【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

文字の大きさ
4 / 25

4. 王子様と婚約者の公爵令嬢

しおりを挟む


「君達は相変わらずだな」

  キャンキャン吠える犬のように私の前で叫んでいるルシアンの横にさり気なく人がやって来る。

「……アレンディス殿下」
「うっ……だって仕方ないだろう、アレンディス。分かってくれよ」

  彼の登場に私は慌てて頭を下げる。
  このさり気なく現れた彼は、アレンディス・シルフィード殿下。
  この国の王子様だ。

  侯爵家の令息でもあり、後の大魔術師となるルシアンと王族のアレンディス殿下は歳も同じだった事もあって、幼い頃から友人としての付き合いがあるらしい。
  もちろん、私のような平民には雲の上の存在なのだけど。

「毎回毎回思うし、言ってるのだけどね。僕としてはルシアンが1人で喚いているようにしか見えないんだよ」
「何だって!?」
「だよね?  フィーリー嬢」

  身分に似合わず、気さくな性格のこの国の王子様は私にそう言いながら軽いウインクをした。

「……そうですね。でも、ルシアンのこれは今に始まった事ではありませんから。もう、すっかり慣れました」
「あははは、違いない!  だってさ、ルシアン」
「くっ……ち、畜生……!」

  私の返した言葉と反応に、殿下はとても楽しそうに笑った。
  一方のルシアンはとても悔しそう。

  これもこの5年ですっかり見慣れた光景だ。

「……」

  本当に人生とは分からない。
  まさか、自分が王立魔術学院に入学する事になって、何故か貴族の侯爵家の令息に絡まれるようになり、果ては王子様とも会話するようになるなんて。
  私は仲良さそうに気安い会話をしている二人を見ながら思った。

  (友人……かぁ)
  
  ちなみに、唯一の平民という身分でこの学院に入学した私は、はっきり言って浮いている。
  悲しい事にこの5年の間、友達の1人も出来なかった。

  (皆、私が話しかけようとすると逃げてしまう……)

  貴族と平民の間にある壁は大きいし、魔力量だけが無駄に多い無属性状態の落ちこぼれの平民女なんてどう接すれば良いのか分からないのが普通だ。

  (なのに、ルシアンと来たら……)

  毎日毎日欠かさず、飽きる事も無くキャンキャン絡んで来てくれるので、この5年間寂しいと思った事は一度も無い。

  (これは、ルシアンに感謝すべき…………なのかしら?)

  ルシアンに絡まれているおかげ(?)で、雲の上の存在だった殿下とは、たまにこうして会話をするけれど、殿下の側近達は、私を遠巻きにして決して近付こうとはしない。
  そう思うと、ルシアンと殿下が変わっている人なのかも……なんて思ってしまった。



  
  そんな規格外の魔力量しか誇るものの無い落ちこぼれで平民の私。
  会話をする相手も、未来の大魔術師様(予定)の侯爵令息と王子様のみ。
  こんな私が学院内で目立たないはずが無い。
  実はそのせいで、ルシアンとは別の意味で絡まれる事がある。


 

「フィーリーさん、ちょっとお時間よろしいかしら?」

  (……来た!  今日は───)

  私の存在は相当、貴族のご令嬢達からは目の上のたんこぶだったようで、こうして呼び出される事はよくある。
  呼び出し内容も「王子と馴れ馴れしく口を聞くなんて!」とか「ルシアン様から離れなさい!」という話ばかり。とても分かりやすい。

「……リシェリエ様」

  そして、今日のお相手はリシェリエ・ラモニーグ様。
  何を隠そう、アレンディス殿下の婚約者様だ。

  (今日は公爵令嬢様大物の日なのね……)

  リシェリエ様は希少な闇の属性持ちで、かつ公爵家の令嬢。
  そこそこの魔力量を有する事から、文句無しでアレンディス殿下の婚約者となられた方だ。

「毎回、毎回……貴女は私の忠告が聞けないの?」
「はぁ」
「はぁ……ではありません!」

  リシェリエ様は、元々つり目がちの目を更に吊り上げて睨んで来る。
  
  (美人なので迫力満点なのよね)

  そんな家柄も容姿もアレンディス殿下とお似合いのはずのリシェリエ様。
  だけど、このお二人はあまり良好な関係を築けていないようで、リシェリエ様は度々、私にこうして忠告と言う名の牽制をしてくる。

「申し訳ございません……」
「……貴女には何度言えば分かってもらえるのかしらね?」

  謝ったのに再び睨まれる。
  闇の力は癒しの力なのに、残念ながらご本人からは癒しが感じられなくて悲しい。
  そんなリシェリエ様はくどくどと私に対して言いたい事をとにかく述べていく。

「──前々から言ってますけれど!  殿下に馴れ馴れしく近付かないように!  良いですわね!?」

  そして、この言葉でいつも締めくくられる。

  (良いですわね?  と言われても……)

  反論すると話が長くなるのでここは静かに聞いておくに限る。
  この5年間で私はそう学んだ。

「全く……また、のほほんとした顔を向けて!  本当に何者なんですの、貴女は!」

  (のほほん?)

  ちなみに、時々こんな風に呼び出され色々と忠告やら牽制やらされるけれど、私自身はリシェリエ様を嫌いではない。

「とんでもない魔力量を持っているとの噂で入学して来たので注目して見れば……」

  何故なら彼女は真っ直ぐな人だ。
  なんと、リシェリエ様は公爵家のお嬢様なのに私を呼び出す時は必ず1人でやって来る。普段は、取り巻きのような令嬢達が常にそばに居るというのに、何故か私を呼び出す時は誰一人連れて来ない。

  (つまり一対一で話したいと言うこと)

  そして、決して暴力的な事は行わず、話は長いけれど忠告だけをして去って行く。

  (なんと言うか……気持ちのいい方なのよね)

  金髪縦ロールの美人に睨まれるのはそれなりの迫力だけど、そんなリシェリエ様を私はどうにもこうにも憎めずにいた。
  アレンディス殿下とはたまにルシアン通じて話すだけ──……一度、そう口にしてみたけれど、

「貴女はそうでも、殿下の気持ちは分からないでしょう!?  私は殿下の周りに彼の心を惑わすかもしれない女性がいるという事が彼の婚約者として許せないんですのよ!」

  と、涙目で睨まれたので、反論は程々にしている。




  婚約者だのなんだの貴族は色々面倒なのね……
  と、この時の私は完全に他人事のように思っていた。

  この先、珍しいピンク色の髪をした男爵令嬢の登場によって、学院内にゴタゴタの騒動が起きるなんて思いもせずに────


しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

処理中です...