【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

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20. 断罪パーティー開始!

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   ──大丈夫。絶対に上手くいく。

  リシェリエ様の力も私の力もうまく発動してくれれば、エリィ様の魅了の力を受けている人達は皆、正気に戻るはずだし、今後の被害も防げるはず!

  そう意気込む私にルシアンが優しく私の頭を撫でた。
  髪型を崩さないように気を付けているせいか、少しぎこちない。

「ごちゃごちゃ考えすぎるなよ。フィーリーならやれる」
「ルシアン?」

  そう口にするルシアンがカッコよく見えてしまってドキドキする。

  (こ、これは!  今までとは別の意味で困る!)

  ルシアンはそんなドキドキしている私の気持ちに気付く事もなく、話を続けた。

「だけど、コレをお前に渡しておく」
「え?  なに?」

  そう言ってルシアンから「持っておけ」と、渡された物は魔石だった。

「魔石?」
「魔力増強の力を込めてある。いくらお前でも今日やろうとしている事は未知数だろ?  備えはあった方がいい」
「ルシアン……」
「リシェリエ嬢にも同じ物を渡してあるから、少しは助けになるといいんだけどな」
「ルシアン、ありがとう」
「……今回の件、俺に出来る事は少ないからな」

  ルシアンは申し訳なさそうな顔をしていた。確かに今日のルシアンは派手に動く事はしない。

「そんな事ないわ!  私はルシアンが後ろで支えてくれるから頑張ろうと思えるのよ?」
「フィーリー……」

  今日の私達の役割はそれぞれ決まっている。

  まず、ルシアンが会場全体に結界をはる。
  そして続いてリシェリエ様が、浄化の力を使ってエリィ様の魅了の力を解く。
  次にエリィ様が再び魅了の力を皆にかけるのを防ぐために、私が会場内の全ての人にかかるように無効化の力をかける。
  ただし、私の力はエリィ様を捕まえて事が全て終わるまでかけ続ける予定だ。
  そう考えると、確かに私はかなりの魔力を使う事になる。

  (大丈夫だとは思うけれどね)

  いくら、私の魔力量が多いといってもそれでもやっぱり限度はあるので、ルシアンのこの気づかいは嬉しい。

「……やるわよー!」

  ───これ以上、エリィ様の好きにさせるわけにはいかない!






「すでに結構、人が集まっているのね」
「そうだな」

  会場に入ると、すでに賑わいをみせていた。そして、とある一角が凄い人だかりとなっている。
  探すまでもない、その中心にいるのは勿論、エリィ様だ。

「魅了にかかっている人って想像より多いかも」
「だな。教師もいるし、他学年のヤツも多いな」
「教師も……だから、学院がこんな事になっていても静観していたのね」

  どうやら私達が思っていたよりも、エリィ様は多くの人に力を振り撒いていたようだ。

「本当に何がしたいのかしら?」
「さっぱり分からないな」

  あそこまで多くの人を虜にして侍らかして、いったいエリィ様の最終目的は何なのだろう?

  (アレンディス殿下?  ルシアン?  誰を狙っているのかもよく分からない……)

  そんな事を考えていたら入口の方が騒がしくなったので視線を向けると、ちょうど学院長が入って来る所だった。

「学院長が入って来た……そろそろか?」
「そうね」

  パーティーの開始の挨拶が始まった。
  学院長が、今日は各々羽をのばし楽しむように、と話し終えた所でパーティーのスタートとなる。

  皆が思い思いに過ごそうと動き出したまさに、その時。
  ぴったりのタイミングで会場の入口のドアが開かれ、金の縦ロールを靡かせて1人の令嬢が入って来た。

  ──リシェリエ様の登場だ。

  集まった生徒達は、突如現れたリシェリエ様に驚きを隠せない。

「ラ、ラモニーグ公爵令嬢!?」
「リシェリエ様だ!」
「病気療養中ではなかったの!?」

  騒ぎ出す生徒達を見渡しながら、リシェリエ様はニッコリ微笑んで口を開いた。

「皆様、お久しぶりでございますわね、遅れてしまって申し訳ございません。今日は私も参加させていただきますわ」

  リシェリエ様の他者を圧倒するような笑顔と態度に皆はポカンとしている。
  さすが、王子の婚約者でもある公爵令嬢。圧倒的な存在感。

  そんな中、私はこっそり風の力を使ってエリィ様の声を聞く。

  (エリィ様はどんな反応を?)

「嘘でしょ?  そんな……何で目覚めているのよ。誰が起こしたの……」

  エリィ様のその声と言葉から感じ取れるのは困惑。
  それはそうだろう。エリィ様は、リシェリエ様が学院にやって来ない理由をただ1人知っていた。
  闇の力(しかもリシェリエ様自身の力)で眠りについていて、そんなリシェリエ様を目覚めさせる事が出来るのは、希少な光属性の強い力を持つ者のみ。
  エリィ様自身が目覚めさせるつもりは決して無いのだから、リシェリエ様を目覚めさせる事など出来るはずがないとタカをくくっていたに違いない。

「あの女は何に置いても私の邪魔にしかならないから、先手を打って眠らせる事で全て上手くいったと思っていたのに……!  どうしてよ……」

  顔が真っ青になったエリィ様の独り言は続く。
  
  (誰にも聞かれてないと思って油断しているわね)

  やっぱり、エリィ様にとってリシェリエ様は邪魔な存在だったらしい。
  どこまでも身勝手で自分の事しか考えていないような発言だった。
  あのままではリシェリエ様は死んでしまったかもしれないと言うのに!

「エリィ嬢?  どうかしたのか?  酷く震えているし顔色もー……」
「本当だ?  大丈夫ですか?  エリィ嬢?」
「エリィ様!」
「マドリガル嬢!」

  様子のおかしいエリィ様を殿下を始めとした人達が心配そうに取り囲む。

「アレンディス様……皆様……ぐすんっ」

  目元を潤ませているであろうエリィ様は声を震わせる。

「久しぶりにリシェリエ様の姿を見たら……その、怖かった事を思い出してしまって……」
「「「!!」」」

  エリィ様を取り囲んでいる人達がハッと息を呑んだ気配が伝わって来る。

「エリィ嬢……」
「エリィ様!」
「マドリガル嬢!!」

  (あぁ、聞いているだけでムカムカしてくる!  酷い茶番だわ)

  本当に早く目を覚まして欲しい!
  私がそう思った時、エリィ様を取り囲んでいる輪の中から、アレンディス殿下がリシェリエ様の方に向き直り声を荒げた。

「どういうつもりだ、リシェリエ!  エリィ嬢が真っ青になっているじゃないか!  君は彼女に何をしたんだ!?」
「……アレンディス殿下。あなたの仰っている意味が分かりませんわ。何故、私はパーティー会場に来ただけなのに突然責められるのです?」

  リシェリエ様は冷めた目で殿下を見返しながら淡々と答える。

「今、エリィ嬢はリシェリエの名前を呟いて震え出した!」
「まぁ!  そんな事で?」
「そんな事とは何だ!?  エリィ嬢のこの様子は明らかにリシェリエがー……」
「…………殿下、憶測だけで物を言うべきではありませんわよ?」
「昔から君は…………本当に口が減らない!」
「まぁ、ホホホ」

  2人の言い争いが始まってしまった。
  周りの生徒も殿下とその不仲説のある婚約者、そして、殿下と仲を深めているエリィ様の様子には目が離せず釘付けになっている。

「それに比べてエリィ嬢は素直で真っ直ぐで可愛らしい。リシェリエ、君も少しは見習うべきではないのか?」
「アレンディス様ったら!  そんな大声で堂々と……恥ずかしいわ」

  殿下の言葉にエリィ様が嬉しそうに微笑む。声も弾んでいるので、どうやら持ち直したらしい。

「嬉しいですけど、私はアレンディス様にそんな事を言って貰えるような人間ではありません……」
「そんな事は無い!  エリィ嬢、君は優しく清らかな人だ」
「アレンディス様……」

  エリィ様は渾身のうるうるした顔をアレンディス殿下に見せつける。

「そうだ!  リシェリエ、この際だ。はっきり告げさせてもらう。僕は君との婚約を──」
「…………それ以上は口にしない方がよろしくてよ?  アレンディス殿下!」

   リシェリエ様がそう言った途端、会場内が眩い光に包まれた。

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