【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea

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第二十七話 追い詰められるヒロイン

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「フレデリック様は何をするつもりなのですか?」
「うん?  そうだな……あのピンク髪の女には、ちゃんと自分のした事と置かれている状況を分からせるべきだと思うんだよ」
「分からせる……」
「あのタイプはさ、無理やり牢屋に押し込んでも“私が何をしたと言うの?”“これは何かの間違いよ!”“私を妬んだ陰謀に違いない”とか言い出すと思わないか?」
「……」
「それもさ、絶対ディアナのせいにすると思うんだ」

  私は無言で頷く。
  あのよく分からない数々の発言を思えば、フレデリック様の話は充分有り得る話だと思った。

「というわけで、皆の前でしっかり罪を突き付けて反省させてディアナに謝罪をさせたいと思う」
「皆の前?」
「ディアナ、忘れちゃったの?  もうすぐ学期末のパーティーがあるだろう?」
「あ!」

  ───学期末のパーティー。それは、物語で悪役令嬢わたしが断罪されるはずの……

  (そうだった……!  もうそんな時期だったのね……)

   色々な事があり過ぎてすっかり忘れていたわ。

「でも、彼女はあの様子ですしパーティーには参加しないのでは?」

  だって、ライラックはシワシワのお婆さんの容姿になってしまった事に大きなショックを受けていたのよ?
  あの姿で参加するなんて思えない。

「まぁ、そうだろうね。だから参加するように呼ぶんだよ」
「呼ぶ?」
「……彼女は僕に会いたがっていただろう?  だから“パーティーの場でなら話を聞く”と呼び出すんだよ」
「!」

  (まさか、わざと人前で……?)

  フレデリック様は本当に怒っているのだと思った。


◇◆◇◆


  ───だけど、いくらフレデリック様に呼び出されたからと言って、本当にあの状態でのこのことパーティー会場に現れるものかしら?
  さすがのライラックも嫌がって理由をつけて参加しないのでは?  そう思ったのに。

「なんて言うか……僕は一応断られる事も想定していて、別の案も考えていたんだけど」
「あ、想定はしていたんですね」
「びっくりするくらい素直に現れたね」
「……ですが」

  フレデリック様の視線の先を追うと、そこにはどこからどう見ても不審者にしか見えないライラックがいた。

「一人だけ仮面舞踏会になっているね」
「……はい」

  ライラックはどうやって現れるのかと思っていたらなんと仮面着用で現れた。
  ただでさえ、目立つピンクの髪のせいで正体はバレバレ。会場はザワザワしている。

「はぁ……」
「フレデリック様?」

  フレデリック様が大きなため息を吐く。

「学期末のパーティー、本当は可愛い可愛い恋人になったディアナをエスコートしてダンスをして……楽しい時間になるはずだったのにと思ったらため息が……」
「フレデリック様……」

  その言葉を聞くと、本当に物語は変わってしまったのだと実感する。
  
  (物語のフレデリック様あなたは、このパーティーで悪役令嬢ディアナを断罪する事ばかり考えていたわよ?)

「今日も綺麗だよ、僕のディアナ」
「……っ!」

  フレデリック様はそっと私を抱き寄せると、全部片付いたらたくさんイチャイチャしようね、と私の耳元で甘く囁いた。



─────


「トゥルハーシ嬢」
「……殿下!」

  フレデリック様に声をかけられたライラックが嬉しそうな声を上げた。
  仮面のせいで表情は全く分からないけれど多分喜んでいる。

「殿下、私……ずっとずっとこんな日が来ると信じていました。ようやく目が覚めてくれたんですね……嬉しいです」
「……」

  フレデリック様の顔が一瞬だけ引き攣った。
  どうやら、ライラックの中ではフレデリック様からのパーティーへの呼び出しが都合よく解釈されているみたい。
  これはきっと、仮面の下では目をうるうるさせているに違いない。見えないから意味が無いけれど!

  (それにしても……フレデリック様は私の腰に手を回しているのだけどライラックには見えていないのかしら……?)

「殿下、いえフレデリック様。あなたは私と幸せになるべき人なのです……それなのに邪魔ばかり入って……更に何故か私の姿はこんな恐ろしい事に……ですから今の私は殿下に素顔を見せる事が出来ません……ごめんなさい」
「……」
「でも、ようやく分かりました!  きっと私にかかったこの悪い呪いは……そう!  真実の愛で解けるんです!」

  (何か凄いことを言い出したーー!)

「そんな私の呪いを解いてくれる真実の愛のお相手は、もちろんフレ……」
「申し訳ないが」

  フレデリック様はライラックの発言を遮るようにして冷たい声を発した。
  身体が震えているのが私にも伝わってきたので(吹き出さずに)黙って聞いているのはもう限界だったみたい。

「真実の愛だかなんだか知らないが、僕の愛する相手は君では無い」
「…………え!」
「僕が愛しているのは、愛しい婚約者のディアナだけだ」
「…………は……?  なら、殿下はなぜ今日はわざわざ私を……」

  ライラックの声が震えている。
「有り得ない」という言葉を怖いくらい繰り返し呟いている。
  これだけでも分かる。やっぱりライラックはまだ現実を見ようとしていない。

「決まっているだろう?  トゥルハーシ嬢、君にディアナへ謝罪させるためだ」
「しゃ……ざい?」
「…………君はどうして自分がそんな人前に出られない姿になったのか分かっているのか?」
「え?」

  ライラックが首を傾げている。
  やっぱり彼女は呪返しの事を知らないし、思い当たってもいない。

「……君は卑怯な手で故意にディアナを陥れようとした。その報いを受けた」
「え?  は?  報い……?」
「人を傷つけようとしておいて、どうして自分は平気。そう思った?」
「え、だって……そんな……これは悪い呪いか何かで……報い?」

  フレデリック様は、はぁ……とため息を吐く。

「何故、ディアナを陥れるような真似をした?」
「ディアナ様は私の邪魔ばかり……」
「……邪魔?  ディアナが君の?」
「そうです!  だってディアナ様は───」



  ───ライラックの被害妄想は凄かった。
  特待生になるべきだったのは私!  上位クラスに入るのも私!  実力テストで1位を取るのも私!  皆から憧れの目で見られてチヤホヤされるのも私!  フレデリック様に見初められるのも私!  
  これらを全部ディアナ様に奪われました!  と語った。

   (思っていた以上に妄想が酷すぎるわ!)

  フレデリック様の顔もさすがに引き攣っていた。

「───い、言いたい事はそれだけか?」
「ええ!  ですから早く私ではなくディアナ様を罰して……って、何で皆、そんな目を……」

  今、ライラックに向けられているのはとても冷たい視線。
  (仮面のせいもある)
  ライラックにしては珍しくその視線を察していた。

「ようするに、全部ディアナに嫉妬していた、と」
「嫉妬……?」
「そうだろう?  だが、今のディアナの地位は、ディアナがずっとずっと努力し続けて来た結果だ!  そんな事も分からずに嫉妬してディアナを呪い殺そうとしたのか!」

  フレデリック様の“呪い殺す”という言葉に会場が更にザワザワする。

「こ、殺す!?  何の事ですか!  私は(さすがに)そんな事……」
「しらばっくれても無駄だ。姿が全てを物語っているじゃないか!」
「え?」

  ライラックの動きが止まった。
  多分、仮面の下の顔は真っ青になっている気がする。

「その姿は、ディアナを殺そうと企んだ事による報いだ」
「え?  だから、どうして……だって私」

  追いすがろうとするライラックをフレデリック様は冷たく突き放す。

「永遠に戻る事は無いと思うんだな」
「も、戻らない!?  嘘っ……元の可愛い私は……」

  ライラックが悲痛な声を上げると両手で仮面ごと顔を覆う。

「可愛い?  どこがだ。とにかくそれは人を呪ってまで殺そうとした結果だ」

  フレデリック様の言葉に「そんな……そんな事って……」と震えるライラック。
  すると仮面が顔からずれてそのまま落下した。

「あ……ちょっ……!?」

  そんな仮面の下から現れたのはもちろんシワシワになったお婆ちゃんライラックの素顔。

  ───ピンクさんが!
  ───お婆さん!
  ───シワシワ!

  そんな更にザワザワする場で、お婆ちゃん化したライラックは半狂乱になって叫んだ。

「そんな!  悪……ディアナ様が……お腹を下すだけで死んでしまう軟弱だなんて聞いてないわよぉぉーー」

  (…………ん?)

  私は自分の耳がおかしくなったのかと思った。
  
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