【完結】“当て馬姫”と呼ばれている不遇王女、初恋の王子様のお妃候補になりました ~今頃、後悔? 知りません~

Rohdea

文字の大きさ
7 / 49

第7話 考えた結果……


 ◆◆◆◆◆


 ──その頃、サスティン王国では。

「シンシアは無事にプロウライト国に向かっているだろうか」
「ええ、そうね」
「遠いから大変そうだ」
「……」

 皆で昼食を摂りながら、国王、王妃、王太子……と、それぞれシンシアのことを心配していた。
 エリシアはそれをすました顔で聞いていた。

「エリシアの助言もあり、長旅に慣れないシンシアの為に、一度は最短距離のルートの許可を出したが」
「え?  父上……それはいくらなんでも危険ではありませんか!?」

 国王の発言に王太子が驚きの声を上げる。
 エリシアはそんな王太子に向かって諭すように言った。

「安心して、お兄様?  私も一度はそう口にしたもののやっぱり危ないわ、と思ってお父様に再度ルート変更をお願いする進言をしたわ」
「そ、そうなのか……それなら良かった。びっくりした……」

 妹のその言葉を聞いて王太子はホッとする。
 あんな大所帯で出発しておいて最短距離ルートを通るのは完全に自殺行為だ。

「時間はかかるが安全なメルホ領経由のルートだ。エリシア、ちゃんとその旨は護衛隊長に伝えてくれたか?」
「もちろんですわ!  だって言い出したのは私ですもの」
「すまなかったな。ルートが変わると滞在する街や領も変わってしまうから、そちらの調整も大変だっただろう?」
「──ええ。でも、大丈夫ですわ。皆、優秀ですもの。ですからお父様、ご心配なく」

 エリシアはにっこりと微笑む。

「だが、エリシア。付き添いの護衛の数は減らさずにそのままにしておいたのだな?」
「……可愛い妹のためですもの。どうせ、あそこまでの大人数は国境を超えるまでですし、敢えてそのままで良いのでは?  と思いまして」
「そうか。それならシンシアも心強いだろう」
「ええ!」

 国王は、それはそれは満足そうに頷いた。

 ───国王は知らない。
 ルート変更について、どこにも話が通っておらず、シンシアたちは当初の予定のままの危険なルートで進もうとしていたことを───……



「ふふ、ご馳走様でした。ごめんなさい、私、先に失礼しますわね」
「ん?  エリシア、もういいのか?」

 あまり食べていない様子のエリシアを心配した国王が訊ねる。

「ええ、シンシアが心配であまり食欲が……それに私、この後、がありますの」
「大事な用事?」

 不思議そうな顔をする国王に王太子が横から入った。

「ほら、父上。エリシアのことだからどうせ、ダラスが来るとか……そういうことだろう?」
「まあ、お兄様ったら!」

 エリシアは兄の言葉にポッと頬を赤く染めると、恥ずかしいわ……と口にして両手で顔を隠す。
 そんなエリシアの様子を見た国王は安心し、ハハハと笑った。

「なるほどな。そういうことだったか。仲睦まじい様子で何よりだな」
「も、もう!  お、お父様まで!」
「この調子で、シンシアもプロウライト国の王子との話が上手く行けばいいのだがな……」
「……そう、ですわね」

 国王のその言葉に、先程まで真っ赤な顔で照れ臭そうにしていたエリシアは、どこか意味深な微笑みを浮かべながら頷いた。


◇◇◇◇◇


(わたくしが取るべきいい方法───……思いつかないわ)

 けれど、絶対に誰も怪我なんてさせるわけにはいかない。
 ここは、大幅なルート変更で各所に多大な迷惑をかけることになってしまっても、メルホ領経由の道で……
 そう考えた時だった。ハッと突然、頭の中で閃く。

 そうだわ!
 ルムメンとメルホの間には一つ大きな街がある……!
 どうして、最初からこの街を通るルートを検討していないのかしら?
 この街を通らない道順になっているから、メルホ領を通る場合、かなり迂回して他の街まで通ることになってしまっている。
 この街を通ることが可能なら大幅なルートを変更せずに済むのに。

「……」

 おそらく理由はあるのでしょう。
 ルムメン並に危険な道とか治安が悪いとか……

(わたくしは、ほとんど王都から出ない生活をしていたからあまり外のことには詳しくはないのよね……)

 今だって、わたくしは頭の中でただ、地図を思い出しているだけ。
 その土地の詳しいことなんて知らない。
 どうして?  と、聞いたら王女なのにそんなことも知らないのか?  そう思われてしまうかも。
 けれど、今はそんなプライドにしがみついている場合ではないわ。

 そう思って護衛に訊ねてみる。

「どうして、ルムメンとメルホの間の街は通らないのかしら?」
「殿下?」
「初めからこの街を通るルートは考えられていないわよね?  どうして?」
「あー……」

 わたくしのその質問に護衛は特に怪訝な様子を見せることなく説明してくれた。

「このムスタンの道は他の街ほど舗装されておらず、馬車では非常に走りづらいのですよ」
「走りづらい?」
「はい。馬であればサッと駆け抜けられるので、我々はよく使いますが王族の方々は通りませんね」
「そう……」

 そう言われてわたくしは考え込む。

「でも、馬車が走れない程ではない?」
「そうですね。庶民用や商人の馬車は、時間がかかりますけど普通に行き来していますからね」
「……つまり、舗装されていないだけで、道そのものや街の治安に危険はない?」 
「そこは特に問題のない街ですが……殿下?  それがどうかしましたか?」

(それなら、危険を冒してまでルムメンを通るよりは、まだ安全なんじゃないかしら?)

 舗装されていない道となると、移動に費やす時間そのものはメルホを経由する場合とそんなに変わらないことになるとは思う。
 けれど、予定になかったその他いくつかの街を経由する必要は無くなる。

(ムスタンの街へ通過する旨の連絡と、その先に訪れる予定の街には遅れるということを先に早馬を送って事情を説明させて…………うん、これなら……)

 これは───提案してみることは可能かもしれない。

 この馬車に付き添ってくれている護衛はたくさんいるのだから、その中から数人を先に伝令として送り出したとしても大きな支障はないはず。

(人数が多いのは動きずらい面はあるけれど、こういう展開なら沢山いてくれて良かったと思えてしまうわね)

 心が決まったわたくしは顔を上げて護衛の顔を見た。

「あのね?  一つ、提案があるのだけど聞いてくれるかしら?」


◆◆◆◆◆


(───おかしい。どうして、何の“連絡”もないの?)

 エリシアは自分の部屋で“その連絡”をまだかまだかと待っていた。
 それなのに、一向に事故に関する連絡が来る様子は無い。

(どういうこと?)

 まさか、橋を通るのは避けて危険な迂回の道を選んだ?
 それなら、確かにまだ、連絡は来ないかもしれないけれど。

 それともメルホ領経由の道に変更した……?
 そうなると、自分が最初に願った形とは異なってしまう。
 けれど、それならそれで……

(“シンシア”の悪評を広げるという意味では成功するものね)

 突然、何の事前連絡もなく王族が自分の街に現れる。
 通過するだけならまだしも、滞在……となると領主や領民にとってもかなりいい迷惑。
 王女シンシアの評判はガタ落ちするに違いない。

「ただ、この場合は他に成り代わる方法を考えないといけないのよね……」

 プロウライト国の王子──ジュラール殿下。
 まさか、あんな大物の妃の座が空席だったなんて。
 それを知っていたら、ダラスなんか奪わなかったのに……

(優秀で完璧王子と言われるだけあって、ジュラール殿下はとても格好良かったわ)

 有難いことに評判の悪い双子の弟王子はさっさと片付いているみたいだし。

「あんなに素敵な人……可愛いだけの“当て馬姫”には勿体ないわよね?」

 エリシアがそう呟いた時だった。
 部屋の扉が勢いよくノックされる。

「え?  な、何?」

 びっくりして振り返る。
 メイド───は下がらせたんだった。今は部屋にいるのは自分だけ。
 仕方なくエリシアは扉を開けた。

「───エリシア!」
「!」

 血相を変えて部屋に飛び込んで来たのはお父様。
 その手には何かの手紙を握っている。
 たった今、手紙を受け取ってそれを読んだ後、急いでやって来た……そんな所かしら?

(あ!  ───これは、もしかして?)

 エリシアは油断すると緩みそうになる口元を抑えて冷静な振りをしながら訊ねた。
 もちろん、表情を深刻そうにすることも忘れない。

「どうしたの?  お父様……?」
「どうした……ではない!  エリシア!  これはどういうことだ!」
「これ?」

 首を傾げるエリシアに国王は手に持っていた手紙をエリシアの前に突き出した。

「この手紙だ。この手紙によると、シンシアが───」
感想 358

あなたにおすすめの小説

夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?

里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。 そんな時、夫は陰でこう言った。 「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」 立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。 リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。 男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。 *************************** 本編完結済み。番外編を不定期更新中。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。

みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。 ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。 失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。 ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。 こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。 二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

(完結)私はもう他人です!

青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。 マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。 その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。 マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・ これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。