシリナ嬢がいいと思ったんだって言ったら引かれるだろうか》
《セシリナ嬢にとっては迷惑な話だろうけど……》

  どんどん聞こえて来るエリオス殿下の心の声にひたすら困惑する。

「……ん?  セシリナ嬢、どうかしたの?  顔が……」
「っっっ!」

  今、絶対私の顔は赤くなっている。
  何なの……何を考えているのか分かっても意味が分からないってどういう事なの!

《少し顔が赤く見えるのは……怒ってるんだろう》
《そりゃ、あんな理由をでっち上げたわけだしやっぱり断られるだろうなぁ……》
《でも、僕が仮の恋人が欲しかった本当の理由は……》
 

「あ、あ、あの!  殿下は私の噂をご存知無いのですか!?」
「え?」

  エリオス殿下がどうして私にまた会いたいと思ったのかは正直、よく分からない。
  だけど、あのまだ多くの女性と遊んでいたいからと言う最低男のような発言は何やら本心ではなさそうなのは分かった。

  (分かったからこそ困惑してるわ……!)

  だけど、醜聞を纏ってる私を仮とはいえ、恋人になんてしたら、殿下の評判はますます下がってしまうでしょうに。その事はどう考えているのだろう?

《噂?  あぁ、あれか》

「あぁ、それはもちろん知ってるよ?」
「ならば!」
「でも、君と直接会って話をして君が……セシリナ嬢が良いと思ったんだよ、僕は」
「!!」

  (言った!)

  その言葉に思わず胸が跳ねる。
  心の中でも衝撃は大きかったのに口に出された時の衝撃はもっと大きい。

「だって、薄気味悪いだっけ?  僕が聞いたのはそんな噂だけど全然そんな事無いでしょ?」

《ちょっとおっちょこちょいだけど、可愛いじゃないか》

「……!」
「そりや、その前髪は長すぎると思うけどさ?」

《あの綺麗な瞳が隠れているのは純粋にもったいないと思う》

「……!?」
「あぁ、主に噂の原因はその手袋だっけ?  僕は気にしないよ?  僕といる時も着けていて構わないしね」

《何でこれが薄気味悪いと呼ばれる理由になるのか分からないんだよな》

  そう言ってチラリと今も私が着用している手袋を見ながら殿下はそう言った。

「えっ!!」

  殿下の両方の発言に驚いて、殿下の顔をまじまじと見る。
  真面目な顔をして彼は語っていた。

「理由はわからないけど、手袋を外せないのは君にとってどうしても譲れない事なんじゃないの?」

《何か大きな理由があるんだろうと思ってる》

「は、はい。その通り……なのですが」
「でしょ?  だから僕はそのままで構わないし気にしないよ」

《もちろん、時と場合はあるとは思うけど、セシリナ嬢はそういう所はちゃんと分かってる子だと思うしね》

「……」

  純粋に驚いた。
  まさかそんな風に言ってくれる人がいるなんて。
  家族も他の人も頑なにいつもどんな時も手袋を外そうとしない私をとにかく変わり者だと白い目で見てくるだけだったのに。

「あ、もう大丈夫そうだよね?」

《あ、しまった!  ずっと抱きとめたままだった!》

  殿下が今の体勢にようやく気付いたのか慌てて私から離れた。
  表情からも申し訳ないという思いが伝わって来る。

  そんな殿下の嘘偽りのない気持ちに少し心を動かされてしまったからかもしれない。
  だから聞いてみたくなった。

「……もし、その話をお受けした場合、私に何か見返りはあるのでしょうか?」
「うん?」
「殿下の恋人のフリを演じるという事は……」

  私は、この力のせいで誰かの元に嫁ぐ事を全く考えていなかったけれど、フリとはいえ、殿下の恋人になんてなってしまったら、その先の縁談に影響が出るのは間違いない。

「あぁ……今、セシリナ嬢に婚約者がいないのは知ってるけど、僕との恋人のフリが終わった後の心配をしているのかな?」
「……そうです」
「もちろん、そう言われると思っていたから、その後の君の縁談は僕が責任を持って……」
「殿下!  それなら縁談よりもお願いがあります!!」
「……へ?」

  私は誰とも結婚する気は無い。
  だから、結婚しなくても生きていける術を見つけなくてはならなかった。

  ならば!

「殿下の恋人役を無事に勤め上げた後は、結婚相手より私に就職先を紹介して下さい!」
「就職……仕事したいの?  結婚じゃなくて?」

  殿下が目を丸くして驚いている。

「そうです!  結婚より仕事を求めています!  王宮での仕事を推薦して貰えませんか?」

  このままだと難しいけれど殿下の後ろ盾があれば……!

「仕事……」
  
  殿下は少し考え込んだけれど、すぐに顔を上げて口を開いた。

「まぁ、職にもよるけど推薦は出来ると思うよ……でも、本当にそれでいいの?」
「はい!」

  エリオス殿下の恋人のフリ……が上手く出来るかは別として、これは私にとっても良い話だわ。
  殿下の恋人(仮)をしている間は、お父様から急かされていた縁談の事も考えなくてもいいし、契約終了後は傷心を言い訳にしてもう結婚したくないとかなんとか言って、仕事に生きる道を選ばせてもらう。

  (これなら、一人で生きていけるしお父様も納得してくれるかも……!)

「……分かった。約束する」

  エリオス殿下が頷いてくれた。
  すると、殿下がゴソゴソと何やら紙を出してくる。

「これは?」
「契約書を書こうかな、と。口約束だけだとセシリナ嬢も心配だろう?」
「あ……はい。そうですね」
「じゃあ、それから……」



  そう言って私達は互いに取り決めた事を契約書に記していく。




  そして、だいたいの目処がついた後、最後に殿下が言った。

「ねぇ、セシリナ嬢。今更こんな事を聞くのも申し訳ないけれど、今、君には想い人はいないの?」
「はい?」
「いや、結婚より仕事と言っているから居ないだろうとは思っているんだけど……」

  そう言ってエリオス殿下は気まずそうな顔を向けてくる。
  ここまで取り決めておいて今更……

「いませんね。だから大丈夫ですよ」

  私がそうきっぱり言うと殿下は安心したように微笑んだ。
  美男子の微笑みは美しいわね。

「良かった。あ、でもセシリナ嬢、これから君に想う相手が出来た時はすぐに教えてくれるかな?  君の幸せを奪ってまで続ける事では無いから。その時は僕の事も気にしないで構わない」
「殿下……」
「その時は相手にも僕からしっかり説明させてもらう」

  そう口にするエリオス殿下の顔は心の声の時みたいに真面目だった。

「……分かりました。その時は……お願いします」
  
  正直、私が誰かを好きになるとか、そんな事は考えられないけれど殿下が気にしそうなので頷いておいた。

「それじゃ、これで契約成立かな?」
「はい」
「セシリナ嬢、今日から君は僕の恋人(仮)だ。よろしく」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします?」

  ──本当にこんな契約して良かったのかな?

  そんな不安が頭を過ぎったけれど、もう後戻りは出来なかった。



 


「エリオス殿下!」
「マリアン嬢?」
「……お姉様?」

  契約という名の話を終えて殿下が部屋から出て帰ろうとすると、待ってましたと言わんばかりにお姉様が現れた。

  (しまった! お姉様の存在……すっかり忘れていたわ!!)

  その他の衝撃が強すぎて綺麗さっぱり頭から飛んでいた。

  そうよ、エリオス殿下の恋人のフリを引き受けるという事は……
  エリオス殿下に狙いを変えたお姉様と敵対する、という事なのだと今更ながら気付き私の顔は一瞬で青ざめた。

  
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