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7. 生まれる不安
しおりを挟むリシェリエ様がエリィ様に絡んでいた理由。
それは、編入して来たエリィ様はがアレンディス殿下だけではなくて、殿下のその側近の方達とも接近し仲良くなっていたから。
それもちょっとただのクラスメートの関係と言うには、親密過ぎる様子だったからだ。
(あの物怖じしない性格と片っ端からグイグイ行くスタイルはある意味尊敬すら覚えたけれど)
5年間、友人もいない私からすれば羨ましい性格と行動にも思えるけれど、傍から見ても、エリィ様は殿下とその側近に対してかなりベタベタしているように見えるので、ちょっと距離感は詰めすぎでは? とも思う。
リシェリエ様が諌めたくなるのも当然の話だった。
そして今、アレンディス殿下とリシェリエ様がこんな事になってしまっている。
「……」
「リシェリエ。残念だ。君はもっと慎みのある人だと思っていたよ」
「わ、私は、あ……っっ」
リシェリエ様が一瞬、何かを言いかけたけれど、とても悲しそうな表情をした後、そのまま俯いた。
そこには当然、いつものような元気さは…………全く無い。
「あの……アレンディス様……私は大丈夫ですから……そんなにリシェリエ様を責めないであげてください……」
そこに瞳をうるうるさせたエリィ様が入り込む。
「エリィ嬢……だが」
「だって、私、私が悪いんですもの。アレンディス様とリシェリエ様は婚約者同士なのに私がついアレンディス様に甘えてしまったから……」
「そうは言っても、僕は貴重な光属性であるエリィ嬢を守るようにと言われているんだ。リシェリエもそれくらい理解してくれていると思っていたのに……なのに君を責めるなんて! 本当に残念でならないよ」
「……アレンディス様……!」
私は悪くないんですー……と瞳をうるませて悲劇のヒロインのような発言をするエリィ様と、浮気した男の弁明にしか聞こえないような発言をするアレンディス殿下。
一方のリシェリエ様は何も言葉を発さない。
ずっと俯いているので、表情は見えないけれどその身体が微かに震えているのが分かる。
また、教室の別の片隅では殿下の側近達とその婚約者達も同じ様に揉めていた。
ちなみに、アレンディス殿下の側近達の婚約者は、リシェリエ様の取り巻き令嬢だ。
「最近、私に冷たいのは何故ですの?」
「冷たくなどしていない。仕方ないだろう? 我らは殿下と共にエリィ様を守らなくてはいけないのだから」
「ですが、守るといった様子にしては、殿下も貴方も態度が……」
「うるさい、口答えするな! 黙れ!」
「……っ」
殿下の側近の一人に怒鳴られたリシェリエ様の取り巻き令嬢は、泣きそうになっていた。
(何なのこれ……)
「アレンディスも側近の奴らも……最近、変わったよな」
私の隣でルシアンが小さな声で呟いた。
「……」
「いくら貴重な光の使い手だからって、何であそこまであの令嬢に入れ込む必要があるんだろうな?」
ルシアンは心底不思議そうな顔をしてそんな事を言う。
「ルシアンは加わらなくていいの?」
「何で俺が?」
「だってあなたも、殿下の側近の1人でしょ?」
何故、ルシアンはこんな他人事のような顔をしているのかしら?
そんな私の質問にルシアンは怪訝そうな表情になる。
「は? 別に俺はアレンディスの側近じゃ無いし」
「え? 違うの?」
私は驚いた。
てっきりアレンディス殿下の友人兼側近なのだとばかり思っていた。
「違うな。大魔術師は国に忠誠を誓う存在だから。アレンディスは王族だが直接の俺の主ってわけじゃない」
「……そういうものなの?」
「そういうものだ」
何だか分かるような分からないような……
とりあえず、大魔術師の立ち位置は面倒くさそうだというのは分かった。
「あれ? でも、ルシアンもエリィ様に声を掛けられてたわよね?」
「うん? そうだったか?」
「そうよ! 編入してきて直ぐに声掛けられてたでしょ? 私は見たわ」
確か編入して来た日に声を掛けられていた所を見た気がするのだけど。
「んー……?」
ルシアンは割と本気で悩み、記憶を探っている。
何で覚えてないの?
「……あー! 突然、笑顔で近づいて来て“大魔術師になられる方ですよね! 尊敬しています”って言われた時か」
「え?」
(それって色々と失礼な行動なのでは……)
それくらいは平民の私にだって分かる。
「そういや、俺も随分と有名人になったんだなーって思ったんだっけか……」
「…………」
確かにルシアンは、このまま行けば未来の大魔術師。
本人もそう公言しているから、学院では誰もが知っている事で間違いない。
侯爵家の令息でもある彼は有名なのでおそらく社交界でも同じだろう。
(なのに何故、最近貴族に引き取られ学院に編入して来たばかりのエリィ様が、その事を知っていたのだろう?)
しかも、未来の大魔術師……という事だけでなく、その大魔術師になるはずのルシアンの顔まで知っていた事になる。
私の知る限りだけど、貴族と違って平民は魔力量も多くないので魔術師に興味を抱く人ははっきり言って少ない。
大魔術師に関しても、そういう人がいるよねくらいの感覚だった。
(何者なの……エリィ様。何だか…………怖い)
「…………」
私はこの時、何とも言いしれない不安を覚えた。
そして、残念な事にこの不安は的中する────
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