【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第31話 ①

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《そんなに真剣な顔をして何の話だろう……》


  エリオス殿下の心配そうな心の声が聞こえる。
  何もかも話したら、さすがに嫌われてしまうかな。

  ──そう思うだけで胸が痛い。

  だって、私はこれまでエリオス殿下の心の声を聞きすぎた。
  心の声が聞こえてしまうと分かっていても、いつだって触れて欲しくて黙っていた。
  そして私からもエリオス殿下に触れたかったから。

「……っ」
 

  エリオス殿下は私の瞳を綺麗だと言ってくれた。
  どうやら金色に変わる時もあるらしいこの瞳を。

  ──そんな優しい殿下の心の声をずっと私は……





  私はキョロキョロと辺りを見回して誰もいないのを確認する。
  皆、私達に遠慮してこっちバルコニーには近付いて来ないみたいだ。
  非常に有難い。

「……エリオス殿下、私達の婚約発表はこれからですよね?」
「うん?  そうだね。ちょっとごたついてるから、もう少し後になりそうだ」
「それなら……まだ間に合います……よね」

  お姉様とアンネマリー様が引き起こした騒動で今、パーティーの主役二人はそれどころではなくなっている。
  エンジューラ様に万が一があった時の事を考え、なるべく騒ぎ立てないように配慮した事もあり先程までの出来事は今のところ大事にはなっていない。

  (当然、あの二人はしばらく拘束されるらしいけれど)

  主役二人もさすがにそろそろ戻って来る頃だと思う。
  そしてその後に私達の正式な婚約発表を行う予定……

   ──今なら。
  正式発表前の今ならこの婚約を無かった事に……と言われてもきっと間に合う。

  (そもそもこの力の事を黙ったまま、婚約しようとした事が間違っていた)

  これは出来る事ならずっと黙っていたかった私の身勝手な気持ち。
  罪悪感を抱え続ける事になってもこのまま黙っていたかった。

  だけど、このまま隠し事をし続けたままエリオス殿下と結婚しても、罪悪感に押し潰されてしまって、きっと本当に幸せになんてなれなかったと思う。
  だから、今で良かったの……
 
「……セシリナ。それはどういう意味だろう?」

《……僕との婚約をやめたい……そう聞こえるのは気のせいだろうか?》
《それは、さっきの行動のせいか?》

「……」

  私は無言でそっと殿下から離れる。
  心の声を聞きながらだとうまく話せる気がしない。

「ねぇ、セシリナ。君が何かを抱えてる事は何となく気付いてたよ。おそらくさっきの行動も……そうだよね?  でも、それを無理に聞こうとは思わなかった。だけど……」
「………」
「そのせいで君が僕との婚約を考え直したいと言い出すのなら……話は別だ」
「え?」
「僕は知りたい。セシリナがそんな顔をする理由を」
「殿下……」

  話さなくては、と思っているのに足はすくんで動けないし、口の中もカラカラでうまく喋れない。
  なんて情けないんだろう……

  (この力の事は今まで誰にも話したことが無い。だからこそ反応が怖くて仕方ない)

  どう考えてみても肯定的な反応が得られる力では無いから。
  自業自得とはいえ、初めて好きになった人に全てを拒否されたら……私は耐えられるかしら……?

  (きっと無理ね。耐えられない)

「セシリナ、うまく話せないなら僕から聞く」
「……え?」
「それは、セシリナが普段から手袋を着用して人との接触をなるべく避けようとしている事と関係している?」
「……」

  私は無言で頷く。

「常に手袋を着けている事から考えると、接触を避けているのは特定の誰かじゃない。老若男女問わず……だよね?」
「……はい」
「実は、セシリナと出会った頃に調べさせて貰っていたんだけど、手袋の着用はかなり幼少期からだったみたいだね」
「!」

  いつのまに調べていたの!?
  ちょっと驚いた。

「あ、勝手に調べてごめん……でも、どうしてもセシリナの事が知りたかったんだ」

  そう口にするエリオス殿下の顔は申し訳なさそうだった。
  私はエリオス殿下のこういう所が好きだわ……心からそう思う。
  だから、私も彼に誠実でありたい!


「…………」


  ──よし!
  私は覚悟を決めて、顔を上げた。


「……エリオス殿下」
「?」

  私は自分の両手を覆っていた手袋を外し、そっとエリオス殿下の両手を握る。

「え!  セシリナ!?」

  殿下が驚きの声をあげる。
  戸惑うのも当然。幼少期から手袋を着けては人との接触を避けて来たのだと話をしたばかりなのだから。

《散々、触れてきた僕が言うのもおかしな話だけど……恋人とは言え、セシリナは僕に触れられて嫌じゃなかったのかな?》
《もしかして今まで無理をしていたとか?》
《もし我慢していたとしたら、僕はセシリナにどう詫びればいいんだろう?》

「無理も我慢もしていません。エリオス殿下……あなたにだけは触れられるのも触れるのも嫌ではないんです。だからお詫びを……とか、そんな事を言わないで下さい」
「え?」

《あれ?  ……おかしいな》
《今、僕はお詫びの事って、口に出したっけ?》

  不思議に思ったらしい殿下が私の顔をじっと見つめた。

《あぁ、またセシリナの瞳が金色に変わっている……》
《こっちも綺麗なんだよな》
《だけど、本当に不思議な瞳だ》

「……今、私の瞳って金色に変わっているんですか?」

《……え?》

  殿下が驚きの表情で私を見る。

《僕は今、その事も口に出したか?  いや、出してないぞ?》

「そうですね。殿下は口に出してはいません。でも、私には分かるのです」
「セシリナ……?」

《どういう事だ?  ……だが、今のは明らかに……》

「エリオス殿下、ずっと黙っていてごめんなさい。私は……私は今、あなたの心の声を読みました」
「え!?」

《心の……声、だと?》

  殿下が困惑している。
  それはそうだろう。突然、こんな事を言われて、はいそうですか。と、受け入れられるはずが無い。

「本当にごめんなさい。これが……私が常に手袋を着けて人との接触を拒んできた理由なのです」
「…………えっと、つまり?」
「私は触れている人の心の声が聞こえるのです」
「……!」

《……!》

  殿下は唖然としているようだった。
  心の声も沈黙した事から相当な衝撃だったのだと思う。

  (やっぱり……これはさすがに気味が悪いと思われてしまうわね……)

  エリオス殿下は初めからずっと様々な面で私に好意的だったけれど、さすがにこれは無理だと思う。
  ずっと無断で心の声を聞いていた女なんて気持ち悪い!
  ……そう言われても仕方が無い。


  私は自分の胸に疼く仄暗い気持ちと共に殿下の反応を待った。


「……つまり、セシリナが手袋を常に外そうとしなかったのはそのせいだったんだ?」
「え?  はい、そうです。直接触れ合わなければ、声は聞こえてきません……直接ではない時は大まかな感情だけは伝わって来ますが」
「……」

《……触れた相手の心の声が聞こえたり……感情が伝わる?》
《さっきはアンネマリー嬢やマリアン嬢に触れて心の声を聞いていた?  ……だから二人が口にしていないはずの事が分かったのか》
《そして、セシリナはずっとそうやって僕の心の声を聞いていた……?》


「……セシリナ、それは」

  少しの沈黙の後、殿下が静かに口を開く。

「……!」

  私は心臓が破裂するのでは?  ってくらいドキドキしながら殿下の次の言葉を待った。

  
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