【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第32話

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「全く……イチャイチャも程々にしておいてくれよ」
「いや、兄上。分かっているんだけど、セシリナが可愛すぎて我慢出来ない」
「それは惚気か!?  そこは我慢しろ!!」
「だから、可愛い過ぎて無理なんだって……」

  エリオス殿下が恥ずかしい事を物凄く真面目な顔で言っている。
  一方のギルディス殿下はとっても呆れている。

「ったく、婚約でそれなら結婚したらどうなるんだよ……」

《もちろん、デロデロに甘やかすに決まってる》
《セシリナは甘やかされる事に慣れていないだろ?》

  ──あれ?
  何で声が?  と思ったらエリオス殿下がそっと手を繋いできていた。
 
  (そう言えば、手袋を外したままだったわ)

  私はコクリと頷く。
  両親に甘やかされた記憶……どう辿っても思い当たらない。

《やっぱりな》 
《今のうちに覚悟しておいてね?》

「!」

  殿下の言葉にポポポと私の顔が赤くなる。
  それに、この心の声とのやり取りは何だかエリオス殿下と秘密の会話をしているみたい……

  (どうしよう!  すっごく気恥しいわ!!)
 

  ……こんな風に力を使う日が来るとは思いもしなかった。










「──そして、最後にもう既に知っている者も多いとは思うが、第二王子、エリオスの婚約がこの度正式に決まった。エリオス、バルトーク伯爵令嬢こちらへ」
「はい」
「は、はい」

  ギルディス殿下の言葉を受けて私とエリオス殿下は前に進み出る。
  既に足はガクガクよ……
 
「この度、エリオス殿下と婚約しました、バルトーク伯爵家の次女のセシリナでございます。よろしくお願いいたします」

  私がそう挨拶をすると会場からは拍手があがったのでホッとする。
  それでも、所々で「あの噂の……」「薄気味悪い」と言った声が漏れ聞こえてくる。

  だけど、もう下は向かない。そう決めた。
  誰が何と言おうとも、エリオス殿下が私を選んでくれたのだから。


「……セシリナ」
「?」

  横にいるエリオス殿下が小声で私の名前を呼んだので顔を向けると、

  チュッ

「!?」

  エリオス殿下が私の額にキスをした。
  その瞬間、黄色い悲鳴があちこちからあがる。

《ほら、見せつけておかないとね》
《セシリナは可愛いからさ》

「~~っ!」

  公衆の面前で婚約者にキスをする王子と顔を真っ赤にする初心な婚約者わたしの様子を、周囲は微笑ましい気持ちで見てくれていた。

  …………けれど、すぐにそんな雰囲気を壊すような声があがる。

「ははは、これはこれは見せつけてくれますね、エリオス殿下」

  私は声のした方へと顔を向ける。

  (……誰かしら?)

  と、思っていたら、エリオス殿下がとても嫌そうな顔をして小さな声で呟いた。

「……出た。スプラウクト侯爵」
「え!」

  どうやら、その声の主はアンネマリー様の父親、スプラウクト侯爵らしい。

  (ダメだわ。まだまだ、人の顔は覚えきれない……)

「この度は、婚約おめでとうございます、と言いたい所ですがね……本来であれば我が娘がそこに居たはずだと思うと、なにぶん複雑な気持ちですな」

  はっはっは、と笑うスプラウクト侯爵の目の奥は笑っていなかった。

「そなたもしつこいな、侯爵」
「いやいや、家柄も美貌も教養も何もかも優れている我が娘を差し置いてどんな令嬢を選ぶのかと思ったらあまりにも娘の足元にも及ばなかったものでつい……失礼!」
「彼女の魅力は僕だけが知っていればいいので、どうぞお構いなく」
「ははは、そうですか」

  エリオス殿下とスプラウクト侯爵の間には明らかに火花が散っていた。

  (そう言えば、いくら話しても平行線だったと言っていたわ)

「……今、我が娘はこの場にはおりませんがー……」
「何を言っている。手違いなどでは無いだろう」

  そう言いながら、ギルディス殿下が割り込む。

「ちょうど良かった。スプラウクト侯爵、先程そなたの自慢の娘がを言っていてね」
「!?」

  ギルディス殿下の言葉にスプラウクト侯爵の顔が引き攣る。

「は、はて?  お……面白い事……ですか?」
「そうなんだよ。侯爵とアンネマリー嬢はどうもこのパーティーでとても楽しそうなを考えてくれていたそうだね?」
「……よ、余興……」
「ぜひとも、その話をじっくり聞かせてもらいたいなと思っていたのだ」
「え……あー……それは……」
「とても楽しそうな計画だったそうだな?」
「で、ですから……それは……」

  ギルディス殿下がジリジリとスプラウクト侯爵を追い詰めていく。
  一方のスプラウクト侯爵はますます、顔を引き攣らせていく。

  (え、何これ……)

「エ、エリオス殿下……これって……」
「うん。兄上は相当ご立腹だね」

《僕もセシリナがエンジューラ嬢と同じ目に合わされそうになったら同じ事をするだろうな》
《いや、もっと……地獄の苦しみを……》

  私の肩を抱き寄せたエリオス殿下が物騒な事を言う。

「地獄の苦しみ……ですか?」
「そう。生きてる事を後悔するような、ね。でも簡単には死なせない」

《セシリナに手を出した事を一生かけて後悔させてやるとも》

「そ、そうですか……」
「うん」

  エリオス殿下の目は本気だった。
  こ、これは、この先私がうかつに拐われでもしたら、犯人達は死ぬより辛い目にあいそうだ。

  (色んな意味で気をつけなくては!)

「……それで結局、スプラウクト侯爵は何がしたかったのでしょう?」

  私はギルディスに連行されて行くスプラウクト侯爵を見ながら呟いた。
  どうもあの様子だと侯爵はアンネマリー様の今回の計画に手を貸していたみたいだ。

  (招待状の無いお姉様が、ここに入れたのも侯爵の力があったからなのね……)

「最後の悪あがき……かな?  あとは単純に黙っていられなかったんじゃないかな?」
「あー……」

  娘可愛さに物事がよく見えなくなっていたのかもしれない。
  ……お父様と同じね。

  そして、思う。

  ──お姉様。
  お父様もさすがに、そろそろお姉様のしでかした話を聞いたところでしょうね。
  今、どんな気持ちでいるのかしら? 


「……エリオス殿下」
「うん。マリアン嬢に会いたい?」
「!」

  驚いた。
  私はまだ何も言っていないのに!

「はは、僕はセシリナみたいに心の声は聞こえないけど、セシリナの事なら分かるよ」
「うー……そんなに私は分かりやすいですか?」

  それは、未来の王子妃としてどうなのだろう?
  心配になってしまう。

「違う。僕がセシリナをずっと見て来たから分かるだけだよ。僕はセシリナの事ばかり考えてるからね」

  エリオス殿下はとても優しい目で私を見つめながら言った。

「……!」

  なんてずるいの!
  そんな優しい目でそんな事を言うなんて!!

「その反応……本当に可愛いな」
「殿下!!」

  あはは……とエリオス殿下は、私をからかうように笑った後、真面目な顔付きになって言った。

「それで真面目な話に戻すけど、マリアン嬢はこのまま拘束して事情聴取を終えた後はもう伯爵令嬢を名乗る事は出来なくなる」
「……!」
「細かい点はこれからの供述次第でもあるから確定では無いけど、がくだされる事だけは決定している。マリアン嬢は前科が多過ぎたからね」
「それは……」

  そんな予感はしていた。お姉様はこのまま追い出される事になる、と。
  つまりお姉様と私はこのままだと二度と会う事は無い。
  だから私は……


「……会わせて貰えますか?」
「一度だけだよ。それと僕も立ち会う。それが条件だ」
「それで構いません。ありがとうございます」


  私がお礼を言うと、エリオス殿下は何も言わず私をただそっと抱き締めてくれた。


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