【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第31話 ②

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「……幼少期からずっと手袋を着けていたって事はその力はその頃からなんだよね?」
「え?  そ、そうですけど………ひゃっ!?」

  私がそう答えたと同時に殿下の腕が伸ばされて抱き締められた。

「力の事を知っている人は他にいるの?」
「いません。今、こうしてエリオス殿下に話したのが初めてです」

  そう答えたら、私を抱き締めている腕にギュッと力が込められた。

「あ……の?  殿下……?」
「つまり、セシリナはずっとそれを1人で抱えて生きて来たんだよね?  不遇な環境と……あんな噂を流されながらも」

《子供の頃からずっと1人で抱えて》
《あぁ、そうか。手袋アレはセシリナが唯一の自分を守る方法だったのか》
《それは大事だし手放せないのも分かる……》

「……!」

  殿下の口からは労りの言葉ばかりで、私は思わず泣きそうになってしまう。

「エリオス殿下……その、こんな私は気味が悪いですよね?  私はこれまで何度も何度も勝手にあなたの心の声を聞いてしまいました。だから私は……」
「気味が悪いわけないだろっ!!」
「!?」

  殿下は少し身体を離して私の両肩を掴みながら、珍しく声を荒らげた。
  顔はちょっと怒っている?

「驚きはした。したけど気味が悪いなんて思わない!  むしろ、ずっと1人でその秘密を抱えて苦しんできたセシリナを思うとその方が辛い!」
「で、殿下……?」
「僕の言ってる事が本心だって、分かるよね?」

  そう言って殿下は私の頬に手を触れる。
  その手付きはいつものようにとても優しくて胸がキュンとした。

《こんな事、他人に気軽に話せるわけが無いじゃないか》
《黙っていた事が悪い事には思えない》
《そんな事よりもセシリナはどれだけの間、苦しんで来たのだろう?》
《出来る事ならもっと早く知って助けになりたかった》

  聞こえてくるのは、私を心配する思いばかり。

「どう……して、です?」
「うん?  何が?」
「私だったら、気味が悪いって思いますよ……こんなの」

  誰だって心を覗かれるなんて嫌だ。嫌に決まってる。
  なのに、どうしてそんなに優しい言葉をくれるのか分からない。

「んー……普通はそうなのかも。でもね?  セシリナ。僕はちょっと違う」
「……え?」
「僕は長い間、自分を偽って生きてきた。どうやら演じている事はすっかりバレていたみたいだけど家族の前ですらもね。だから僕はいつだって誰にも本当の思いを話せる事の無い孤独な日々を送っていた」
「あ……」

  エリオス殿下のその言葉に、ギルディス殿下から聞いた話を思い出す。

「そんな偽りばかりの僕の本当の心を口にしなくても分かってくれる人が今、目の前にいて、それが僕の愛する人なんだよ?  気味が悪いどころか僕は嬉しくて涙が溢れそうだ」
「エリオス殿下……」
「これからもそのままのセシリナで僕の傍にいて欲しい。どうしても君がいいんだ。言ったよね?  僕のお嫁さんはセシリナじゃなきゃ駄目なんだって」

《こんな事で気持ちは変わらないよ。変わるわけないだろう?  君が好きだよ、セシリナ》

  そう言ってエリオス殿下は、私の額にキスを落とす。

「僕の心の中ならいくら読んでくれても構わないから……これからもセシリナに触れさせてくれる?」

《セシリナに触れられないなんて僕は耐えられない!》

「ふぇ?」
「……ははは可愛い。やっぱりセシリナはいつだって可愛いね」

《変な力があったとしても可愛ものは可愛いよ》

「!?」

  どうしよう。どうしたらいいの?
  嫌われる覚悟で話をしたのに、エリオス殿下が甘い!
  まさか、こんな無条件に受け入れられるなんて思ってもみなかった。
  だから……どんな顔をしたらいいのか分からない。


「……だけど、一つだけ不満だな」
「え?」

  けれど、エリオス殿下は少し不満そうな声を出した。

「仕方ないと分かっているけど……セシリナはこの秘密を僕に話したら“もう嫌われる”“婚約の話は無かった事にされる”とか思ってたわけだよね?」
「ゔっ……!」

  それはその通りなので思わず目を逸らしてしまう。

「……そこは、僕を信じて欲しかったな」
「あ……」

  確かに、そんな事を考えていた私はエリオス殿下の気持ちを信じ切れていなかった事になる。

《つまり、まだまだ僕の愛は伝え足りない……と、そういう事だよね?》
《よし!  それなら、これから目一杯伝えていくから覚悟して?》

「あぅ!?」
「ははは、その反応も可愛いな」


  そう言ってエリオス殿下が顔を近付けてくる。
  あ、これはキスされる……そう思って構えたのに何故か殿下は途中で固まった。

「……」
「エリオス……殿下?」

 どうしたのかしら?  ちょっと心配になる。
 あと、ちょっぴり残念……


《いや?  …………待てよ?》
《触れている時の僕の心の声を読んでいた?  それって今みたいな時だよな……》
《え?  あれ?  それって……》
《…………………………っっ!!》

  何故か、エリオス殿下が一瞬で真っ赤になった。

《いやいやいやいやいやいや!  待て待て待て待て待て!!》
《それって、これまでずっと僕のセシリナへ感じてた、可愛いとか可愛いとか可愛いとか可愛いとか可愛いとか……全部ダダ漏れしていたって事じゃないか!?》

「あ!」
「!!」

《その反応!!  やっぱりそうなのか!!》

  私の反応で真っ赤になったエリオス殿下が今度は涙目になる。
  え、どうしよう!

《待った!  待ってくれ!  それは……恥ずかしい!!  さすがに恥ずかしい……!!》

「え、いや……あのですね……」

《さっき、いくらでも僕の心の中を読んでいいよ、とか格好つけて言ったけど!  それはこれからの事で、過去は恥ずかしい!!》

「あの、ご、ごめんなさい……」

《あ、違っ!  謝らせたかったわけじゃ……うわぁ、つまり僕の気持ちは告白前からずっとバレバレだったのか……あぁぁ、これは恥ずかしい以外の言葉が見つからない……》

「え? それは違います!」

《ん?  違う?  どういう事だ??》


  気付けば大パニックを起こしているエリオス殿下の心の声との会話が開始していた。


「その、たくさん照れてしまう言葉の数々は聞いてしまっていましたけど……その、そういうものかと思っていまして……ですから、エリオス殿下に自分が好かれているとは夢にも思っていなかったです……」
「!?」

《何でだ!!》
《それは鈍すぎるぞ!?》
《しかも、それだと本当の僕も軽い男みたいじゃないか!  僕がこんな風に思うのはセシリナだけなのに!!》

「鈍……そ、そうなんですか?」
「~~……!」

《これは……》
《伝わっていなかった事を安堵すべきなのか、がっかりすべきなのか分からないぞ!》
《そんな所もひっくるめて愛しいけど!》

「……いっ!  だ、だって、初めてなんです。その、男性に好きだ、と好意を向けられたのも自分が好きだと思ったのも……全部初めてで……よく分からなくて」

  よく分からなくてひたすら翻弄された。
  だけど、嬉しくて幸せで……今だって照れくさくて困る事はあってもやっぱり幸せなの。

《セシリナ……》

「……セシリナ……好きだよ。ちょっと心の声も情けない僕だけど……これからも好きでいてくれる?」


《好きでいて欲しいんだ》


「……!  もちろんです!  私はどんなエリオス殿下も大好きです」

  そう言って私は自分からエリオス殿下に抱き着いた。

《セシリナって、抱き心地も気持ちいいんだよなぁ》

「っ!  殿下!!」
「ははは、だって本当の事だしね」
「もう!」
「そうだ、セシリナ。今度デートする時は手袋しないで手を繋いで出かけよう?」

《実はずっと素手で手を繋いでセシリナとデートがしてみたかったんだ》

「……!」

  その言葉を聞いて私はあの日の夢を思い出した。
  絶対叶わないと思っていた。

  ───あぁ、あの時の夢が本当に叶うんだ。
  嬉しい!

「私もです!」

  私は嬉しくて自分から更にギューッと強く殿下を抱き締めた。
  殿下も嬉しそうに抱き締め返してくれた。




  そうして私達は、

「いつまでイチャイチャしてるんだよ……皆、遠慮してバルコニーに立ち入れなかったみたいだぞ!」 

  と、やって来たギルディス殿下に怒られるまで、ずっと抱き締め合っていた。

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