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第二十二話 夢と現と
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──
「ディアナ・クワドラント侯爵令嬢! 今この場でこれまで君が犯した数々の罪を明らかにさせてもらう!」
「なっ……殿下!?」
「こうなるとは残念だよ、ディアナ。僕はあれだけ君に警告をしていたのに」
「……」
学期末に行われる学園のパーティー会場に、フレデリックの大声が響き渡る。
ライラックへの嫌がらせがどんどんエスカレートするディアナに散々警告をし続けたものの、一向に分かってもらえる様子が無かった為、このような手段に打って出る事になった。
「待ってください! 殿下……私はっ!」
「ディアナ、本当に君は反省しないのだな」
「反省……ですって!? どうしてこの私が! 悪いのはそこの平民女ですわよ!?」
「っ!」
ディアナに指をさされたライラックはビクッと身体を振るわせる。
「……この期に及んでまだ、彼女を脅すのか……大勢の前でこれだけは言わないでおけたら……と思っていたが」
「殿下……?」
「ディアナ……君は不正な方法を使ってこの学園に入学したそうだな! 証拠もある!」
「!!」
フレデリックのその言葉にディアナの顔は真っ青になった。
◇◇
「──ディアナ。君は侯爵家からも勘当されるそうだね。まあ、その侯爵家も降格処分だけど」
「……殿下……それに」
「こんにちは、ディアナ様」
その日、断罪された日からずっと牢屋に入れられているディアナの元へとフレデリックとライラックは訪問をした。
ディアナからすれば絶望しかなく、傷口に塩を塗られるような行為だ。だけどディアナは強がってみせた。
「あーら! 二人そろって私の事を笑いに来たのかしら? 随分とお暇なのねぇ?」
「……最後に様子を見に来ただけだ。相変わらずの減らず口だな。これは自業自得だよ、ディアナ。君のした事は許される事じゃない」
「……フレデリック様、そんな言い方はよくないですよ!」
ディアナに対して冷たい声を向けるフレデリックにライラックが軽く諌める。
「私は、確かに嫌がらせはたくさん受けましたし、危ない目に遭いそうにもなりましたけど……でも、そんな言い方は可哀想です……」
「あぁ! ライラック。本当に君は優しいね」
「いえ、そんな」
フレデリックはライラックへと微笑むと二人はそのまま見つめ合った。
自分の目の前でイチャイチャし始めた二人にディアナは牢の中で、どうして私がこんなものを見せられてるのと絶望と悔しさを味わう。
あまりにも自分が惨めで肩を落とした。
(もう、何をしても無駄なんだわ)
婚約は破棄されたし、家からも勘当される。
貴族令嬢ではなく、自分が散々バカにしたライラックと同じ平民となる。
ライラックは王子妃になろうというのに。
「私はただ、殿下が好きだった……だけなのに……」
ディアナは泣き崩れながらそう口にした。
「ディアナ様。ディアナ様は間違いだらけだったんです。ディアナ様は一度でもフレデリック様の気持ちを考えた事はありましたか?」
「殿下の気持ち?」
「それに、どうしてもっと自分を磨く努力をしなかったのですか? 外見ではなく内面を!」
「なっ!」
ライラックにそう言われるのは屈辱でしか無かった。
でも、もうディアナには反論する気力は残っていなかった。
(確かに私はいつも外見を美しく着飾ることばかり……殿下の気持ちも……)
「帰って!」
「ディアナ?」
「ディアナ様?」
「二人とも帰って! 二度と私の前に姿を見せないで!」
(これ以上、私を惨めにさせないで!)
それから数日後、悪役令嬢ディアナはこの国から追放された。
─────
───
(そんな未来、絶対に嫌!)
私はまたしても長い長い夢を見ていた。
“悪役令嬢”ディアナとしての世界の夢。
大好きなフレデリック様がライラックと幸せになろうとする世界……
(嫌よ! 私がフレデリック様と生きるの! 追放なんかされない!)
私は声にならない声で叫ぶ。
(現実は違うわ! フレデリック様はこんな冷たい目で私を見る人じゃないもの!)
初めて会ったのは、王宮の庭だった。
お父様にくっついて王宮に行った日。フレデリック様は勉強が嫌で(多分)サボっていた。
そんな彼に、私はお母様から受け売りの“勉強の大切さ”を説いた。
今思えば王子様相手になんて事を……とは思うけれど、あの頃の私は怖いもの知らずだった。
───とにかく楽しかったの。
だから、たとえ政略結婚でも婚約者になれた時は嬉しかった。
何故か、その後のフレデリック様は全然口を聞いてくれなかったけど、最終的には“呪い”のおかげで仲良くなれた。
私は呪いと前世の記憶による物語を反面教師にしてここまでやって来た……
もう現実の世界のストーリーは大きく変わってしまっているのに、こうして何度も何度も夢を見るのは何かの“警告”なのかしら?
(ずるい手でフレデリック様の気持ちをねじ曲げてしまったから?)
「……」
夢から覚めたらフレデリック様に正直に話そう。
“それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いなんです”と。
それでたくさん謝って……でも、私がどれだけフレデリック様のことを昔から大好きなのかをちゃんと伝えて……それで新たな関係を築きたい───……
と、考えていたその時だった。
───ディアナ!
(フレデリック様の声?)
───ディアナ、起きて?
(起きて?)
───早く起きて、また僕の大好きな可愛い笑顔を見せて?
どうしてそんなに心配そうな声を出すの?
私は辺りをキョロキョロと見回すけれどここは何も無い真っ白な世界。
そういえばいつもならストーリーのキリのいい所や終わりで目が覚めるのに……今日はどこか変だわ。
(何で……? あっ!)
そこで私はようやく思い出す。
この夢を見る前に、物凄い眠気に襲われた事を。
───屋敷に何か贈り物が届いた。
私宛てになっていたけれど、差出人が不明で正直とっても怪しかった。
……ディアナ様はお部屋で待っていて下さい。危ない物かもしれないからと言われて私は部屋で待つ事にした。
(そうだわ! そのすぐ後に何だか妙な香りがして……)
何これ? そう思った時には酷い眠気に襲われて……気付いたらここ、夢の中だったわ。
(あの香りは何だったのかしら?)
───ディアナ。
フレデリック様の私への呼び掛けは続いていた。
───君を愛してるよ。僕はディアナにたくさん言いたい事があるんだ。
私に言いたい事? 何かしら? でも、そうね。私もあなたと話したい。
───だから、起きてくれ。
フレデリック様のその言葉と共に眠気に襲われた時とは違うどこか甘い香りが辺りに漂う。
(また香り? ……これは、何?)
「……!?」
そして、次は何か温かいもので自分の身体が包まれたような気がした。
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