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閑話 ヒロインの大誤算③
しおりを挟む「ふふん、悪役令嬢は今頃どうなってるのかしら~~」
私はめちゃくちゃ浮かれていた。
だって上手くいっていれば今頃、邪魔者ディアナは……
「さすが私、主人公! まさか“王家の秘術“”について知っていた人に出会えるなんて!」
やっぱりこの世界は私の為にあるのね!
と、私は感激していた。
悪役令嬢ディアナが卑怯な手を使って私の王子様の心を奪い、物語をねじ曲げたと確信した私は、多くの人にその本の事を訊ねた。
でも、殆どの人が行方不明になった話は聞いたけれど“中身までは知らない”という。
だけど!
街にまで出て聞き込みをしていたら、遂に見つけたのよ!
あの本の事を知っている人!
(よぼよぼのお爺さんだったけどね)
なんでも昔、王宮の図書室に勤めていたとかで目にしていたとか……なんちゃらかんちゃら。(うろ覚え)
『あの本は間違いなく呪いの本じゃった』
爺さんはそう言っていたわ。私はもっと詳しく! とせがんだわ。
『だが、不思議でのう。載っている事柄の大半が呪いと言うには可愛らしい内容のものばかりでのう……』
この爺さんの話は長かったわ。
もっと早くさくさくスピーディーに話をして欲しかったのに、ちんたらちんたら回り道しながら話された。
『ちょっと婆さんにかけたくなるような可愛らしい呪いが多くてな……だから、儂もちょっと試しに……』
あなとたとお婆さんとの惚気エピソードなんか要らないわよーー!?
私はイライラしながらもなんとか話の続きを聞いたわ。
『おそらくだが、前半に記載されている呪いはカモフラージュだと儂は思っていた』
『カモフラージュ?』
『そうじゃ。あの秘術の本、後半にはちゃんと呪いと呼べるものが記載されていてな。だがそこの頁に辿り着くまでにたくさんの可愛らしい呪いが載っておる』
『どういうこと?』
この爺さん、勿体ぶってばっかりで話が進まなーーーーい!
『つまり、タイトルに惹かれて読んで見ようと手にした者に、何じゃこれは……と思わせるつもりじゃったのではないかと』
『……えっと?』
『誰かを恨んでいてそいつを呪ってやりたいと思って開いたはずの本が、片思いの人と偶然会える! 片思いの人と話せるようになる、両思いになれる……そんな内容だったら求めていたのと違ーーう! となるじゃろ?』
『まぁ……そうね』
『それにおそらく、前半の呪いはデタラメ。適当じゃ』
『適当!?』
『あのような呪いを実行するのは子供くらいなものじゃろう。いい大人は恥ずかしい』
フォッフォッフオッとその爺さんは笑う。
『でも、待って? 前半は子供騙しのテキトーでもちゃんとした“呪い”の方法も後ろに載ってるのよね? そっちはデタラメなんかじゃないんでしょ?』
『おそらくは』
『何か覚えている呪いは無いの? 私にも出来そうなもので! あったら教えて!』
『お前さん……まさか、人を呪う気なのか?』
爺さんが怪訝そうな目で私を見る。
(チッ! そこは流されてよ! 使えない爺さんね……)
『まさか! そこまでじゃないわ。呪い殺すとかではなくて、軽めの何かでいいの! 痛い目を見せてやりたい人がいるのよ!』
私は必死に頼み込む。
『……儂が今でも覚えているのは一つだけじゃ。昔、腹の立つ同僚がいてのう……ちょっとだけそいつを懲らしめようと何度か作ったからのう……』
懲らしめる? それなら悪役令嬢に向けて仕掛けるのにピッタリだわ!
『それよ! 私にも教えて? お爺さん!』
───そうして、私はこの爺さんに聞いたのよ!
腹の立つディアナを、ちょーーーーっと懲らしめる為の呪いってやつを!
それはずぱり───……
“お腹を下す呪い”よ!
その辺の下剤を飲ませるより強力なんですって!
しばらくトイレに篭もりっぱなしになるといいわ! ふふふ!
私はその隙に私の王子様に近づいて目一杯可愛い私をアピールしてやるわ!
(よーし、やるわよ!)
そうして私はあの爺さんに言われた、お腹を下す呪いに必要な物を揃える事にした。
だけど、いざ買い物をしようとしたら……
「……あれ? これ……なんて読むんだったっけ?」
メモった文字が読みずらくてあやふやだわ。
しかも、あの爺さん、えっとーとか、うーん……とか余計な事ばっかり言ってて上手く聞き取れなかったのよねぇ……
「あ、多分これね! 頭の文字が一緒だし! えっと、次は……」
そんなこんなでどうにか私は必要な材料を揃えた。
「あの爺さんは正しい材料に正しい分量、正しい手順……そう言ってたけど面倒くさいわねー」
───何か一つでも間違えると違う呪いになる可能性があるので気をつけるんじゃ!
呪いの方法は材料も手順もどれもよく似ておるからな!
あの爺さん、口を酸っぱくしてそう言っていたけど……私を誰だと思ってるのかしら?
この私よ? ヒロインのライラック様よ?
そんな凡ミスをするはずないじゃないの。完璧な物を作り出して見せるわよ!
「調子に乗った悪役令嬢ディアナにちょっと痛い目を見せる為! この呪いが本当に聞いたなら、呪いは本当にあるって事の証明になるわ。そうしたら王子様に呪いをかけた事実を問い詰めてやらなくちゃね!」
そうして、私はついにお腹を下す呪いの元を完成させた。
後は出来上がったこの液体をディアナに嗅がせるだけ。
(どうやって嗅がせる? 学園ではムカつくほど常に誰かに守られてるし……)
この呪いは匂いを嗅がせることで作用するらしいわ!
そうして思い出したのが、前世にあったアロマオイル。あれを応用すれば……いける?
そしてプレゼントを装って家に届ければいいんじゃない?
「どうせ、常日頃から色んな人に贈り物を貰ってるんでしょ? その中に紛れ込ます事さえ出来ればきっと……」
確か、貴族ってそういうものよね? よく知らないけど~
「ふふふ、完璧よ、さすが私!」
───この時、浮かれまくっていた私は知らない。
記憶のあやふやな爺さんから聞き取ったあやふやなメモのせいで目的とは違う物を作り出していた事を。
その作り出した物がお腹を下す呪いなんかよりヤバいものだった事を。
そして、勉強不足だった私はこの事も知らない。
お腹を壊す程度のささやかな呪いだったなら起きなかったはすの……
そう。
“強力な呪い”を使った者にだけ待っている呪い返しというものを────……
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