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最終話
しおりを挟む婚約発表をしたあの日から、目まぐるしく日々は過ぎていった。
お姉様もアンネマリー様もそれぞれ処分を受けた。
二人は貴族令嬢の身分は剥奪され、それぞれ施設や修道院送りとなった。
アンネマリー様は最後まで「私は知らない」と、足掻いていたらしいけれど、父親の侯爵様も捕まり処分を受ける事を聞き、観念したそうだ。
スプラウクト侯爵も降爵処分となり、すっかり力を失くした。
お姉様のしでかした事を知ったお父様はしばらくの間、抜け殻みたいになりお母様も暫く寝込んでいたけれど、二人ともそれなりに気持ちの整理をつけたのか、最近は以前と変わらない様子に戻って来ていた。
(結局、お姉様とはあの日に話したのが最後になってしまった)
聞いた所によると、私と会った日以降のお姉様は、大人しくなり取り調べにも素直に応じるようになったと言う。
(少しは何かが伝わったのかな? それならいいな……と思う)
二度と会う事はないと思うけれど……どうか、お姉様が元気で過ごせますように。
色々な思いを胸に秘めて密かにそう願った。
****
私は少し前から王宮に住まいを移し、王子妃教育と結婚式の準備に追われている。
エリオス殿下は、必ず毎晩、私の部屋を訪れては「おやすみ」の挨拶をしに来てくれる。
その日にあった事を話したり……ちょっとイチャイチャ……したり……
大事な二人だけの時間だ。
そして、今夜も──
「そう言えば、セシリナの力の事を聞いてからずっと思っていた事があるんだけど」
「何でしょう?」
「セシリナの瞳の色が、たまに金色に変わるって話があっただろ?」
「あ! 私は知りませんでしたけど」
その事だけれど、私自身は全く分からないのよね。
鏡で自分の顔を見ていてもそんな風に変化した所は見たことが無い。
(多分、この力が関係しているのだとは思う)
「セシリナも薄々感じていると思うけど……それさ、力を使ってる時に色が変化しているのだと思うんだ」
「やっぱり……」
「もちろん、仮説に過ぎないけどね。ただ少なくとも僕の知る限り……」
そう言って、エリオス殿下が私の手をそっと握る。
もちろん今の私は素手だ。
私は、エリオス殿下と過ごす時には手袋の着用をしなくなった。
「僕がこうしてセシリナに直接触れると」
「……」
「瞳が金色になる」
《ほら変わった! うん。こっちの色も綺麗だな》
殿下がしみじみと言った。
どうやら今、私の瞳の色は金色になっているらしい。
(心の声を聞いている最中に、色が変わる……)
「そんなに綺麗なのですか?」
「うん。普段の琥珀色も綺麗だけど金色になる時は輝いているから。不思議だね」
「そうですね」
エリオス殿下がフッと微笑んで小声で言った。
「……これは、僕だけの特権だ」
《こうしてセシリナに触れられる僕だけの……ね》
エリオス殿下が指を絡めるようにして再度、私の手を握る。
その手の優しさにドキドキする。
「えぇ、そうです。エリオス様だけです」
《……嬉しい》
私がそう言ったらエリオス殿下が嬉しいと笑ったから、私もつられて笑顔になった。
《セシリナ……可愛い》
こんな風に大好きだと思える人と素手で触れ合って微笑み合う。
まさか、私にこんな日が訪れるなんて思いもしなかった。
──あの日、エリオス殿下に出会うまでは。
「エリオス様!」
「うん?」
「大好きです!!」
「えっ! うわっ!?」
私はそう言いながら、ガバッとエリオス殿下に抱き着く。
突然の私の行動にエリオス殿下は驚いたのかそのまま体勢を崩してしまい、その勢いで私は殿下に覆い被さってしまった。
「…………」
「…………」
互いにしばし見つめ合った後、どちらからともなく笑い出す。
「出会った日みたいだ」
《サボって寝てたら可愛い子が降ってきた》
「ふふふ。サボりはダメですよ」
《いやいや、サボっていたから出会えたんだってば!》
「んー……それはそうなんですけど……」
「あの日、本当に天使が降ってきたと思ったんだよ」
《思わず見惚れたからね》
「……っ! そ、それ、前にも聞きましたけど……天使は大袈裟です!」
「大袈裟なんかじゃない」
《セシリナは天使だよ》
そう言って、エリオス殿下の手が私の首の後ろに回される。
優しく引き寄せられて、私達の唇がそっと重なった。
「セシリナ、好きだよ」
《愛してる》
「───はい。私もエリオス様の事が大好きです、愛しています」
エリオス殿下は頬を染めながら照れくさそうに続けた。
「ありがとう、あの日僕の元に降ってきてくれて」
自分を偽って過ごして来た王子様と心の声が聞こえる私。
あの日、出会ったのは偶然だったのか必然だったのか、それは分からないけれど。
一つだけ分かっているのは私達が今、こうして幸せだということだけ。
エリオス殿下は、こんな奇異な力を持つ私を受け入れてくれて、こんなにも愛してくれている──……
私もそんな殿下の事が大好きで大好きで……
「……エリオス様」
「うん?」
「この先、エリオス様がもっと自分を偽らなくてはならない日が来たとしても……」
「……」
《そうだね……そんな日も来るかもしれない》
「私はずっとお傍にいますからね?」
「……!」
「だって、私だけはあなたの心を間違えませんから!」
「…………セシリナ!」
《あはは、嬉しいな》
《それは何て心強いのだろう》
「ありがとう、セシリナ」
「エリオス様……」
そしてもう一度、私達の唇が重なる。
今度はさっきよりも強く抱き締められながら。
《愛してるよ》
(私もです、エリオス様。あなたを愛しています)
恋人のフリなんていうわけのわからない関係から始まった私達だったけど。
あなたの心の声に翻弄されては、照れて恥ずかしくて困っていた私だったけど。
今、こうしていられる事が本当に幸せ。
繋いだ手と抱き寄せられて伝わってくるあなたの声と温もりが、
これから先もこんな時間が続くのだと教えてくれている気がした───
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
これで、完結です!
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました!!
短編のつもりで始めたのに……
サラッと読める長さを期待していた人には本当に申し訳ない事になってしまいました。ごめんなさい。
(後半、当初書いていた部分を全て消して大幅に書き直しをしながら更新したせいです……)
お気に入り登録、感想……いつもの事ですが嬉しかったです。
本当にありがとうございました。
約1ヶ月続いた毎日更新の励みになりました。
まぁ、ただただ読んでくれただけで嬉しいのですが!
とにかく二人を可愛いと言ってもらい、また、幸せを願ってもらえて心から嬉しかったです。
そして、タイトル詐欺にならないように、甘々になるよう頑張った……つもりです!
大丈夫でしたかね……??
セシリナの力は謎のままにしてしまいましたが、これからの彼女は理解のある(未来の)夫と共にうまく力と付き合っていってくれると思います。
どうぞ、これからの二人の幸せを願ってやって下さい!
私に作品語らせると長いので……ここまでに。
また、いつものように新作も開始しています!
『自称“ヒロイン”の妹によると、私の婚約者は呪われているらしい ~婚約破棄される“悪役令嬢”だと言われました!~』
……また、姉妹ですが今度は姉が主人公です。
おい、妹!! って感じのタイトルです……
もし、ご興味があればぜひ!
こんな私の書く話ですが、またしばらくお付き合い頂けたら嬉しいです!
それでは、本当にありがとうございました (⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
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ありがとうございます(*´ω`*)
こちらもお読み下さりありがとうございます!!
ヾ(*´∀`*)ノ
いや、実はこの話……ついついタイトルに勢いで“甘々”なんて入れてしまいまして 笑
これはタイトル詐欺にならないように甘くせねば!
と、気合いを入れまくりました!
心の中の声が聞こえるからこその甘さになったかなと思ってます(*^^*)
ちなみに、エリオス殿下の心の声を書くのが楽しすぎて予定より大幅に長くなった話だったりします。(倍になりました)
また、お忙しくなるかもしれませんが、
未読の他の話もお時間のある時にでもゆっくり楽しんで貰えれば嬉しいです!
ハッピーエンドと完結は保証します!
最後までお読み下さりありがとうございました~(。ᵕᴗᵕ。)
ありがとうございます(*´ω`*)
何故か妙に可愛くなってしまった二人が日々の癒しになれていたなら、
本当に良かったです!
最後まで甘々な二人でお届けしました!
どうしてもセシリナを成長させたくて、
結局、長くなってしまった話でしたが、
そう言っていただけて嬉しいですε-(´∀`;)
最後までお読み下さりありがとうございました!!
(*・ω・)*_ _)ペコリ
次作も楽しんで貰えるように頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و✧
ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ
無事に最後までお届け出来ました~!
まさか、そんなに身悶えしていただけていたとは!
ヒーローが溺愛するからでしょうかね?
何故か可愛いカップルになってしまう 笑
なのでもう、私の話はこういうのが好きな人に刺さればいいな!
と思ってたりします(◍´꒳`)つ
こちらこそ、最後までお付き合い下さりありがとうございました!!
(*・ω・)*_ _)ペコリ