【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第21話

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   ──何故だか今回も幸せな夢を見た。
  それは、まるで私がエリオス殿下に本当に愛されているような夢……


  夢の中はとても幸せでずっとこのままでいられたらいいのに。
  だって現実はいつか終わりを迎えてしまうから──……
  

 


「セシリナ……大丈夫?  屋敷に着いたよ」
「ん……」

  屋敷に着いて、エリオス殿下に揺り起こされた。

「あ……私、また殿下の肩に!?」
「いいって、いいって。役得だってこの前も言ったでしょ?」
「うぅ……」

  そう言ってエリオス殿下が優しく私の頭を撫でた。

《可愛い寝顔をまた見る事が出来たから僕は満足だ!》
《出来る事ならずっと眺めていたかった》

「~~!!」

  また殿下の心の声が恥ずかしい事を言っている!
  
  (うぅ、困るわ。殿下の事を好きだと自覚してしまったせいで、どんな顔したらいいのか分からない!)

  私はどうか顔が赤くなっている事がバレませんように……と願いつつ殿下の手を借りて馬車から降りた。

「それじゃ、今日はありがとう」
「いえ、私こそありがとうございました」
「緊張させてごめんね?」

  しゅんとした顔を見せる殿下が可愛くて私は思わずクスクスと笑ってしまう。

「大丈夫です!  ギルディス殿下は優しかったです」
「そう?  なら、いいけど」

《そんな可愛い笑顔で兄上の事を語るなんて……ずるいぞ》
《兄上とは何を話してたんだろう?》
《変な事を言ってないといいんだけどなぁ……》

  ……あなたの事ですよ、と言ってあげたい。

  ギルディス殿下から色々な話を聞けた。
  エリオス殿下はお兄様の為ばかりで自分の事は二の次だ。

  (エリオス殿下だって自分の幸せを考えていいはずなのに)

  家族の前ですら自分を偽ろうとしたり、好きでもない女性わたしをスプラウクト侯爵家を黙らせる為に仮の恋人にしたり。

  お願いだからもっと自分の幸せを考えて欲しい。

  きっと今のエリオス殿下は愛だの恋だのを考えてはいないのだと思う。
  スプラウクト侯爵家を完全に退ける事が出来た時がきっとこの契約の終わり。
  だからどうか私とのこの契約が終わる時、エリオス殿下を幸せにしてくれる人が現れますように。

  ……そして私はその時までこの想いに蓋をしてでも、とにかくこの人の助けになりたい!

  私は再びそう思い心に誓った。






「そう言えば、あの呼び出しは何か重大な要件だったのですか?」
「え?」

  私の頭を撫でている殿下の手がピタリと止まる。

「えっと、言えない事なら構いません!  ただ、聞いてみただけです!」
「あー……いや、セシリナにも関係ある事だよ……実はルーベンスが自供を始めたんだ」
「え?  ルーベンスお兄様がですか?」

  エリオス殿下のその言葉に私はびっくりした。
  ルーベンスお兄様はずっと自分は悪くないと言い張ったままだと聞いていたのに。

「拘束期間も長くなって来たから心が折れたんだろうね。マリアン嬢に唆された事も語り始めたから僕にも聞かせた方がいいって事で呼ばれたんだ」
「!!」

《ついでに、セシリナを襲う計画を立ててた事も語り始めたから、ボコボコにして来たけど》
《あぁ、ダメだ……思い出すだけでまた怒りが……殴り足りない》
《本当にセシリナを襲っていたら……まぁ、命も奪っていたが》
《だけど、さすがにその計画の事はセシリナには言えない。知ったら傷付く》

「……!」

  ルーベンスお兄様は、本当に洗いざらい喋り始めたみたいだ。
  そして、エリオス殿下にボコボコにされたらしい。
  そんな殿下は私を気遣ってルーベンスお兄様が私を襲う計画があった事は黙っておくつもりみたい。

  (優しいな。今更だけど私はこんなに優しい人の心の声を無断でいつも聞いてしまっているんだわ)

  罪悪感が凄い。
  だけど、心の声を聞きたくないから“私に触らないで”とは言えない。
  ううん、言いたくない……

  (エリオス殿下にはいつだって触れたいし触れて欲しい……)

  あぁ、恋心ってなんて厄介なの。
  こんな気持ちは初めてで本当にどうしたらいいのか分からない。
  蓋をしようとしてもどんどん溢れてしまう。


「これでマリアン嬢を罪に問う準備も進みそうだ」
「殿下……」
「心配しないでいいよ」

《セシリナを傷付けた罪は重い》
《絶対に償わせるから》

  殿下は心の声とはうらはらに優しく私に微笑んだ。



「そうそう、セシリナ。今度またデートをしよう?」
「デ!?  ……デート、ですか?」

  かなり私達の仲は社交界に浸透したし、ギルディス殿下とも顔合わせまでした。
  もう公認と言ってもおかしくないのに?
  まだ、アピールが必要なのかしら。

  でも、そうね。
  例えその為だとしても一緒にいられる時間があるだけでも嬉しい。

「そう。デート……駄目かな?」

《もうアピールは必要無いとか思ってるだろうか?》
《だが、手袋も買い足ししたいし》
《いや、何よりもただセシリナとデートがしたい!》

  手袋の事はやっぱり本気みたい。
  それにただデートがしたい、だなんて……嬉しい。
  思わず口元が緩みそうになる。

「だ……駄目じゃないです!」
「そ、そっか!  なら、詳しい日時はまた連絡する」

《あぁ、良かった!》
《嫌がられずに笑ってくれた!》

  私が微笑みながらそう答えた事が嬉しかったのか殿下も笑ってくれたので、胸がキュンとなった。








  エリオス殿下を見送ってから屋敷の中に入ると、お姉様と鉢合わせした。
  このパターンは何度目かしらと思う。

「お、姉様……」
「随分と楽しそうねぇ?  セシリナ」

  お姉様は何かを含んだような笑顔を私に向けた。
  もちろん経験上、こういう顔をしたときのお姉様は案の定、何かを企んでいて逆らってはいけないのも分かっている。

「てっきりグズグズ泣いていると思ったのに」
「……」
手袋あれは、あんたには不相応なくらいの高級品だったもの。使えなくなって良かったでしょう?  伯爵令嬢らしく身の丈にあった物を使いなさいって事よ」

  お姉様のその言葉は我が家をバカにしている気がするのは気の所為?

「アンネマリー様、帰られる時までセシリナの事を気にしていたわよ」
「……そうですか」

  その“気にする”が“心配”ではない事を私は知っている。

「何、その顔?  それなのに、あなたはどこに行っていたわけ?  エリオス殿下が訪ねて来ていたのよね?」
「……エリオス殿下と共に王宮へ行っていました」

  これは嘘をついてもしょうがない。
  どこからか話は伝わるだろうし。

「王宮……ねぇ、まさかと思うけどギルディス殿下に会ったりは……」
「お会いしましたけど、それが何かー……ハッ」

  そう答えた瞬間、お姉様の目の色が変わった。

  しまった!  ついうっかり答えてしまった。
  殿下の婚約者の発表があった日からお姉様の前でギルディス殿下の名前を出す事は我が家では禁忌に近い。誰もが口を噤んでいたのに!

  案の定、お姉様笑みが黒いものに変わった。

「私でもなかなか会えないのに……何でセシリナが会えるのよ!  どういう事よ、それ!!」

  お姉様が青筋を立てて叫ぶ。

「ねえ、セシリナ。やっぱり代わってちょうだいな?」
「な、何をですか?」
「決まってるでしょう?  エリオス殿下のお相手よ!」
「何を言っているんですか!」
「私、知ってしまったのよ。だって本当はなんだもの。なら、エリオス殿下のお相手は私でもいいと思うの」
「……お姉様?」

  何だろう?  どこか言い方がおかしい。
  ……ってどういう……意味?
  私が困惑した顔を向けるとお姉様がニヤリと笑った。

「ねぇ、セシリナ。これ何か分かるかしら?」

  勝ち誇ったような笑みを浮かべたお姉様がペラっと一枚の紙を私に見せる。

「え?  ……っ、それ!」

  私はその驚きと衝撃で固まった。
 
  (は厳重に管理していたのに……!?  なぜお姉様が持っているの……!)

 
  なぜなら、不敵に笑うお姉様が手に持っていたのは──……

  エリオス殿下と仮の恋人契約を結んだ時に取り纏めた内容を記載した紙だったから。

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