【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea

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第十七話 崖っぷちのヒロイン (ライラック視点)

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  ─────有り得ないわ!
  こんなのは嘘、まやかし!  何かの間違いよ!

  私、ライラックは今日も『ディアナ様を守る会』とやらの会員に悪役令嬢ディアナとの接触を阻まれていた。

「……何が守る会よ!  ようするにファンクラブ?  何で私に出来ないであの女に出来るのよ。頭、とち狂ってるんじゃないの?」

  しかも、どいつもこいつも私の事を“ピンク”と呼んでくる。
  髪色のせいだとは思うけれど、私にはとっても可愛いライラックという名前があるというのに誰も呼んでくれない。

  私はそんな文句を言いながら職員室に向かっていた。
  補習受講者一覧にどうやら私の名前が載っているらしいとは聞いた。でも、きっと嘘っぱちだと思って無視していたら、とうとう呼び出されてしまった。
  この私が補習ですって!?
  あの教師共は不正を隠蔽するだけでなく、私に補習まで受けさせようとするなんて!

  (ヒロインを何だと思ってるのよーーーー!)


────


「え?  このままじゃ、進級が危う……い?」
「そうだ。毎年、最下位クラスの者達の通る試練ではあるのだが……」
「……」
「留年する事は可能……ではある。だが、失礼だが君は平民出身だろう。学費の支払いはギリギリのはずだ」
「っ!」

  学費は身分の階級で金額が違う。
  平民が一番安いけどそれでも確かにギリギリ。多く払う余裕なんて……無い。
  だからこその特待生枠だったのに!

  (このままじゃ、王子妃にもなれず、学園も落第……嘘でしょ!?)

  黙っていられなくなった私は目の前の先生(あの日私を運んだおっさん)に訴える事にした。

「この学園はどうして、ディアナ・クワドラント侯爵令嬢ばかりを優遇するのですか……」
「はぁ?」
「どうして本来私の物になるはずの成績をあの人の成績にするんですか?」
「……?  すまない。何の話だ?」

  すっとぼけるのね!?  やっぱり学校もグルなんだわ!

「入学試験の結果も、 実力テストの結果も……この間の期末試験の結果もディアナ・クワドラント侯爵令嬢の成績はあんなものじゃないくらい酷いんです!  本当は特待生になれるような成績のはずないんです!  あれは不正です!」

   この間、行われた期末テストの結果も悪役令嬢が一位だった。
   あの女はどこまで不正を続ける気なの?

  (まさか!  このおっさ……先生も悪役令嬢に身体を使って落とされたんじゃ……?)

「王子に学園長に先生まで?  ……汚いわ」
「……?  何をブツブツ言っている?」 

  私は先生を睨む。
  先生は、はぁ……と大きくため息を吐きながら言った。

「知っているか?  ディアナ・クワドラント嬢は授業中も気を抜かない」
「は?」
「授業中は、お前みたいに机に伏せって寝ていたり、終始、上の空で何かを妄想してニヤニヤした顔を浮かべていたりなどしない。常に真面目に話を聞き、分からない事はちゃんと後から質問し疑問を残さない」
「……」

  この先生おっさんは何を言っているの?

「学園に入学しても王子妃教育は続いていると聞いているのに学業を疎かにすることは無いそうだ」
「王子妃教育……」

  それは後に私が受ける事になるもの。
  あの女は今、それを受けてる……?  まさか、このまま婚約破棄せずに王子様の妃になるつもり?
 
「試験期間中だって誰よりも勉強している。図書室で殿下と切磋琢磨して勉強している姿を見ると王室の未来は明るいと思えてくるな」

  ──はぁ?  王族になるのは私よ!  王子様に見初められるんだから……

「で?  何の話だったか?  成績が入れ替わってる?  そんな事は有り得ん」
「なら!  私のこの成績は……!」
「授業を真面目に受けていない者の出す正当な結果だろう?」
「……!?」
「お前、テスト前は何していた?」
「え……」
「少しでも勉強したのか?」
「そ、れは……」

  どうしてよ!  
  小学生でも解けるレベルの学力の世界なんだから、勉強なんかしなくたって……!

「お前と同じ境遇の平民でもそこそこの成績をとっている者はいるからな。単純にやる気の問題だろう」
「……なっ!」
「とにかくまずは補習だ。補習を受けてそこで一定の成績を……」

  苛立ちのせいで、先生の話はもう頭に入って来なかった。


────


  (ふざけないでよ!  何でこの世界はこんなにも私に優しくないのよ!)

  私は怒りながら廊下を歩いていた。

「───見て!  ディアナ様と殿下よ!」
「美しくてお似合いの二人……」

  そんな声が聞こえてきて顔を上げると、その先には私の未来の夫が、今にも蕩けそうな笑顔で悪役令嬢を抱き寄せている。

  (はぁぁ?  何してんの!)

「もう、お二人の空気が甘くて甘くて……」
「入り込めませんわ」
「知ってます?  二人の手紙のやり取りはお互いの想いが溢れ過ぎて凄い重量だったそうよ!」
「ええ、伝説級だとお父様から聞きましたわ。運ぶのが大変だったとか……」

  おそらく悪役令嬢ディアナのファンだと思われる令嬢たちの噂話。
  どいつもこいつもディアナ、ディアナ、ディアナ……
  伝説の分厚い手紙!?  何よそれ!
  聞いてるだけで腹が立ってくる。

「……でも、不思議ですわよね、婚約した頃のお二人はどちらかというと……」
「ですわね。あ、そういえば当時、お父様に言われましたわ。殿下は婚約者の事があまり好きではなく不満を持っていて不仲そうだから、殿下の妃の座を狙ってみろ!  と」

  (───え?)

「そんな二人が今やこんなにもラブラブに……」
「なんでも突然、殿下の様子がディアナ様にメロメロに変わったとか!  ふふ、きっとディアナ様の魅力に気付いたのですわね!」
「素敵ですわーー」

  (突然、様子が変わった?)

  あの頭の中がお花畑のような令嬢達は素敵とか言っているけれど、相手は悪役令嬢よ?  そんな単純な話のはずないじゃない!
  やっぱりあの女が私の王子様に何かしたんだわ!
  それで物語がおかしな事に…………!  許せない!

「これは調べなくちゃ……」

 
◆◆◆◆◆

 

  ───私と違って頭が空っぽのお花畑令嬢達はたくさんの噂話を聞かせてくれた。
  大半が王子様と悪役令嬢のイチャイチャエピソードなのは腹が立ったけど、重要な情報も手に入れた。


「行方不明になった王家の本……ねぇ」

  それもどうやら禁忌の秘術が載った本だとか。

「……怪しいわ」 

  あの悪役令嬢の事だもの。
  きっと、その本を盗んで王子様に術を掛けたのよ!  それで無理やり気持ちを心変わりさせたんだわ!
  王子が本当に好きになるのは私なのに!  卑怯な手で横取りしやがった!

「なんて、汚い手を使うの……さすが、悪役令嬢だわ……でも、返してもらうわよ、私の王子様!」

  私はどうにかしてあの女の化けの皮を剥がす方法を画策した。

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