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第七話 本当に愛されてるみたい
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───
「婚約破棄ですって!?」
ディアナは父親から聞いたその言葉に自分の耳を疑った。
やはり、この間フレデリック様から聞いた言葉は間違いでは無かった……そういう事になる。
「どういう事だ? ディアナ。しかも殿下はお前と婚約破棄した後は、平民の女を婚約者にすると言っているぞ」
「……っ!」
「お前は、平民の女に殿下を取られた。情けないと思わないのか!」
「わ、私だって……!」
「お前と過ごした婚約期間は地獄のようだった……そこまで口にしていたんだぞ!」
───どうしてそこまで言われないといけないの?
(憎い……ライラックが憎い)
当たり前のように殿下の側にいて笑っているあの女……
そこは私の場所となるはずだったのに。
(許さない……絶対に許さない! 痛い目を見せてやらないと気が済まないわ!)
そうしてディアナはライラックを呼び出す事にした。
それが自分を破滅に導くとも知らずに。
───
─────
「フレデリック様は女の嫉妬ってどう思います?」
「……え?」
今朝、また悪役令嬢ディアナの夢を見てしまったせいか、無性に聞きたくなってしまった。
今日は王宮で勉強の日だったのだけど、なんと休憩中にフレデリック様が私の元を訪ねて来てくれた!
(凄いわ! これって虜になっている証拠よね?)
「……最近のお妃教育ってそういう勉強をするものなの?」
「え? ま、まさか! 違います」
「でも……」
フレデリック様の視線が、ちょうど今、私が開いている本に向かう。
直前まで私が勉強していたのは王家の歴史で、そこは家系図が載っているページだった。
「王家の家系図は複雑じゃないか」
「……」
それは否定しない。
歴代の王様達は、正妃だけでなく側妃やら愛妾やら……多くの女性と関係を持っていたようで家系図は複雑に絡み合っていた。
(こういうのって絶対後々、跡継ぎで揉めるのよねー)
でも、物語のフレデリック様は本来、愛妾にしかなれないライラックを正妃にしようと奮闘する。まぁ、それは悪役令嬢ディアナが退場した後の第二部の話。
(ふふん、残念だけどそんな未来は絶対に阻───)
「ディアナはもしかして、僕が他の女性に目を向けるかもって心配をしている?」
「……え?」
突然、フレデリック様に手を取られてそんな事を言われたのでドキッとした。
(し、心配というか、このままでは本当に起こる事というか……でも、そんな未来は絶対に変えて……)
「ディアナ、僕は……僕にはディアナだけだよ」
「フレデリック……様?」
フレデリック様がギュッと私の手を握り込む。
「ディアナとの婚約は政略結婚だったからディアナも不安になるとは思うけど、僕はディアナがいてくれればいいから他の人を薦められる事が無い様に頑張ろうと思っている」
「えっと……?」
頑張るって何を? それに何だかこれ凄い将来の約束……
これもあの効果なの?
「まずは僕の立場を強くしないとね」
(それは、第二部でのフレデリック様の課題……)
ライラックを正妃に……と求めるフレデリック様は、文句を言わせない為にまず自分の立場を強めようとしていたわ。
「それから、ディアナには常に僕に夢中になっ…………あ、いや。うん、これはなんでもない」
「……」
(どうしよう……本当に愛されてるみたい)
この年で愛とか語るのは早いかもしれないけど、確実にフレデリック様の矢印は私に向いているわ!
「コホンッ……とにかく、ディアナ。頑張るから安心して僕の元に来てね?」
「フレデリック様!」
(私も頑張るわ!)
頬を赤らめながら、そう話をしてくれるフレデリック様に私はまた惚れ直す。
このまま突き進んで、ヒロイン・ライラックには絶対に負けないんだから!
───五年後。
「────どうか、フレデリック様が私に夢中になってくれますように───……よし、これで今年も完璧ね!」
前世を思い出してから、早いもので五年が経った。
そう。フレデリック様と婚約してもう五年……そして、物語の時間軸まであと、一年。
(大丈夫……フレデリック様は変わらない……)
好きな人を虜にするあの儀式。
定期的にあの方法がが載っていた本を探しているものの結局今も見つからない。
結局、効果の持続性が分からなかった私は、一年毎に儀式の更新をする事にした。
その結果───
「おはようございます。お嬢様、本日のお花です」
ノックの音と共に届けられるフレデリック様からのお花。まさか、五年間一度も途切れずに贈られ続けるとは思いもしなかった。
(お菓子でなくて良かったわ………)
そうでなかったら今頃……プクプクしたまん丸ディアナが誕生していたかもしれない!
止めてくれた人達には本当に感謝している。
「お嬢様、本日のご予定は?」
「午前中はフレデリック様に手紙を書くわ。午後は……」
「手紙……」
メイドがチラッと隣の部屋に視線を移した。
「どうかした?」
「いえ、あの殿下とお嬢さまの微笑ましい報告……ゲフンゲフン……お手紙は何冊目までいくのかと思いまして……」
「何それ、大袈裟ねぇ」
フレデリック様との手紙のやり取りは変わらず続いているのだけど、とにかく量が多いので二年前から冊子のようにして纏めて別室に保管している。
「フレデリック様も驚くくらいまめよね」
物語で見ていたフレデリック様とは別人のよう。
それも、あの“好きな人を自分の虜にする方法”のせいなのかしら?
「殿下はお嬢様の事をすごく愛していらっしゃいますからね」
「……あ、い!」
「お嬢様、ご存知ですか? 最近は婚約する令嬢が増えたのですよ」
「どういう事?」
話の流れがよく分からず聞き返すと、メイドはふっふっふと笑いながら説明してくれた。
「お嬢様と殿下の仲睦まじさにあてられ、殿下の婚約者の座を狙っていて振られた令嬢達が他の方と婚約しているそうです」
「まあ!」
(それはいい事ね! ライバルが減るのは嬉しいわ!)
最大の懸念はもちろんヒロインのライラックだけど、他の令嬢達からもフレデリック様は常に狙われていた。
完全に私の思い描いた展開になっているわ!
ただ、少し……
思い描いた未来がやって来ているはずなのに、私は少しだけ不安になっている事があった。
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